桑の海 光る雲

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登山の記番外編・若草山

2006-03-26 20:49:00 | 旅行記

私が所属する書道の会は奈良に本拠地がある。毎年3月には会の展覧会があり、必ず出かけるようにしている。今年は仕事の都合で前日から奈良に入ることはできず、当日の午後から入ることになった。そして、先輩方や先生方と話したり、総会に参加したり、作品を鑑賞したりした。

今日は特に予定もなく、昼の新幹線で帰ることにしたので、午前中は何をしようか考えた。レンタカーで古墳めぐりでも、と考えたのだが、金もかかるので、夕べの宴会の会場から眺められた若草山に登ることにした。若草山の山頂には、「枕草子」の「みささぎは」の章段に「うぐひすのみささぎ」として登場する鶯塚古墳がある。それも見てみたかった。

入山料150円を払って登り始めた。山に登るのに金を払ったのは初めてである。でも、実は金を払わなくても山頂に登れるルートがあるのを後で知った。入山料は芝生の管理や早春恒例の山焼きなどの費用に充てられるのであろう。

登山道は整備され、階段か芝生になっている。あちこちに鹿がおり、糞がたくさん落ちている。昔笑っていいともで紹介されていた吉永小百合の「奈良の春日野」の歌詞を思い出した。

かっこうが山登りのそれではないので、暑いし動きづらい。しかも山頂だと思って着いた先に、さらに本当の山頂が現れた。山登りの時はよくあることだが、まさかこの若草山でも経験するとは思わなかった。

額に汗してようやく山頂に着いた。そこに鶯塚古墳があった。丘陵の山頂を利用した古墳は、古墳時代の前期によく見られるものである。墳丘の規模も大きく、ここまでやって来ての古代人の作業の大変さが思われた。また、これほど眺めのよい場所を永眠の場に選んだのはどのような人だったのだろうとも思った。

下山しながら、東大寺大仏殿が見える場所に来た。屋根の上の鴟尾(しび)の黄金の輝きが、春の霞んだ古都の眺めにアクセントとなっている。その向こうに遙か遠くまで続く、低い山々に囲まれた奈良盆地は、現在ではビルや住宅で埋め尽くされているが、1300年の昔には、日本史の教科書に登場する人々が確かにここで生きていたのだと、私は感慨深く眺め下ろしていた。

奈良に来てまで山に登ってしまうのは、我ながら困ったことであった。革靴で登ったので足が痛くなってしまい、靴も傷んだことだろう。

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