みちのくの山野草

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「倒産直前の筑摩書房は腐りきっていました」

2022-07-17 12:00:00 | 賢治渉猟
《ヤマルリトラノオ》(真昼岳、平成30年7月19日撮影)
魑魅魍魎の世界
 ――「必ず一次情報に立ち返って自分の頭と足で検証してみること」――

 さて、高瀬露が客観的根拠もないままにとんでもない〈悪女〉にされているという現実は、そうされた理由が極めて理不尽で不条理なものであるということ、普通であればあり得ないような理由であったということの蓋然性が極めて高い、そう思って前回や先の〝なぜ客観的根拠もないのに〈悪女〉にされたのか〟でその「理由」を私なりに考えてみたのだが、いままでのところその「理由」はあまり説得力がないことを自覚している。

 それにしても、なぜだったのだろうか。筑摩書房ともあろう出版社がこのようなことを昭和52年にしてしまったのは。文学全集や個人全集等を出版し続け、良心的で硬派の出版社だと思っていた筑摩が、「賢治の書簡下書252c」のことを「新発見」と称して、プライバシー侵害の虞もある関連下書群を公けにしたのは。しかも、これらの下書群を確と検証することもなしに推定し、さらにそれを基にして推定を繰り返した、人権侵害等の虞もある推定群を公開(以下、この関連下書群の公開のことを「252c等の公開」と略記する)したのは。ここ十年ほど、私はこれらの原因や理由が分からず、ずっと悩み続けてきた。
 それがこのコロナ禍、倒産のニュースが流れることが多かったせいか、とある日、「あれっ、そういえば、あの頃筑摩も倒産したような気がする」というおぼろげな記憶が甦った。すかさず、もしかするとそれが一つの大きな原因だったのではなかろうかと直感し、一気に不安になった。
 早速、インターネット上で少しく調べてみたならば、どうやらそのようなことがあったらしいので、筑摩の社史であるという『筑摩書房 それからの四十年』(永江朗著、筑摩書房)を注文した。手元に届いた同書を、私は慌ただしく瞥見した。不安は的中した。
 一九七八(昭和五三)年に筑摩書房が「倒産」したとき…投稿者略…
             〈『筑摩書房 それからの四十年』(永江朗著、筑摩書房)85p~〉             
とあり、やはりあの頃(昭和53年)筑摩はたしかに「倒産」していたからだ。そこで今度は落ち着いて同書を読み直してみた。すると、次のような、
 一九七〇年代の筑摩書房は、目先の現金ほしさに紙型新刊を乱発するなど、必ずしも「良心的出版社」とはいいがたい実態があったし
             〈同146p〉
とか、
 倒産直前の筑摩書房は腐りきっていました。なかでも許しがたいのは「紙型再版」です。つまり、同じコンテンツの使い回し。紙型=印刷するときの元版を再利用して、あたかも新しい本であるかのように見せかけ、読者に売りつけようとしました。新世紀に入ると、食品偽装事件があちこちで発覚しましたが、紙型再版も似たようなものです。
             〈同348p〉
という記述があったので私は愕然とした。
 それはもちろん、「「良心的出版社」とはいいがたい実態があった」とか、「倒産直前の筑摩書房は腐りきっていました」などということを、自社の社史に直截的に書いていたからだ。ただし次に、これらの断定的記述は筑摩ならではの厳しい自戒の念と矜持が書かしめたのだろうということも想像できたので、心はやや落ち着いた。とはいえ、この記述内容は事実であり、これ程までだったのかと、ますます不安が募ってしまった。

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