瀬崎祐の本棚

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詩集「Wanderers」  伊藤浩子  (2014/09)

2014-10-07 22:36:00 | 詩集
第2詩集。108頁に23編を収める。詩と思想新人賞叢書の1冊。
 「象の墓場」は、象のいのりを「象の脚ごと/ひろがりひろがりひろがり続ける海に捨てて」くる話。童話のような情景の中で、ぞっとするような悪意がちくちくと突き刺さってくる。

   彼はポケットの中から
   するすると象の脚を引きずり出した
   でも よく観ているとそれは象ではなくて
   ひからびた父親の脚

   向こうの象工場ではひょっとすると
   父親たちを作っているのかもしれない

 「あんた もう/この鄙びから出た方がいいと/恥をそそいで/しずかにやってくるものがある」と始まる「Family Affair」。200行近い作品で、「死んだはずの父」は土手で骨を洗っており、そして「子を産みつづける母と妹」がいる。粘り着いてくる血脈を取り除いてしまいたいともがいているようなのだが、

   (わらったらいけないよ
   垂れ流される糞尿を
   清水がのみこむすがすがしさまがまがしさ
   排臨には
   (はいりん
   発露には
   (またはつろ
   うかれながらも
   母と妹は何度もいきむ

 見え隠れしていたものが、やがて露わになり、またもや絡みつくものが誕生する。最後の言葉は「(いない、いない//父などいない/はなからいない」。ここでは血を流しつづける母系家族しか存在することを許されないのだろう。
幼稚園の「たなかさんの夢に閉じ込めれられ」ていく「たなかさん」も、それこそ白昼夢を見ているような面白さであった。
 これは決して貶し言葉ではないと断った上での感想だが、あらゆる場所に悪意が詰まっているかのような詩集だった。
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