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詩集「オープン・ザ・ドア」  近藤久也  (2014/09)  思潮社

2014-09-25 21:00:22 | 詩集
個人誌「ぷーわー」を発行している作者の第6詩集。131頁に35編を収める。
 作者の意識はニュートラルにされてさまざまな方向に向けられているようだ。そこに感応したさまざまなものが言葉で捉えられている。これは、四方に糸を張りめぐらせて何かがかかるのを静かに待っている蜘蛛のイメージ。感応するためには研ぎ澄まされた感覚を養っておかなければならないだろう。
 ぼんやりと地図を眺めている「地図」。そこに描かれた世界には寡黙なひとが暮らしていて、みえない風も吹いてくるのだ。そんなことを考えていれば、誰でも一度はあると思うのだが、この自分もまた誰か大きな者から見下ろされている世界の一員ではないかという空想に遊ぶことになる。

   せかいの重大事だとは
   知らない
   つみあげられた
   迷路の重箱の
   一番上の蓋をとって
   だれかみてる

 「音もたてずに」は、「毎夜神様のお客が/音もたてずに/寝てる」という小さな家を詩っている。夜の間に埃は「宿命のごとく/舞い降りて」くるのだが、それはとりもなおさず宿命が埃のように舞い降りてきているということだろう。

   そうして
   夜は夜に重なって
   昼は昼に重なって
   だれか
   とおくで警報鳴らしてるのに

 「理由」「オープン・ザ・ドア」は散文詩型で書かれた物語。淡々とした思い出話で、とってつけたようなオチなどが何もないところが楽しい。
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