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【東北砕石工場技師時代の賢治(1930年頃 撮影は稗貫農学校の教え子高橋忠治)】
<『図説宮澤賢治』(天沢退二郎等編、ちくま学芸文庫)190pより>
<『図説宮澤賢治』(天沢退二郎等編、ちくま学芸文庫)190pより>
では今度は『農民藝術 No.7』(農民藝術社、昭和23年8月)からである。
さて、戦時中、戦意昂揚に利用された「雨ニモマケズ」であったということは最早否定しようがない、ということを私もやっと受け容れられるようになった。ということであれば、そのような「雨ニモマケズ」は敗戦後はその反動から遠ざけられたり無視されたりしたのだろうか。例えば、あれだけ皆から感謝され尊敬されていた(もちろんこの花巻ででも)松田甚次郎が、「時流に乗り、国策におもね、そのことで虚名を流した」というように、敗戦を境にして掌を返されたのと同じような運命を「雨ニモマケズ」も辿ったのだろうか、とふと思ってしまった。
それは、この『農民藝術 No.7』(農民藝術社、昭和23年8月)の目次
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3f/81/7d56e953eac412c85be100cd0a542fee.jpg)
を見たならば、宮原真太の〝詩篇「雨ニモマケズ」について〟 という論考があったからだ。
そこでその中身を見てみると、その最初に「雨ニモマケズ」の全文が載っていた。そしてそれに続けて、こんなことが書いてあった。
近代日本の生んだ最高精神の結晶として、詩碑にも刻まれてゐる宮澤賢治の詩「雨ニモマケズ」は、すでに国民的詩章として、賛仰愛誦せられ、それについての吟味批評も、次々に現はれてゐることは、周知のとほりである。この詩篇や、童話「どんぐりと山猫」や、「農民芸術綱要」などが、新制の小学・中学・高等学校等の国語の教材に採録されたのは、一昨年の二月以降で、十年近くも教壇で取扱つた私とつては、当然の宿望が、実現せられたよろこびである。
〈『農民藝術 No.7』(農民藝術社、昭和23年8月)6p〉これを読んでみて先ず改めて感じたことは、「雨ニモマケズ」のことを「近代日本の生んだ最高精神の結晶」と戦後になっても褒めちぎっていた人が実際に相変わらずいたんだ、ということである。しかし、この人のみらず、あの人だって敗色濃厚になった昭和19年9月20日に行った講演で、「この詩を私は、明治以来の日本人の作った凡ゆる詩の中で、最高の詩であると思っています」とか「その精神の高さに於いて、これに比べ得る詩を私は知らないのであります」と褒めちぎっていた人もいたが、戦意昂揚に利用された「雨ニモマケズ」を歴史的にどう検証し、どう総括したのだろうか。それともそんなことは、彼等には関係のないことだったのだろうか。
そして、「この詩篇や……新制の小学・中学・高等学校等の国語の教材に採録されたのは、一昨年の二月以降で」とあるように、「この詩篇」は昭和22年2月に発行された 国定教科書「中等国語一」において、
【1 国定教科書「中等国語一」の扉】
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/51/cd/150231fa64403b293f1146f2590f70b5.jpg)
【2 〃目次】
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/30/ba/dc5701407368b1cc946a1bed6bd322ca.jpg)
【3 『三 雨にもまけず』】
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/72/cc/6bb49d1505dfc9f20238c1040b2d30f2.jpg)
【4 〃の続き】
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3b/53/9c79e8ef61a5a1ebbbf224ae121008ca.jpg)
【5 同教科書の奥付】
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/13/14/1958edbee4fa38cda1fc838be2c819bd.jpg)
というように、たしかに「国語の教材に採録された」。
だがしかし、よく見てほしい、
一日に玄米三合
となっている。だから私は首を傾げる。にもかかわらず、「当然の宿望が、実現せられたよろこびである」となるのだろうか、と。賢治の作品が他人によって勝手に都合よく改竄されていたというのに。
とまれ、賢治の想いとは別に独り歩きしてしまって、その時々の世情に応じて恣意的に、都合よく利用される属性が「雨ニモマケズ」はありそうだ。戦時中も、そしてこのように戦後も、さらには最近では東日本大震災後にももてはやされたからだ。ちなみに私は、「雨ニモマケズ」は、「祈りと願い」ということではなく、どちらかというと「悔恨と懺悔」だったのではなかろうかと理解しているので、このような利用のされ方には強い違和感があるのだが……。
なお、残念ながら今回もこれらの中には、東北砕石工場技師時代の賢治に関しても、石灰に関しても言及は一切見つからなかった。
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