平成24年9月19日(水)
静岡県議会9月定例会が今日から始まりました。傍聴席には多くのマスコミと市民団体が訪れ、いつもとは違う雰囲気での開会で少し緊張しています。
(県議会入口に掲示された議会日程)
その主な理由は、市民団体が16万人もの県民の署名を集めた「中部電力浜岡原子力発電所の再稼働の是非を問う県民投票条例」制定の請求に対し、県はこれを受理し、県知事の意見を附けて議会に付議されました。
9月議会では、まず常任委員会の総務委員会で集中審議し、10月11日の本会議最終日に採決する予定です。
知事の意見については、本文最後に記述します。
9月議会全体の知事による提案説明について概略をお伝えします。
<地震・津波対策>
国は去る8月29日に最新の科学的知見に基づく、南海トラフで発生しうる最大クラスの地震による津波高、浸水域及び人的・物的被害の想定を公表した。県内最大津波高は下田市の33mで、20mを超える市町が2市町、10m以上は16市町、10m以下は3市町となっている。
被害状況は、冬の深夜の場合、死者約11万人、建物全壊約32万棟となっている。
しかし、本県は防災先進県として取り組んできた防災対策をさらに徹底することで大幅な減災が可能である。
津波の人的被害軽減は「地震だ!津波だ!すぐ避難!」が最も有効かつ重要な対策で、避難対策を着実に実行していく。そのために、市町と連携し、「情報伝達の強化」「避難路の整備やルートの確認」「避難タワーや命山の整備」に積極的に取り組んでいく。
防潮堤等のハード対策は、巨大地震にも破壊されない粘り強い構造の施設を目指す。ただ、数千年に一度(冒頭部分のケース)と100年から150年のケースとに分け、防災対策を講じていく。
市町の地域防災計画の早期見直しに必要な情報、第4次地震被害想定等は前倒しで公表していく。
企業や民間からの寄付を幅広く受け入れ、防災に生かす仕組みを整備する。
<総合防災訓練>
富士山静岡空港を会場に、地震、津波、浜岡原発等を対象とした訓練を実施。在日米軍の陸軍、海兵隊も参加し、幅広い支援体制に取り組んだ。
<災害廃棄物の広域処理>
3月には岩手県山田町、大槌町の木くず77,000トンの受け入れ要請であったものが、改めて精査したところ現在は23,500トンに減少している。静岡市と裾野市が本格受け入れを決定し、その経費に関する補正予算を盛り込んだ。
<内陸フロンティア>
有事には防災拠点としての機能が確保され、平時は地域資源を活用した経営が行われる「東日本大震災の復興モデル」となる地域づくりへの取り組み。これらを実現するためには規制緩和や税制・財政上の支援措置を内容とした総合特区の申請を国に対し9月末にも行う。
具体的には、土地利用に関する国との一括事前協議制度の創設、農地転用許可の規制緩和等の特例措置等。
東京一極集中を脱し、地域自立のモデルを目指す。
<エネルギーの地産地消の推進>
従来の一極集中依存型から分散自立型のエネルギー体系への転換を図り、エネルギーの地産地消を目指す。
住宅用に加え、新たに事業者用の太陽光発電設備等の助成制度を創設した。事業者用制度は好評で、平成32年度に設定した導入目標は8年前倒しで達成できる見込み。事業者用は今議会補正で4億9千万円を増額した。さらに、新エネルギー活用の新技術、新製品開発支援も実施する。
「西駿河湾地域海洋再生可能エネルギー勉強会」を立ち上げ、研究を進める。
<本県経済>
海外経済の減速や円高で足踏み状態が続いているが、昨年と比べ有効求人倍率は向上し雇用情勢は厳しさがやや和らいでいる。
景気の見通しが慎重であることから、引き続き、的確な経済・雇用対策を展開する。
(本日午後、富士市「ふじさんメッセ」で開催された就職応援フェアの様子)
<茶業の振興>
静岡茶ブランドの再生・強化を図る。掛川市で開催する「第66回全国お茶まつり」では、最新の研究成果の発表等を通じ、茶の機能性、効用を広く情報発信する。お茶の新製品の展示・販売や新しいお茶の飲み方等を紹介や首都圏の消費者を招いての茶産地ツアーを企画する。
<富士山世界文化遺産登録>
8月29日から9月5日まで、ユネスコの諮問機関イコモスの現地調査が実施された。主に、富士山の保存管理状況について現地調査した。今後はこの結果を踏まえ、来年5月に評価結果の勧告、6月にカンボジアのプノンペンで開催される世界遺産委員会で登録の可否が審議される。
<富士山静岡空港>
8月の搭乗率は、開港以来最高の80.5%を記録。沖縄線は90%近い。チャーター便も世界各地に向け増加。今後は、ビジネス利用、教育旅行をはじめ、韓国仁川、中国上海などの国際ハブ空港を活用したトランジェット利用促進、航空貨物のトライアル輸送に重点的に取り組む。
