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鈴木すみよしブログ

身近な県政にするために。

カンボジアとタイへの視察から

2025年04月06日 | 議会活動
令和7年4月6日(日

 3月18日から22日まで、カンボジアとタイを視察しました。往復は移動時間となり、実質3日間のハードスケジュールとなりました。

 視察は、カンボジア・タイにおける観光(特に世界遺産アンコール・ワット遺跡及びアユタヤ遺産の保全と活用、静岡県へのインバウンドとアウトバウンドについて)、日系企業のタイにおける事業活動、カンボジアおよびタイにおける人材育成についてなどを目的としました。
 観光面では、富士山が今年7月から入山料を徴収します。同じ世界遺産のシュムリアップ遺跡群やアユタヤ遺跡でも徴収していますが、その広報活動、使途(保全と活用等)について比較検討する必要があります。また、タイ人の静岡県へのインバウンド・アウトバウンド状況と現地観光会社の取り組み状況について。産業振興では、県産品の海外への販路拡大や県内企業のアジアへの進出などが進んでおり県は支援を行っていますがその状況について。本県でも海外人材の確保は喫緊の課題となっており、人材を日本に送る相手国の体制は、その後の雇用の安定に大きく影響しているのでその調査は重要と考えています。

 視察から以下のような成果がありました。
①アンコール・ワット遺跡保全対策

(アンコール・ワット遺跡群の保全に関わる団体関係者と)

 世界遺産としての保全と管理について、そして活用をどのように実現するか大変参考となった。富士山は今年から入山料4,000円の徴収が始まる。その仕組みや用途について、登山者に十分伝わっているかは今後の動向を注視しなければならない。
 アンコール・ワットは、施設内に入るのに37米ドルが必要であり、コロナ禍を過ぎて20米ドルから値上げしている。その理由は、徴収した費用の使途に明確な方針がある。
 アンコール・ワットの保全管理は、国が委託した外部団体が管理運営している。今回の視察では、そのトップと現場の管理責任者に説明いただいた。
 歴史的な建造物であることから、老朽化した施設の保全には、多額の費用と時間がかかる。また、活用面ではここを訪れる観光客数が年間200万人ということから、それに対応する受入体制は欠かせない。保全や観光客対応の多くを、指定区域内に居住する住民の多くが関わっており、それを仕事として生活している。つまり、入場料はこれらの全てをまかなうための総経費を基に算出されているようだ。
 富士山の入山料と比較するためには、状況は異なるが、その金額の内訳や根拠など説明がしっかり行われているか、訪れる登山客は外国人も対象となるので、その対応も求められる。その結果が、富士山世界遺産の保全と活用に活かされるものと感じた。

②アンコール・ワット遺跡視察



(遺跡の中には日本の貢献を伝える看板も)

 アンコール・ワットは、カンボジア北西部に位置するユネスコの世界遺産であるアンコール遺跡の一つであり、その遺跡群を代表する巨大な寺院である。
 世界文化遺産としての管理と保全状況について、視察直前で説明いただいた現地の管理団体の取り組みがどのような場面に相当するかの確認を行った。
 施設入場料については、広大な面積を有する古代遺跡は風化が進み、常に保全のための改修や復旧を続けている。その中にあっても、工夫を凝らして来訪者が安全に観覧できるよう配慮がなされていた。おそらく、来訪者はこの状況を見て、この遺跡の保存に自分たちが支払った入場料が使われていることに理解が進んだと感じられる。
 富士山入山料についても、登山者が入山料を払った効果がどのように表れているのか、現場の状況から、その価値が見いだせる体制を講じていくのは、静岡県の責務といえる。

③カンボジアにおける日本への人材派遣

(現地で10年以上に渡り、小学校建設や農業支援を行うNGOから、カンボジア人について説明を受ける)

 今回の視察では、国ごとの国民性や送り出し側機関等の課題があることは理解できたが、受け入れ側の日本にも特に監理団体のあり方や、雇用企業の海外人材を雇用するための認識には、共通した課題があるように思える。県議会が新たに設置した外国人材確保のための調査を進める議員連盟では、今回のように送り出し側の国の実態を調査することは大変重要だが、国ごとに得られた情報を一元化して、共通課題に取り組むことの重要性を実感した。また、今回の視察には、県東部で電機部品製造業を営む企業経営者が同行し、今後、外国人材を雇用する計画があることから、雇用側に係る現状認識や課題等も直接聞けたことは、大変有意義であった。

④バンコク三越で開催された静岡フェア



(本県産のイチゴ表示)

