瀬崎祐の本棚

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馬車 62号 (2020/05) 東京

2020-07-10 18:22:14 | 「は行」で始まる詩誌
 同人住所録には14人の名が並ぶ。78頁。

 「続きの夢」花潜潜。
 話者は「寺に抜ける疎水の道をあなたに会いに行った事がある」のだ。なにかの病にあったあなたは、夢を見ましたと語ったので、

   ええ、ぼくも続きの夢を見ました。
   そう嘘を云いかけると、あなたは唇に指を立て。大きく
   なったらきっと教えてください、と云って花の香りに、
   なお白い胸まで突き出し、まるで身体を春で膨らませよ
   うとしているかのようだった。

 淡い思い出のなかにあるひとときを描いている。その後、あなたは亡くなったのかもしれない。話者が続きの夢をあなたに語る機会はなかったのだ。まるでこの話者の語りそのものが夢であるかのような儚さを伝えてくる作品だった。

 「行方しらず」春木節子。
 話者たちは流れる川の水の中にある潜水橋に出会う。水かさが増して橋桁のない橋の上にも水は流れていたのだろう。だから足元は水に入って渡るわけだ。実際に渡ろうとすれば、足元が確認しにくいのでかなり怖ろしいのではないだろうか。流れは緩やかなようなのだが、

   それなのに
   あっといって ながされていくひともいて

   潜水橋は
   ゆだんならず
   深いようで あさくあり

そんな橋では、見えない足元に踏み込んで、こことは違う場所への一歩を踏みだしてしまった人が居るのかもしれない。潜水橋は沈下橋ともいうとのこと。私(瀬崎)は高知の四万十川で渡ったが、よく晴れていたそのときは水の上に橋が渡っていた。

 「Meeting Room」と題したコーナーで同人の小文を載せている。そこで滝川ユリアがハーヤー動詞について書いているのだが、これが興味深かった。「この語は「在る、居る、生起する、成る」という意味のヘブライ語です。旧約聖書の神「ヤハウェ」はこのハーヤー動詞そのものです」とのこと。そしてこの語が西洋哲学の「存在とは何か」という命題に結びついていくとのこと。まったく知らなかったことを教えてもらった。
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