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【東北砕石工場技師時代の賢治(1930年頃 撮影は稗貫農学校の教え子高橋忠治)】
<『図説宮澤賢治』(天沢退二郎等編、ちくま学芸文庫)190pより>
<『図説宮澤賢治』(天沢退二郎等編、ちくま学芸文庫)190pより>
さて今度は『農民藝術 No.6』(農民藝術社、昭和23年3月)からであるが、この中にも、東北砕石工場技師時代の賢治や、石灰に関しての言及は一切見つからなかった。
だたし見つかって気になったたのが、次のような記述だ。
昭和三年は賢治三十三歳の時だ。六月中東京へ出て、云々は、六月七日仙臺博覧会を見、水戸經由、八日上京し、「東京」の數篇を草稿した時のことで、随分身體は疲れてゐたのだらう。そして歸宅してから畑仕事は勿論のこと、氣候不順による稻作の不良を心痛して、風雨の中を東奔西走したのが病氣の原因だつた。演習が終る頃といふのは、その當時根子櫻に、盛岡の工兵隊が來てゐて架橋などの演習をした時のことだ。
〈『農民藝術 No.6』(農民藝術社)63p〉たしかに、「演習が終る頃といふのは、その當時根子櫻に、盛岡の工兵隊が來てゐて架橋などの演習をした時のことだ」というようなことをあの「賢治年譜」も書いていたから、そう信じたくもなる。がしかし、この「六月中東京へ出て、云々は」とは、昭和3年9月23日付澤里武治宛賢治書簡、
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〈『羅須地人協会の終焉-その真実-』(鈴木 守著、自費出版)の表紙より抜粋〉
中の、
お手紙ありがたく拝見しました。八月十日から丁度四十日の間熱と汗に苦しみましたが、やっと昨日起きて湯にも入り、すっかりすがすがしくなりました。六月中東京へ出て毎夜三四時間しか睡らず疲れたまゝで、七月畑へ出たり村を歩いたり、だんだん無理が重なってこんなことになったのです。
演習が終るころはまた根子へ戻って今度は主に書く方へかゝります。 休み中二度もお訪ね下すったさうでまことに済みませんでした。
に認められているそれのことだ。演習が終るころはまた根子へ戻って今度は主に書く方へかゝります。 休み中二度もお訪ね下すったさうでまことに済みませんでした。
そしてこのことに関しては、『羅須地人協会の終焉-その真実-』の「「新校本年譜」の註釈」で既に論じたように、「盛岡の工兵隊が來てゐて架橋などの演習をした」という蓋然性は限りなく低い。それよりは、『本統の賢治と本当の露』の「㈥「下根子桜」撤退と「陸軍大演習」」(84p~)でも明らかにしたように、昭和3年10月に行われた「陸軍大演習」であった蓋然性が頗る高い。それも、『農民藝術 No.6』の発行は昭和23年3月だからそれほど昔のことでもないし、まして、同演習は岩手県では初めての「陸軍特別大演習」でしかもその初日の10月6日は花巻で行われたのだから、この可能性を探らないことに私はかなり違和感を抱く。つまり、意識的にこちらの「演習」については触れなかったのかもしれない、ということを私はついつい疑ってしまいたくなる。それは、この大演習を前にしてすさまじいアカ狩りが岩手県下で吹き荒れて、賢治と親しかった川村尚三は盛岡刑務所に送り込まれ、同じく八重樫賢師は函館に所払いになったりしたのだからなおさらにだ。
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