みちのくの山野草

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『農民藝術 No.8』(農民藝術社、昭和24年7月)

2021-05-20 12:00:00 | 賢治の「稲作と石灰」
【東北砕石工場技師時代の賢治(1930年頃 撮影は稗貫農学校の教え子高橋忠治)】
<『図説宮澤賢治』(天沢退二郎等編、ちくま学芸文庫)190pより>

 さて、では今度は『農民藝術 No.8』(農民藝術社、昭和24年7月)からであるが、残念ながら、この本の中にも東北砕石工場技師時代の賢治に関して、あるいは石灰に関して言及している個所は見つからなかった。

 ただし、気になったものが同書所収の佐藤隆房の寄稿「賢治さんとその弟子」だ。そしてそれは、
 大正十五年(昭和元年)十二月二十五日、舊冬の東北は天も地も凍結れ、道は冱てつき、弱陽が木立に梳られて落ち、路上の粉雪が小さい玉となつて静かな風に揺り動かされて居ります。
 花巻郊外のそ冬の田舎道を、制服制帽に黒のマントを着た、高農の生徒が歩いて行きます。生徒の名前は松田君、岩手日報紙上にて「宮澤賢治氏が羅須地人協會を開設し、農村の指導にあたるといふ記事を見て、將來よき指導者として仰ぎ得らるゝ人とも思はれ、訪ひ行く處です。
             〈『農民藝術 No.8』(農民藝術社、昭和24年7月)26p〉
と始まっていた。
 そこで直ぐに思い出すのは、同じく佐藤隆房の「八二 師とその弟子」であり、それは、
 大正十五年(昭和元年)十二月二十五日、旧冬の東北は天も地も凍結れ、路はいてつき、弱い陽が木立に梳られて落ち、路上の粉雪が小さい玉となって静かな風に揺り動かされています。
 花巻郊外のこの冬の田舎道を、制服制帽に黒マントを着た高等農林の生徒が辿って行きます。生徒の名前は松田君、岩手日報紙上で「宮沢賢治氏が羅須地人協会を開設し、農村の指導に当たる。」という記事を見て、将来よき指導者として仰ぎ得る人のように思われて、訪ねて行くところです。
            〈『宮澤賢治』(佐藤隆房著、冨山書房、昭和26年)197p〉
というようにして始まるものであり、基本的には両者は同一の内容だと判る。おそらく、まず昭和24年7月に公にし、それを後者に所収したのであろう。

 ところで、『宮澤賢治』(佐藤隆房著、冨山書房)の初版は昭和17年9月発行であり、こちらにはこの「八二 師とその弟子」は所収されていない。ということは、佐藤隆房はこの「八二 師とその弟子」の中身は昭和17年9月後に知ったことになるのだろう。では、佐藤はどのようにしてこの中身を知ったのだろうか。例えば次のようなことを。
⑴大正15年12月25日に松田甚次郎は羅須地人協会を訪れたこと。
⑵その際に、賢治が「草刈り」の詩
つめたいといふのに
刈れといふのか
ねむいといふのに
刈れといふのか
を朗読したこと。
⑶その際に賢治から、
 「家に歸つたら、假令、土地があつても決して 地主にならないで、どこまでも自作人になつて働いて下さい。實際、農家といふものは自分で百姓をするので尊いのですよ。地主となつて人に作つてもらう、そうゆう百姓にならないで下さい。」 とつくづく述べ、又「百姓はつらいのです。每日每日雲行や肥料のことを心配しながら、朝ははやくから夜はおそくまで働いて、そして樂しみといふのは何一つないのです。せめて農民劇でもやらせて、村は村で苦しい中にも樂しい生活をさしてやりたいのです。」
と言われたこと。
⑷昭和2年3月18日に二度目の下根子桜訪問をしたこと。
⑸昭和2年8月18日に三度目の     〃     。

 というのは、これらの⑴~⑸は定説とは微妙に違っていたりしているからだ。したがって、これらに関わる定説については今後再検証が必要だろう。
 ちなみに、私が検証したりした結果は、
であるからだ。

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                      電話 0198-24-9813
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