みちのくの山野草

みちのく花巻の野面から発信。

必ず一次情報に立ち返って

2022-10-13 12:00:00 | 賢治渉猟
《三輪の白い片栗》(種山高原、令和3年4月27日撮影)
 白い片栗はまるで、賢治、露、そして岩田純蔵先生の三人に見えた。
 そして、「曲学阿世の徒にだけはなるな」と檄を飛ばされた気がした。

 それにしても、昭和52年の筑摩は『校本全集第十四巻』において、
  〝「新発見の書簡 252c」等の公開〟

  〝「昭和二年十一月ころ」とされている年次を、大正一五年のことと書き変えた〟
という横車をなぜ押したのだろうか。いくら、当時の「倒産直前の筑摩書房は腐りきって」いたとしても、担当編集者等はそんなことは避けなければならなかったはずだし、避けられたはずだ。
 たとえば、後者の横車については、その典拠を〝関『随聞』二一五頁の記述〟とせずに、研究の際の基本中の基本である「一次情報に立ち返る」に従えば容易に防げたはず。つまり、『續 宮澤賢治素描』の『原稿ノート』は無理だとしても、「澤里武治氏聞書」(『續 宮澤賢治素描』所収)を探せば比較的容易に見つけ出せたはず(まして、筑摩書房の関係者ならなおさらに直ぐに見つけられたはず)で、それを典拠とすればかなりの程度防げたはずだ。担当編集者等はなぜそのような一次情報を探し出すことをしなかったのだろか。

 このことに関して、石井洋二郎氏が次のような警鐘、
 あらゆることを疑い、あらゆる情報の真偽を自分の目で確認してみること、必ず一次情報に立ち返って自分の頭と足で検証してみること、この健全な批判精神こそが、文系・理系を問わず、「教養学部」という同じ一つの名前の学部を卒業する皆さんに共通して求められる「教養」というものの本質なのだと、私は思います。
             〈「東大大学院総合文化研究科・教養学部」HP総合情報平成26 年度教養学部学位記伝達式式辞(東大教養学部長石井洋二郎)〉
を鳴らしている。では、なぜ同氏はこのようなことを述べたのかというと、同HPによればおおよそ次のようなこと、
 あの有名な、「大河内総長は『肥った豚よりも痩せたソクラテスになれ』と言った」というエピソードを石井氏が検証してみたところ、
「早い話がこの命題は初めから終りまで全部間違いであって、ただの一箇所も真実を含んでいないのですね。にもかかわらず、この幻のエピソードはまことしやかに語り継がれ、今日では一種の伝説にさえなっている」
という思いもよらぬ結果となった。そこで、このことを憂慮した同氏は卒業生に対して、
  「必ず一次情報に立ち返って自分の頭と足で検証してみること」
が如何に大事かということを訓えようと思った。そしてまた、
  「この健全な批判精神こそが、「教養」というものの本質なのだ」
ということもまた。
からだと私は理解した。
 実際私も、この式辞の中味を知るまでは、「大河内総長は『肥った豚よりも痩せたソクラテスになれ』と言った」は事実であると思い込んでいたから、やはり鵜呑みにすることは危険なのだということをなおさら覚った。かつては、「疑うことが学問の始まりである」という基本を叩きこまれたはずの私だが、いつのまにか唯々諾々と鵜呑みにしてきたことが多かったなと反省しつつ、これからは基本に立ち戻ろうと自戒し、

 今後は、健全な批判精神を失わず、方法論としては「必ず一次情報に立ち返って自分の頭と足で検証してみること」を心掛けてゆこう。

と決意を新たにしたのだった。さもないと、私には「教養」が甚だ欠けていることになるからだ。

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