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瀬崎祐の本棚

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詩誌「SPACE」 158号 (2021/06) 高知

2021-07-06 22:18:23 | ローマ字で始まる詩誌
句集「ぱららん」を先日出した草野早苗が「表面張力」のタイトルで16句の俳句を発表している。私(瀬崎)は俳句に関してはまったくの素人なので、ただただ好みに従って楽しんでいる。3句を紹介しておく。

   梅雨の入象眼細工の箱歪む
   水馬(アメンボ)の表面張力罪と罰
   青葡萄触るれば微熱伝はりぬ

1句目は季節特有の纏わり付くものの不気味さが可視化されており、2句目では危うい均衡の上に在るものの本質を見ているようだ。3句目は実際にはあり得ないことだろうが納得させられるものを捉えている。俳句も好いなあと思ってしまう。

大家正志「右下の一本の歯がぐらぐらして」は、昔から歯が弱くて歯科治療を繰りかえしてきた身としては、他愛もなく親しみを覚える作品。気になるよねえ、気になるよねえ。

   三日もすればぐらぐらもなじんできて
   こういうもんだと
   暮らしている

   こういうもんだと
   暮らしている

しかし、痛みはないのだろうか。それが気になってしまう。
山沖素子のエッセイ「それは「ワタシ」だったもの」でも、抜かざるを得なかった歯についてが書かれている。疾病によって切除した臓器とは違って、歯はワタシの味方だったのだから、それは愛着のあるものの喪失である。ちなみに、歯を失い続けてきた私(瀬崎)はまもなく3本のインプラント治療が終わるところである。

金井雄二が評論「生きている詩を書く」で菅原克己の八冊目の詩集「一つの机」について書いている。この詩集の発行日の前に菅原は亡くなっている。そんな詩集の中の作品について金井は次のように述べる。、

   どのような場合の詩であっても、言葉だけではいい
   尽くせぬ気持ち、言葉の意味を飛び越えて、新たな
   意味が生まれでる、そんな要素が必要なのである。
   そうでなければ詩を書く意味がない。

金井のような読者がいてくれることは、作者にとってはなにものにも代えがたい幸せであることだろう。

今号には発行人である大家正志の「編集雑記」がなかった。実を言えば、毎号始めに読んでいた記事だったので、それがないのはちょっと寂しい。
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