桑の海 光る雲

桑の海の旅行記・エッセー・書作品と旅の写真

「モスモス」のこと・その6

2005-02-27 19:12:56 | アート・文化
それは突然やってきました。そう、モスモス編集部からの電話や手紙はいつもそうでした。座談会の案内、大賞の名刺、そして、投稿のお礼と掲載のお知らせ、採用記念で送られてくるモスモスetc。

話は前後しますが、14号ではつぼにはまった課題が多く、例によって各コーナーにいくつもの作品を送りました。その結果、「弁慶のドラゴン」「しがらみ村」「自画展」に計3作品が掲載されました。絵は下手だったのですが、平安時代の絵巻物の顔をまねて描いたら面白いんじゃないか、思って応募してみたら、見事に採用となりました。でも、実物とは似ても似つかないものです。

で、その14号が発行されて間もないある夜のことです。編集部の女性からの電話でした。
「○○(本名)さんですか?」
「はい、そうですが。」
私はまた座談会か何かの案内か、あわよくば15号の大賞受賞か、と思って色めき立ちました。
「実は、ついにお願いすることになったのです。」
「へ?」
「MVPです。」
「え、えむう゛いぴーですか?!」

MVPと言えば、123456さんをはじめとして、歴代の名投稿家達を紹介(表彰?)する、表紙をめくって最初のページに位置する最も栄誉あるコーナー(私が思うに、です)です。毎号紹介される投稿家達の顔を見て、すでに大賞も受賞し、
投稿回数ではさくらさんに匹敵するであろうとの自負もあった私は、MVPに登場したい!と考えていなかった、と言ったら嘘になります。そこで、私はすぐに、

「わかりました。で、どういうふうに紹介されるんでしょうか?」
と答えました。すると、
「○○さんは、14号から本名をペンネームに変更されましたよね。その辺のいきさつをふまえてご紹介したいのですが。いかがでしょうか。」
「え、とういうことは、本名も、そして、顔もばっちり載っちゃう、ってことですか?」
「そういうことです。」
(まずいなぁ・・・それじゃあペンネーム使い始めた意味がないなぁ・・・しかも顔が出ちゃうし・・・顔はまずいよ、やっぱ・・・見せられるもんでもないし・・・)
「あ、あのぅ、いつぞやの123456さんのように顔を探させたり、NORさんのようにデジタル処理して、顔がよくわからないようにしていただくことはできないでしょうか?」
「出来ればぜひ顔も出していただきたいんですよ。何かまずい事情がおありでしょうか?」
「いやぁ、そんなことはないんですが・・・あ、あのぅ、申し訳ないんですが、2,3日考えさせていただけないでしょうか?場合によってはダメ、ということでもいいでしょうか?」
「わかりました。お返事はできるだけ早くお願いできますか?」
「はい、そうします。」
と言って私は電話を切りました。

さて、どうしよう、どうしよう・・・私は考え続けました。モスモスには、確かに本名で投稿していました。しかし、これはお遊びだから特に本名を隠す必要もないし、モスモスに投稿していることで、遠く離れて住んでいる学生時代の友人達に「俺ってこんなことやってんだぜーっ!」っていうメッセージを送っているつもりだったのです。そのために、本名で投稿することはそれなりの意味を持ってました。でも、社会人となって、それなりの責任や人間関係も生じました。その一方で、モスモスに投稿する作品を作ったり、作品が掲載されたモスモスを見ながら一人悦に入っていたりしていると、何だか自分の中にもう一人の自分がいて、そのもう一人の自分がモスモスという場で何やら作って掲載されて楽しんでいる(別に二重人格、ということではありませんので念のため)ような気がしてきたのです。そうなると、無理に素性や素顔を明かす必要はないんじゃないか、123456さんのように、謎なままの存在でいるのもかえって楽しいんじゃないか、と思うようになってきたのです。本当に2,3日考えて、以上の様なことを書いて編集部にFAXを送りました。電話をするのは、編集部の方に申し訳ない気がしたからです。

結局、15号のMVPは、座談会でお会いし、私が学生時代には、実はご近所に住んでいたくろこふさんが掲載されました。それを見ながら、ちょっと残念な気もしたけれど、まぁ、これでいいや、と自分を納得させました。モスモスサーカスで、MVPが再録された時も、ちょっと残念な気がしたけれど、その時には、あれだけ作品を掲載してもらって、大賞も2回ももらって、その上MVPにまで登場しては、他の投稿家達に悪いよな、と自分に言い聞かせて納得しました。

15号では、「スイム2003」のみの掲載でしたが、それ以外の課題は今ひとつぴんと来なかったように記憶しています。今回は、”MVP登場お断り事件”を扱ってみました。




コメント (2)
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