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登山の記19・羊蹄山②

2006-03-30 22:42:07 | 旅行記

私はその日は別の宿に移ることになっていたので、5人が3台の車に分乗して、半月湖畔の登山口までやって来て、登り始めた。メンバーは男性3名と女性2名である。

それにしてもいかにも夏らしい、素晴らしい青空が広がっている。登山口までやって来る間も、目の前に羊蹄山はどっしりした姿を見せてくれていた。昨日は悪天候で登れなかったが、今日は天気にも、同行メンバーにも恵まれ、一日待った甲斐があった。

登り始めてしばらくは、林間のなだらかな道が続く。登山道や立て看板などもよく整備されている。2合目辺りを過ぎると傾斜が急になり始め、樹林帯をジグザグに登りながら、だんだんと高度を上げていく。

6合目辺りで展望が開け、樹林帯を過ぎ、今度は背の高いハイマツ帯に入る。樹林帯では風もなく、かなり暑かったのだが、ハイマツ帯に入るとところどころで展望も開け、心地よい風が、汗ばんだ肌をなでていく。

9合目辺りから火山特有の砂礫地が始まる。しかし、地面は固く締まっており、利尻山のように歩きにくいことはない。そのうちに火口の縁に付いた。南の方は見えないが、少なくとも北側、西側には雲一つなく、素晴らしい展望が広がっている。ニセコ連峰や倶知安方面の町並みをくっきりと眺めることができた。

羊蹄山の山頂は、私達が登ってきたコースが最初に取り付く火口の縁とは、火口を隔てて正反対の場所にあるので、そこからしばらくは、火口の縁を歩くことになる。やって来てみて初めて知ったのは、羊蹄山の山頂にはいくつも火口がある、ということである。一番大きな火口を父釜、その次ぎに大きいのを母釜、それ以外にも子釜や星ヶ池といった火口が口を開けている。

火口の縁は、大きな岩がごろごろしており、それを踏み越えていかなければならず、縁の幅も意外と狭いので、結構歩きづらかった。しかし、東側にも青空が広がり、南側にも雲が少し浮かんでいるだけなので、素晴らしい展望を堪能しつつ歩いていった。

山頂は岩がごろごろしている一角に設けられていた。既に何人かの人が休んでいた。吹く風も心地よく、素晴らしい登山日和である。そこに大学生とおぼしき1人の若者がいて、写真を撮ってあげたり、ビデオを代わりに撮してあげたりしていた。笑顔を作らせたり、インタビューしたりする時の口調がとても面白く(しかも礼儀正しい)、山頂にいた人達も私達もすっかり彼のペースに乗せられ、楽しい一時を過ごすことができた。何でもヒッチハイクとキャンプで道内を旅しているとのことだった。きっと下山後も、簡単に車をつかまえてどこかへ旅立っていくのだろう。

火口の南側に来ると、洞爺湖を見下ろすことができた。そう、かつてあの湖のほとりから、雪を頂いた羊蹄山を見たのが、羊蹄山を眼にした最初だった。その羊蹄山の山頂に今、自分は立っているのである。そんな感慨に浸りながら、洞爺湖、そしてその向こうの噴火湾を眺めていた。

火口を一周し、避難小屋へ立ち寄り、後はひたすら下山するのみであった。登山口で皆と別れ、今夜の宿・ニセコ遊牧民へ向かった。

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