平成29年8月10日(木)
ダルハン市は、セレンゲ県の県庁からウランバートルに戻る途中にある都市で、民間が運営する電力会社です。モンゴルの電力事業は、発電、送電、配電に分かれ、この電力公社はセレンゲ県を中心に配電(エンドユーザーに電気を供給する業務)を行っている会社です。
(訪問団と記念撮影。女性職員も1/3ほど在席するという)
視察では、社内の会議室において、女性の社長であるNERGUI Samdan氏と、チーフエンジニアのBATJARGAL Batkhuyag氏から説明を受け、質疑応答がありました。また、その後は、社内事業の展開を説明した展示室などを訪れ、実際に使われている機器や自社と中国企業で開発したスマートメーターや、配電網の監視室などを視察させていただきました。
(右端が社長、真ん中がチーフエンジニア)
この電力会社では、世界中の電力事業を支援する機器メーカーや電力会社と交流を進めているようで、日本の中部電力とも交流があるという説明でした。配電のための制御や監視機器は、ドイツ製を導入しており、機器環境は思っていた以上に新しい機器が導入されています。しかし、電力系統は1系統しかなく、事故や故障が発生すると停電から復旧するまでは、相当の時間がかかりそうでした。その解決方法としては、配電網の各所にモニター(GPS監視装置)を設置し、速やかな故障箇所への急行と復旧作業に取りかかれる体制をとっているとのことでした。
(ドイツ製の機器を導入した経緯を説明するチーフエンジニア)
スマートメーターは、電気のエンドユーザーの電気使用量計測や通電・遮断などを遠隔操作できる機器で、全てのユーザーにこの機器を設置し、モンゴルの移動式ハウスである、ゲルにも設置しているとのことでした。しかし、電線網を遊牧民が使用するゲルに付けるというのは、特別なケースでなければ不可能と思われます。私達が視察の途中で見かけたゲルには、小さな太陽光発電装置が取り付けられていることが多く、電力会社から電気を購入しているようには見えませんでした。
また、電力会社ではありますが、このスマートメーター開発をきっかけに、水道の流量計をスマートメーター化する計画があると言い、既に商品化を進めているとのことで、電力以外の事業にも進出することが説明されました。
日本では、既にLPガスにマイコンメーターという呼び名で導入されており、電気・ガス・水道も人による検針作業が不要な時代となりました。開発途上国のモンゴルですが、新しい機器による自動化は飛躍的に進んでいます。
(自社開発したスマートメーターを説明するチーフエンジニア)
(配電設備の様子を説明する模型)
(配電のための制御・監視パネル)
モンゴルでは、自国内で石炭が豊富に産出され、発電用の燃料は全て石炭です。しかし、石炭火力は多くの二酸化炭素を排出することから、世界的にも懸念されています。モンゴル国内の石炭火力設備は相当古く、黒煙がびっくりするほど排出されている場面を多く見ました。環境への配慮から、今後は大規模な太陽光発電や風力発電などの導入も計画されているようですが、国内電力需要に見合った電力確保が可能なのか、明確な回答はありませんでした。
日本では、発電に必要な化石燃料である石油・天然ガス・石炭は全て輸入ですが、モンゴルは安価な石炭を国内でまかなうことができます。石油も国内で産出できるそうですが、石油精製プラントを持たず中国やロシアから購入しているとのことです。エネルギー資源は両国で全く異なり、電力のほか全エネルギー政策の今後に関心を寄せる視察でした。
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