平成28年11月30日(水)
静岡県富士農林事務所管内(富士市・富士宮市)における、農林事務所長をはじめとする職員と管内選出県議会議員による視察が行われました。朝10時に富士農林事務所を出発し、同事務所に帰着したのは16時30分頃。
それぞれの視察先では、地元関係者の皆さんから説明や要望、課題などを直接聞くことができる機会となりました。
視察先は、富士山を借景とした茶畑風景で、世界からも関心の集まる「富士市大淵笹場」や、富士山こどもの国に至る県道沿いの「景観間伐」、「農家民宿やまぼうし」、富士山西麓朝霧高原地区の集落基盤整備事業、同じく復旧治山事業、本年度静岡県景観賞を受賞した白糸地区の「白糸の里」、富士宮市西部内房地区の「鳥獣害防止実証圃場」の7箇所です。
さすがに山間部が多いせいか平地よりも気温が低く、予め用意したダウンジャケットがなければ、お土産に風邪を引いて返ってきたかもしれません。
大淵笹場は、知事が記者会見する際、その背景に写る本県を象徴する代表的な場所です。
(ここが笹場)
本県では、「美しい茶園でつながるプロジェクト」の一つとして、茶の景観を生かした地域振興(農業と観光の連携など)に取り組んでいます。地元のまちづくり協議会を中心に取り組んできた地域活性化を県や市が後押しするもので、地元からの発進としては、5月開催の「おおぶちお茶まつり」、8月の「登山夜景を楽しむ会」などがあり、海外からの取材も多く訪れ、今後の発展に大きな期待がかかる地域です。
茶園の保全管理や茶を素材とした新商品開発など、農林事務所の関与はさらに増えていきます。視察では、観光客用に計画が進む、駐車場やトイレ、休憩所などの整備状況が報告されました。
(このような駐車場などの整備が計画されている)
「景観間伐」とは、県道沿いの荒廃した森林の整備を景観に配慮して行うもので、「富士山世界文化遺産森林景観整備事業」として、富士山に向かう沿道にある森林の間伐などを行い、来訪者に美しい富士山とそれに似合う森林を見ていただこうという事業です。
既に整備が終了した沿道では、森林の美しさを実感できます。本年度に引き続き、来年度以降も3年計画で実施できるよう、予算確保を支援するために視察しました。
(景観間伐された森林で説明を受ける)
農家民宿「やまぼうし」は、富士山を仰ぎ見る大淵富士本地域にある施設で、その名の通り、農家を民宿として利用し、野菜の栽培・収穫体験、山菜・果実の収穫体験、そば打ち、こんにゃくづくり、野菜や果実を使った菓子づくりなどの体験メニューがあります。昨年の3月にオープンした以降、県外、特に都会からの来客が多いと聞きました。
私達は、昼食も兼ねて視察しましたが、オーナーが育てた野菜や、自宅の庭に自生する野草を生かした手料理は絶品です。そばも、大変おいしく頂きました。
県は、農家民宿開業に向けた情報の提供、先進農家民宿への視察、体験メニューの企画、ホームページの開設などのほか、開業後のフォーローを行うなどの支援を行っています。
(とても素敵な農家民宿だった)
富士宮市内の視察では、中山間地などの農業生産基盤と生活環境基盤整備の実情と、その効果について視察しました。
湧水が多いこの地域では、稲作が多く行われています。しかし、傾斜地が多く棚田が多いことから、生産効率を高めるためには、大規模の集約化した水田などに区画整理(圃場整備)する必要があります。
整備により生産効率が上がることはもちろんのこと、これらを地域資源として、一次産業と観光産業の連携を進めることにより、通過型から滞在型の産業の創出を行うことが可能となります。
視察で印象的だったのは、5月頃の「代掻き」の終わった水田に写る逆さ富士の写真で、これまでは近隣の田貫湖での光景が有名でしたが、整備された水田地帯でもそれが可能となり、多くの観光客が見込めるというものでした。
(整備が終了した圃場の説明を聞く)
(圃場に貼られた水面に映る「逆さ富士」は、これまで見たことのない美しさ)
地元の関係者からは、過疎化が進む地域ではありますが、自分たちのふるさとが持つ魅力を、県の支援事業により、もう一度輝かせることへの感謝の気持ちが伝えられました。また、先に整備が終了し、「平成棚田ノルディックウォーキングコース」に指定が実現した「白糸の里」では、95歳になる方から「この事業によりまだ夢を見続けることができる。」との感想を聞くことができました。改めて「攻めの農業」の持つ魅力を感じました。
(95歳の長老は、地区の発展がこれからも楽しみといっていた)
そのほか、治山事業では工事現場での環境に配慮した工法や、鳥獣被害対策の実証施設などでは、被害に苦しむ住民の皆様からその実情と、支援に対する課題などもお聞きすることができました。
(治山整備が進む猪之頭地区。コンクリートを使わない堰堤)
(鳥獣害防止実証圃場。柵の中の農作物は無事)
(柵の外にあった、鹿に食われた大根)
現場を見ることは、何よりも説得力があります。今日の視察からいくつかの課題が見えてきましたので、明日から始まる12月定例会や、次年度要望に生かしていきたいと思います。