平成29年4月30日(日)
私達が生活で使う水(上水といい料理や洗濯、トイレ、風呂などに使う水)は、蛇口をひねるだけで簡単に使用することができます。当たり前のことですが、この生活水を安定して安全に供給する側を覗いてみました。
ほとんどは、行政が運営する上水道で、行政以外が運営する水道事業は、代表的なものに簡易水道という、地域住民などの民間が運営するものがあります。誰が水を供給しているかは、水道料の請求書を見れば分かります。
誰が水を供給しようと、消費者が安全な水を飲むためには、法律で51項目の水質検査が義務づけられ、日本中どこでも蛇口をひねれば安心して水を飲むことができるので、水の「味」や「おいしさ」などに違いはあるものの、ほとんどの人が水の供給元を気にすることはないと思います。
今日は、市内にある簡易水道組合の総会に呼ばれ、来賓としての挨拶のほか、総会を傍聴させていただいた後、懇談会に臨みました。
先ほど、水道事業者について触れましたが、簡易水道はその生い立ちに地域毎の事情があり、そのことを理解することは重要と考えています。例えば、市内に行政と地域が運営する水道組合が混在する場合には、その理由があります。
富士市の場合、製紙の街として発展してきましたが、本市の製紙業では大量の地下水を汲み上げて利用するために、地下水位はかなり低いところにあります。市民が使う水も、深井戸を掘らないと得ることができません。高度成長期前は、浅井戸か住宅地の中にも湧水が豊富でしたので、個々が大きな投資を必要とすることなく水を得ていました。高度成長期になると、大量の地下水が揚水されるため、地下水位はどんどん下がっていき、広範囲に及ぶ急激な対応に行政が全て対応することはできませんでした。そこで、地域住民の有志による簡易水道組合を立ち上げ、行政と同じように水道事業が行われてきました。
簡易水道の水の安全性は、法律で決められた検査を行政と同じように行っています。しかし、運営自体は脆弱で、運営のプロ集団が立ち上げたわけではなく、経費も必要最低限に抑え、その分を水道料金に反映させています。簡易水道は水道料金が安いという所以です。組合員となる地域住民は、水道の本管の敷設も行政が公道を使用するようには簡単にできないので、自分たちの民地の中を巡らせるなど、経費も削減してきました。しかし、公共インフラである以上、公共の部分と個人の部分を明確にすることも必要です。この民地内の本管が後で大きな問題となりました。
阪神淡路大震災以降、大災害に対するライフラインの確保、早期の復旧が課題になり、全ての市民が平等に水の確保が求められても、行政と民間とでは対等に復旧が進められるのか、不安が指摘されています。揚水や貯水、送水施設の耐震性確保や緊急電源の確保、復旧を行う水道工事関係者との協定なども、脆弱な運営では不安がつきまといます。
今日の簡易水道組合には、役員が20名近く出席していましたが、ほとんどが70歳から80歳代の高齢者です。簡易水道組合の立ち上げから40年近く経っていますが、その初期から携わっている人も少なくないようでした。行政であれば、トップでも50歳代で若い職員も含め、盤石な体制で臨んでいるはずです。しかし、簡易水道組合では大きな責任を負い、水道事業を運営して行くにはこのままで良いのか考えなければなりません。
現在、市内にある10団体ほどの簡易水道組合は市営水道と統合する方向で、進められています。統合するためには、「統合基準」があり、本管の敷設は民地から公共用地へ移設、管の径も統一した太い管に敷設し直さなければなりません。その負担額は、どの簡易水道組合も億単位が必要で、市からの負担がいくらかあるようですが、その比率はわずかともいわれています。統合に向けた財源確保では、水道料金の値上げで対応するのが一番ですが、水の供給を受けている組合員である住民は、簡易水道の歴史や性格などを知らない世帯も多く、それを理解していただくために、役員の皆さんは大変な苦労をされているのが現状です。
水道料金の収納では、どこでも同じように未納額もあるようで、行政のような対応は簡易水道組合ではできず、なかなか大変のようです。
まちを支えてきた、簡易水道組合に感謝しつつ、地域のライフラインである上水のあり方について、目指すところは決まっているので、目標に向かってしっかりと支援していきたいと思います。