隊長が、これまでに鑑賞した「映画 」を紹介するシリーズの第204作品目は、『北京ヴァイオリン』をお送りします。
『北京ヴァイオリン』(原題:和你在一起)(英題:Together)は、2002年9月に公開(日本公開:2003年4月)された中国映画です。言語は、中国語普通話(北京語)。日本公開時は、日本語字幕版。
「隊長のブログ」では、中国映画を、これで23作品を紹介したことになります。詳細は、こちらの記事一覧を、ご参照下さい 。
製作会社:中国電影集団公司、ほか。上映時間:116分。
監督:陳凱歌(チェン・カイコー)
脚本:陳凱歌、薛暁路(シュエ・シャオルー)
チェン・カイコー監督作品を、これで3本を取り上げたことになります。詳細は、こちらをご参照下さい 。
出演:唐韻(タン・ユン)、劉佩琦(リウ・ペイチー)、王志文(ワン・チーウェン)、陳凱歌(チェン・カイコー)、陳紅(チェン・ホン)、ほか。
あらすじ:中国北部の田舎町に住む13歳の劉小春(リウ・シャオチュン)《唐韻》は、彼が幼いころに亡くした母親の形見のバイオリンを巧みに弾き、何度も地元のコンクールで受賞しています。
父親の劉成(リウ・チェン)《劉佩琦》は、街の中華料理店の調理師です。男手ひとつで一人息子の小春を育てる劉成は、息子を誇りに思い、深い期待を抱いています。
そんな息子に質の高いヴァイオリンの教育を受けさせ一流のヴァイオリニストにしてあげようと、劉成は必死に働きコツコツと金を貯めていました。
ある日、二人は、北京少年宮殿で開かれる、全国的なバイオリンコンクールに出場のため、全財産を懐に、北京へとやって来ました。
コンクールでは、惜しくも5位に終わった小春でしたが、彼の才能を確信した劉成は、有名な江(ジャン)先生《王志文》の個人授業を受けさせるため北京に移り住むことになります。
そして、江先生の熱心な指導の下、小春も練習に励むのでしたが。。。
感想:父と息子の愛情の深さに感動させられた作品です。しかも、二人は血の繋がった親子ではありません。小春が幼い頃に母が亡くなったと息子には説明していますが、実際は駅のベンチにバイオリンと一緒に捨てられていた小春を、劉成が見つけ育てることになったのです。
劉成が自分の全てを息子に捧げ、立派なバイオリニストに育てようとしたのは、息子を捨てた母親へ、思い知らせるためだったのではないでしょうか。
芸術に長けた地方の少年が、中国の首都・北京にやってきて英才教育を受ける設定は、クラシックバレエを題材とした 『小さな村の小さなダンサー』 と、同じです。
しかし、『小さな村の小さなダンサー』の主人公が、海外で成功するのに対して、『北京バイオリン』の主人公は、海外で活躍するバイオリニストへの登竜門のコンサートへの出演を辞退し、父のもとに帰るというストーリーです。
また、『小さな村の小さなダンサー』は、中国と中国人を題材にしていますが、原作、監督、脚本とオーストラリア人の作品です。日本では公開されましたが、中国で公開されたかは不明です。
一方、『北京バイオリン』は、全て中国人のスタッフ・キャストによる作品で、中国で公開されるや、巨匠・チェン・カイコーということもあったのか、ヒットし、2004年には、同題名でテレビドラマ化されています。
それにしても、中国の芸術の世界でも、金で名声を得られる描き方をしています。拝金主義に対する、チェン・カイコーなりのアンチテーゼの作品なのでしょう。
チェン・カイコーの作品には、『空海―KU-KAI― 美しき王妃の謎』 のような多額の製作費と投じた大作もありますが、隊長が好きな彼の作品は、『北京バイオリン』のように小品ながら感動を与える映画です。
出演陣は、みなさん好演で、キャスティングも秀逸です。
主人公の小春を演じた唐韻(タン・ユン)、バイオリンを弾くシーンだけでなく、父親に反抗的になったり、大人の女性に好意を持ったりと、悩める思春期の少年を垣間見せるシーンの演技も自然で良かったです。
父親役の劉佩琦(リウ・ペイチー)、さすがです。愛情深い父親としての顔だけでなく、現在BS11にて放送されている中国ドラマ 『月に咲く花の如く』 で、主人公の養父・周老四役で演じているひょうきんな面もこの映画で見せてくれています。
チェン・カイコー監督自身が、江先生の次に小春を指導する音楽大学の余教授役を演じているのには、驚かさせられました。偽善者で権威主義の余教授、いわば悪役なのですが、何故かハマったいました。
全編に流れる音楽も、中国の有名交響楽隊が演奏していて、映画のムードを盛り上げています。
最後になりますが、これまでに、「映画」の記事の中で、外国映画の邦題(日本語タイトル)の付け方の良い作品と、悪い作品を挙げていて、それを一覧にしています が、本作は良い作品だと思います。
中国語原題の「和你在一起」、英題の「Together」から意訳して邦題を付けるとしたら、「親子共に歩んだ道」などとなるのでしょうが、これでは何の映画か分かりません。北京でバイオリニストを目指す物語だということを分からせるためにも、 『北京ヴァイオリン』のタイトルは良かったでしょう。さらに、「バイオリン」ではなく「ヴァイオリン」としたのも題名に深みを感じさせています。
==「映画」バックナンバー =
http://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/c/226e9f0193a60e6a012384176360666f
Film1~190 省略
Film191 2020/8/25 『海街diary』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/7b8dc81044ecbe3662e1bbfe2e6c44bb
Film192 2020/8/29 『TAXI NY』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/616b0ac53c47ef54b3f736b3bf58636d
Film193 2020/9/2 『コンフィデンスマンJP ロマンス編』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/a8cc3cb1c692eb2e3b9e3723e5ceff09
Film194 2020/9/6 『丹下左膳 百万両の壺』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/818aa36c7c3ddd1a5a14ee202444b041
Film195 2020/9/9 『ハドソン川の奇跡』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/db3e0cf65676ba73bd806f07850a5ea5
Film196 2020/9/13 『グリーンマイル』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/876a4508199a8cf4d0832c063b02d670
Film197 2020/9/15 『チィファの手紙』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/a2928d17c0dab4ca2d5b48fdd62f7bf8
Film198 2020/9/19 『夕陽のガンマン』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/f1448b241b34eb39c42b9f97bdd98095
Film199 2020/9/23 『助太刀屋助六』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/aedb38fd6db9e282b364c163bd5dcfc5
番外編 2020/9/27 『訃報:竹内結子さん』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/05c749f8671fc7fb48c90ad928072528
Film200 2020/10/1 『マッドマックス』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/e6870d95eef84dd873c6a5e7b354e3c1
Film201 2020/10/7 『遥かなる大地へ』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/9a954d71a3a890ce823b5da663e66204
Film202 2020/10/21『沈黙 -サイレンス-』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/6e93199062e948a5cc81dc9576d40d5e
Film203 2020/11/16『ラッキー・ナンバー』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/7408388a7daaaf3ef3c833dad081e918
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます