瀬崎祐の本棚

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詩集「祝福」  山本泰生  (2013/010)  歩行者

2013-12-16 17:16:01 | 詩集
 第8詩集。大判の86頁に35編を収める。
 巻頭の数編には”相棒”と親しみを込めて呼ぶ伴侶の入院生活の一場面や、退院してからの静かな生活の様子が詩われている。相棒を思いやる気持ちがどの作品にも満ちあふれている。
 「かくれんぼ」では、夫婦の内の一人が永遠のかくれんぼをしてしまう時を思っている。どんなに辛くても、どちらかが先に姿を消すのだ。もし、わたしがひとり残ってしまったら・・・。

   そうだ
   わたしが鬼になろう
   おまえの隠れそうな所へ捜しにいこう

   いつまでも見つけられなくて
   うろうろするうちに
   わたしは帰り道を忘れてしまう
   それがいい

 なにかとてもよいことを思いついたように気持ちが前向きに弾んでいる。辛い避けられない日の訪れの予感を、こうして耐えようとしている。
 「飛舟」では、「生きることをただ消化する日々」に「核心に届こうとする」ことばを捜している。それは「青く冷たく」たぎっていて、「風になって」「あっという間に吹きぬける」ようなものなのだ。

   笑うひとがいて
   自分のことをひとり笑っていると
   こんどは
   弾むことばから近づいてくる
   一瞬じゃれては突きぬける
   命の炉もたやすく

 気持ちが優しくほぐされるような詩集であった。
コメント
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