 静岡県産食材をタイに紹介し販路を拡大する取組であり、本県ではこれまでにもシンガポールをはじめアジア各国で開催されてきたもので、今回はタイ バンコク市での開催となった。日本のデパート三越が新たにバンコクに進出した店舗を会場に、5月からの本格営業を前にプレイベントとして実施したもので、来年度には本格的なフェア開催を目指すようである。規模は小さいが、本県産食材がどのように紹介され、また販売されているかを調査した。
 「お花見フェア」と銘打って、日本食材を取り扱う地下の食品フロアー(通称デパ地下)がその会場となる。
 本県関係の食材は、ウナギや鮮魚を扱う浜松市に本社を置く企業、わさび漬けを主力製品とする静岡市の企業、その他、静岡県産いちご、静岡茶などが展示販売されていた。
 他県産品も販売されていたが、その中で静岡県産を強調する小さめではあるが、商品ごとに紹介表示があった。価格はここを訪れる消費者層を意識した設定のようで、高級感があり高所得者を対象としているようにも感じた。一方で、本県産いちごは価格を下げ、広い客層が購入できるように配慮がなされていた。
 訪問した売り場のうち、2カ所は本県関係企業の責任者が常駐しており、こちらでの評価をお聞きすることができた。この場所での販売は始まったばかりなので、十分な評価は得られなかったが、バンコクの消費者には、他産品との違いを明確にアピールすることが重要との感想があった。どの客層をターゲットとするかをはっきりさせないと、価格面で商品の評価が正当に評価されず、売り上げに影響するとの意見があった。
 主催者からは、シンガポールでは庶民が利用するスーパーマーケットで、バンコクでは日本の高級デパートと同様の位置付けという違いがあり、どの消費者層をターゲットとするか、商品、価格の設定を見誤らないことが重要と話していた。
 静岡県産の食材をどのようにアピールするかは課題の一つである。三越では、スマホで検索できる販売情報をネット上に構築しており、より多くの消費者に情報提供している。
 静岡県産を含めどこも共通した課題は、食材に係るストーリー性が重要である。単に食材の紹介だけでなく、その食材についてこだわる生産者の思い。生産場所やその周辺環境など、消費者の興味を引くことが必要であると説明していた。他県の食材と比べると、本県産はもう少し特徴を発信することが必要のように感じた。茶の販売コーナーなどでは埋没感が否定できなかった。
 浜松から出店予定の和菓子店は、日本茶とセットで、和菓子作り体験コーナーを設け好評を得ていたようである。バンコクでは、急須で飲むお茶を楽しむ人が増えているという。茶具を自ら購入し、ネット情報などでお茶の本格的な飲み方を学ぶ人までいるという。
 この状況を踏まえて、タイ北部では日本茶の生産に乗り出したという情報もあり、海外の茶マーケットの動きを丁寧に分析し、対応していくことも大切と感じた。
 本格実施となる来年のフェアでは、今回のプレイベントでの経験を基に、それを活かした事業展開が必要であり、主催者はこれまでの状況を県にも報告しているようで、県はこの報告を元に次期開催に向け体制を整えることが重要と考える。

⑤タイ明電舎訪問

(タイ明電舎にて)



 私が若い頃、11年間務めていた仕事場は、今回訪問先の日本にある親会社である。タイを始めインドネシア、シンガポールなどに事業展開し、特にインドネシアは私が半年以上も出張し、仕事を通じて国際感覚を学んだ場所でもある。
 半世紀近く前(1966年)に東南アジア進出を実現した日本企業が、その後どう事業展開してきたか。大変な苦労を重ね、現地での信頼を築き上げ事業を継続してきたことは容易なことではないと考える。しかし、このようなパイオニア的存在の日本企業のノウハウは、これから静岡県内の企業が海外進出しようとする際には、大いに参考となると考える。
 単にノウハウだけでなく、今の時代はネットなどを介し、リアルタイムにその国の社会情勢や経済情勢について情報を得ることができる。それらを総合的に判断し、海外進出を決めることができる時代となった。
 今回は、観光や海外事業展開、外国人雇用(現地及び日本国内)など、本県が抱える政策課題に対して、行政機関でなく現地に進出した日本企業から聴取できたことで、より現場の本質的な情報を得ることができた。
 県議会では外国人材確保のために調査・研究を目的とした議員連盟が立ち上がっている。国民性の違いによる各就業分野への適性が課題となっているが、タイ人気質知る上でも大きな成果であった。

⑥アユタヤ遺跡管理について



(アユタヤ遺跡を監理する部署の担当者から説明を受ける)

 訪問時、アユタヤ遺跡は、その多くが外国人観光客のように感じた。世界遺産ではあるが、特に保全や修復などが積極的に行われているようには感じられない。先日訪れた、アンコール・ワット遺跡とは大きな違いがある。
 本県の富士登山では、今年の夏山シーズンから入山料4,000円を徴収する。この料金設定については、県はその根拠を明らかにしているが、登山客にどう伝わりどう理解していただくかは、広報活動などを含め、十分とはいえないと考えている。入場料は、アンコール・ワット遺跡は37ドル(約5,000円)に対し、アユタヤ遺跡は50バーツ(約200円)である。この金額では普通の公園の入場料相当で保全まではまかなえないようにも感じる。
 アンコール・ワット遺跡では、国の外郭団体としての管理者から保全や地域経済との関わりについて説明を受け、その経費として徴収金額の設定があることを説明受け納得できた。
 富士山入山料は、既に高い設定金額という受け止め方が多い。改めて、入山料設定の根拠を十分に知らしめる必要があると感じた。

⑦バンコク市内日本向け旅行社訪問

(タイの日系旅行社にて)



 バンコクで創立40年を超える日系旅行社から、タイと日本におけるインバウンド・アウトバウンドについて説明を聞いた。
 日本の魅力をタイ人がどう受け止めているかは、タイ明電舎訪問時に聞いた説明と同様であった。富士山の魅力は大きなものであるが、リピーターは少ないようである。モノからコトへシフトしているので、リピーターの関心を惹きつけるためにも、体験型のメニューを増やすなど、その取り組みは課題がありそうだ。コロナ禍は大変な苦労をされたと聞いたが、その後の人流の戻りは十分ではないという。現在は教育旅行に力を入れており、その効果を期待しているようだ。
 本県にとっては、富士山静岡空港の活用を考えると、両国の距離から、台湾や香港などに就航する航空機より、ひとまわり大きな航空機の就航が必要であり、それに応じた双方の乗客数を確保することは現状、容易ではない。
 現在、東京や名古屋、大阪経由で航空機を利用することになるので、よほどの魅力がなければ本県に立ち寄らず、本県はさらに誘客の努力も必要と感じた。本県の競争相手は、日本国内における大きな空港所在地以外の全てであり、それに応じた戦略が必要である。
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