<地域外交>
県として良好な関係が続く中国浙江省ならびに韓国忠清南道であるが、両国とも領土問題で日本との間に懸念材料が発生し、交流が停滞している。安心安全確保の上、交流計画を調整中。昨年、友好協定を締結したモンゴルのドルノゴビ県とは1周年記念行事を実施。ハワイ州ではクリーンエネルギーの導入を促進するための覚書を交わした。
<全国育樹祭>
皇族殿下ご臨席の下、11月10日に伊豆市あまぎの森でお手入れ行事、翌11日に袋井市のエコパアリーナで式典行事を開催予定。大会を契機に、県産材の一層の利用拡大と、森林・林業の再生に向けた取り組みを加速。
<地域医療再生>
平成22年より「ふじのくに地域医療支援センター」を設置し、15年から20年後を見据え、世代別に戦略的な取り組みを進めている。
具体的には医師を目指す高校生を増やすための育成セミナー、医学生を対象とした県内病院への就労支援等がある。
さらに、若手医師の県内病院への定着を進めるための、県内の複数病院と連携し、全国最大規模となる53プログラムを誇る「専門医研修ネットワークプログラム」がある。
<健康寿命日本一>
健康寿命とは、介護を受けたり病気で寝たきりにならず自立して生活できる期間をいう。本県は女性が75.32歳で全国第1位、男性が71.68歳で全国第2位、総合では73.53歳で全国1位となった。
この要因は地場の食材が豊富であり、茶の飲用も多いなどが考えられる。これらを元に茶の効能などを全国発信していく。
運動、食生活の改善、積極的な社会参加などをメニューに取り組んだ健康長寿プログラム「ふじ33プログラム」を開発し、健康長寿日本一を維持できるよう取り組む。
<9月補正予算>
台風4号などによる被災した公共土木施設等の復旧や、防潮堤整備の基金、津波対策の調査・測量、中小企業の事業継承支援、食の都づくりの推進、静岡茶ブランドの再生・強化、保育所整備、社会福祉施設の耐震化助成などに149億7,400万円を計上した。
<中部電力浜岡原子力発電所の再稼働の是非を問う県民投票条例>
上記について川勝知事が付議した意見の内容を記します。(概略)
3.11東日本大震災に伴う東電福島第一原発事故後、原発の稼働や廃止等の議論が、政府はもとより全国民的に活発に行われている。
電力は国民生活や経済活動に欠くことのできないもので、原発の稼働にあたっては、エネルギー政策、電力の安定供給、経済性、温暖化対策等を総合的に考慮する必要ある。
重要なことは、各電力会社の原発依存度に著しい違いがあり、50%以上から10%強まである。浜岡原発は政府の要請で全面停止中であるが、中部電力の原発依存率は全国最低であり、同社の電力供給は余力がある。
知事はこれまで、「浜岡原発は安全性確保が大前提であり、安全性が確保されない限り、再稼働はあり得ない。また、オフサイトセンターの立地に深刻な問題があり、停止はしていても、使用積み核燃料の処理の見通しがつかない現状では、その処理方法が確立されるまでは安全性は十分でない」と再三表明してきた。これに対し、中部電力はこれらの問題点を真摯に受け止め、善処していると確信している。
このような状況下で今回の県民投票条例制定のための署名が行われた。その数は、請求に必要な法定数を大きく上回っている。これは、県民投票を通じて再稼働の是非について意見を表明し、その結果を県政に直接反映したいという多くの県民の思いの表れとして、重く受け止めている。
地方自治法第74条に規定された直接請求は、間接民主制を補完し、住民自治を図るための重要な手段であり、浜岡原発の再稼働に関して、県民一人ひとりが自らの意思を表明する機会を逸してしまうことは妥当ではない。
条例の実施には市町の協力が不可欠で、それを期待して賛意を表する。
なお、本条例案には多くの問題点がある。主なものだけでも10項目、細かなものまで含めると29条中、修正の必要ないものは6条に過ぎず、不備があることは遺憾である。作成に関わった者の責任は小さくない。
とはいえ、署名された県民の気持ちには応えないことは本意ではない。議会に対しては、これらの問題点を適切に修正して、実施可能な条例案になるよう磨いていただき、県民投票が適正かつ円滑に実施できる方向で議論願いたい。
以上の件に関し、私の所属する自民改革会議では、大変重要な案件として、議員一人ひとりが真摯に受け止めています。
会派内においては、総務委員会、本会議での採決まで、数回に渡り十分な時間をかけ、幅広い見地から将来に向け責任ある議論を重ねていきます。