令和4年7月31日(日)
先日開催された富士市から県の令和5年度要望の中に、新規として「岳南電車の公的支援要望」が載っていました。今、全国の多くの地方鉄道の経営が厳しく、その存続が困難となっています。国は、存続について一定の判断条件を設け、バス路線への転換なども含め、存続の可否について検討を始めています。


(今年の吉原祇園祭で会場まで岳南電車を利用しました)
岳南電車は60年以上にわたり、JR吉原駅から富士市内の中心部を通り、沼津市との境付近にある岳南江尾駅までの9km強を結び、その間には10の駅があります。
元々は、本市の基幹産業である製紙会社の荷物を運ぶことを主力として誕生していますが、その工場に働きに行く従業員や通学、中心市街地の商店街への買い物などに出かける交通手段としても賑わっていました。私も高校時代はお世話になった一人です。
鉄道収益のほとんどは貨物輸送でしたが、製紙会社やその他、引き込み線を有し自社の貨物輸送を利用していた大手企業も撤退やトラック輸送に変わり、現在は岳南電車としての貨物輸送は行っていません。
また、乗客も自家用車利用が増え、利用者が激減して空気だけを運んでいるような時間帯もありました。以前の経営会社は存続が困難として経営支援を模索し、今の経営会社が何とか存続しています。
存続するためには、企業努力といっても限りがあり、利用者を増やすための様々な支援や行政による財政支援も欠かせません。
忘れかけていた岳南電車の存在をもう一度甦らせたのは、沿線に住む若い人たちでした。イベントなどを企画し、まずは岳南電車に注目していただき、地域を巻き込むことに活路を見出し、経営会社もイベント列車を走らせ、乗客を増やす努力をしてきました。その取組は、鉄道ファンにも広がり、彼らの目線で鉄道史に残るような古い車両が走り、駅舎も昭和のレトロ感があり、なんといってもどの駅のホームからも富士山が見えるスポットが存在するなど、観光面での評価が全国にも伝わっていきました。
休日には、全国から訪れ乗車していただくことも増え、その動きを報道等で知った地元の人たちが、岳南電車の価値と存続に対する意識が高まり、住民の利用も増えています。
このような取組で何とかここまで来ていますが、経営を存続させるためには更なる努力や支援が必要であることには変わりがありません。
そのような状況下で、市民の足として公共交通としての岳南電車の維持は大変重要であり、市も数年来、財政的支援を行ってきました。しかし、将来を見据えると、少子化などによる沿線人口の減少は免れず、観光面での注目はありますが経営が安定できるかは見通せません。
今回の要望では、このような状況を背景に、県や国に対して財政的支援を要望するもので、地元選出議員として精一杯の努力のための汗をかくつもりです。