令和4年2月28日(月)
静岡県の令和4年度以降目指す事業に「ガストロノミーツーリズムの推進」という言葉が入っています。あまり聞き慣れない言葉ですが、「ガストロノミー」とは、フランスの食文化を指すそうで、日本では美食術や美食学と訳されるそうです。これにツーリズムがつながって、食文化を探訪する旅行ということになるのでしょうか。カタカナ言葉はかっこよく聞こえますが、慣れるまでは理解しにくいと感じてしまいます。
さて、本県事業に戻りますが、県の次期総合計画(後期アクションプラン)の柱の一つに、「魅力の発進と交流の拡大」があり、その一つの取り組みが「ガストロノミーツーリズムの推進」です。
本県には、富士山をはじめ、南アルプス、駿河湾、伊豆半島、浜名湖など、世界クラスの地域資源があります。また、多彩で高品質な439品目の食材を有する「食材王国」でもあります。
これらの強みを最大限に活かし、自然・地理・歴史・文化等の背景から、静岡の和の食文化を掘り下げ、ツーリズムに組み込み、本県の観光交流を新しいステージに進めていくとしています。
観光といえば食は切っても切り離せないものであり、これまでも取り組んでいることでもあることから、「何を今更」と感じてしまいますが、行政が得意とする「食を活かした観光地地域づくりに戦略的取り組む」という表現が盛り込まれ、何をするのか気になります。
昨年県では、「日本平 芸と 食と 絶景と」をテーマに、演劇と食文化を融合したモデル事業を実施し、約400人が参加しました。また、県のふじのくに地球環境史ミュージアムでは、企画展「しずおかの酒と肴」において、県内の豊富な食材や日本酒等の原材料に焦点を当て、料理や醸造の背景にある生物多様性への理解を深め、地元の食文化を考える試みがありました。
これを踏まえ、学術的な立場と食の現場で活躍する料理人、観光関係者、生産者等からの助言を得て、推進体制を強化するとしています。
その説明を受けて、食と文化に「こだわり」があっても良いのではないかと感じます。複数の魅力が重なることで、さらに関心が高まり、得をした気分になることは大切です。
その一つに、私の身近なところでは、農林水産省の地理的表示(GI)に認定された「田子の浦しらす」があります。観光ブームの高まりがあり、海鮮関係は注目されています。全国各地で獲れる鰯の稚魚である「しらす」を材料にした「しらす丼」は有名ですが、鮮度にこだわる漁法で獲った「しらす」は、格別な食感が味わえます。どこでも食べられる「しらす丼」ですが、国も認定した「田子の浦しらす」の漁法は大きな「こだわり」の一つでもあります。今は感染症の影響もあり、内外から漁協食堂に訪れる観光客が少ないものの、感染症が落ち着けば、こだわりの「田子のしらす丼」を食べに、観光客が戻ってくると期待しています。
モデル事業は少し堅いイメージが強いと感じますが、県内各地でこの取り組みが普及するためにも、外部から見た評価も取り入れて、さらに厚みのある事業になることを期待したいと思います。