桑の海 光る雲

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登山の記49・富士山(1回目)②

2006-06-02 20:43:42 | 旅行記

日が昇ってゆっくり小屋を後にした。これがよかった。なぜなら、山頂でご来光を見るために、山頂は大変込むことを後で知ったからである。

登山道は比較的空いている。夏は登山道が混雑すると聞いていたが、全くそんなことはない。よって、高度が上がるに連れて息が苦しくなってきたが、すぐに立ち止まって休むことができた。

ともかく、まだこの頃は山に登り慣れていなかったから、とにかく足が動かない。そして3,000メートルを越え酸素も薄く、とにかく息苦しい。しかし、同行者がいたし、何しろ良い天気で風もない。あとは山頂に立ちたいという一念だけで登っていった。

9合目の小屋に、当時流行していたタレントショップがあった。酒井法子のノリピーグッズを売る店である。計画当初富士山行きを誘おうと思っていた友人のS原への土産に、ノリピーグッズを買っていこうとも思ったが、何しろ貧乏旅行の上、ノリピーグッズはいずれも結構な値段だったので、買うのはやめた。

少し登っては休み、を繰り返すと、石造りの鳥居が見えてきた。それをくぐると山頂だった。建ち並ぶ小屋の一つに入り、メニューの中で一番安いうどんを食べた。味は学食のうどん並み、値段は学食の2倍以上だったが、温かいものを食べられるのはありがたかった。1本300円(8,9合目の小屋では250mlの缶で300円、山頂の小屋では300mlの缶で300円だった)のポカリスウェットが美味しかった。

その後私達は火口を一周することにした。雲一つ無い空、しかも無風の最高の天気である。左回りに火口を周り、最高点の剣が峰に着いた。ここには今はなき富士山測候所があった。その前で写真を撮したが、私は結局その写真をもらわずにいるうちに、A葉も私も写真のことを忘れてしまった。

山頂からの眺めは素晴らしかったのだが、残念なことに、当時の私は山頂から見える山々の名前を全く知らなかった。おそらく、南アルプスから北アルプス、八ヶ岳等の山々を一望できたはずなのだが・・・

火口を一周して、山頂の郵便局からスタンプを押した葉書を出した。そこにあった公衆電話から、S原に電話をした。S原はまだ起きたばかりだった。「メシ食い行こうぜぇ。」と話すと、「行くよ~」との返事。「いま富士山の山頂にいるから、行くまでにしばらくかかるよ~」とは話すと、「ふざけるなよ~」との返事。A葉と二人で笑った。

下山は速かった。人は少なく、天気も良かったので、5合目までほとんど駆け下りた。1時間半くらいで下りてしまったと思う。車に着いて荷物を下ろし、ふと手を髪にやってみると、がさがさである。そう、下山の時に舞い上がった土埃が髪にこびりついたのである。帰りに温泉にでも入りたかったが、そんな情報もなく、仕方がなくそのまま帰った。金がなくなったので高速を八王子で下り、一般道で帰った。途中で初めて食べたリンガーハットのチャンポンが美味しかった。

帰ってシャワーを浴びると、髪から赤黒い水がしたたり落ちた。富士山の赤い砂と同じ色だった。

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