平成29年2月23日(木)
2月23日は語呂合わせが「ふじさん」となることから「富士山の日」です。この時期の富士山は真っ白な雪をかぶった典型的な冬山で、この景色が青空に映える時期でもあります。お天気が良くても「春霞」がかかる時期になっていますので、もやっとした富士山が見えることもあります。
ところが、今日は朝からあいにくの雨。果たしてどなたの行いがお天気に反映されたのか。それでも夕方4時頃には富士山の上部が姿を見せてくれました。「終わりよければ全てよし」で片付けるのが今年の「富士山の日」でした。
さて、今日一日の行動を振り返りますと、朝7時30分から東海道新幹線新富士駅の北口が「富士山口」に改名され、また、11時30分からは東名高速道路富士川サービスエリアに設置された、大型観覧車「Fuji Sky View」(フジスカイビュー)のそれぞれオープニングセレモニーがありました。
また、午後2時からは静岡県と山梨県が主催する「富士山の日」フェスタ2017が、静岡市にある日本平ホテルを会場に開催されました。
新富士駅で降車すると、一段と高いホームからはお天気が良ければ見事な富士山が眺望できますが、1階フロアにある改名した「富士山口」は、富士山への出発点にふさわしくなければならない場所でもあります。名前を変えたことだけではインパクトがありません。良くありがちな、せっかくの富士山の景観に水を押さすような看板も、時間をかけて看板設置者の理解を求め、目立つものは撤去してきました。
このことは、以前、富士市都市景観審議会会長の天野光一先生からお聞きしたものですが、地域が一丸となって取り組むべき大切なことです。県議会2月定例会で審議される、次年度事業の伊豆半島地域の景観保全では、違法看板の規制強化が含まれています。

(「富士山口」への改名テープカット)

(駅構内にはデジタルサインも新たに設置された)
大観覧車スカイビューは、眼下に富士川の流れを、そして雄大な富士山とその裾野、愛鷹山や工場夜景で全国にも名が広がりつつある富士市の街なみ、伊豆半島と「世界で最も美しい湾クラブ」に登録された駿河湾が、パノラマとして眺望できる施設として誕生しました。富士市の前市長が仕掛け、NEXCO中日本様の理解により設置、観覧車事業を全国で手がける企業が運営します。
富士川サービスエリアには、旧富士川町時代に第三セクターで設置した道の駅「富士川楽座」があり、東名高速道路の利用者のみならず、一般道利用者も利用できることから人気が高く、年間来訪者数が350万人ほどで、昨年3月には開館15年で5,555万人5,555人が累計で利用したことがニュースになりました。
さらに、NEXCO中日本では、富士川サービスエリアの改装が間もなく終了するといい、国内でもトップクラスの利用施設に新たな誘客施設が加わったことで、地域活性化を後押しする相乗効果、トリプル効果が期待できます。また、富士川楽座の営業時間も延長し、多くのお客様をお迎えする準備が整いました。
セレモニー終了後には、スカイビューに試乗できると誘われ、地元選出の県議3名と他の来賓3名とで載せていただきました。雨天で遠方を眺望することはできませんでしたが、眼下に広がる初めて見る景色に、全員で子どもに戻ったような歓声を上げ楽しませていただきました。
観覧車の中には、タブレットで観光情報を見ることができ、飲食ができるテーブルも用意されています。所要時間は12分ですが、いろいろな楽しみ方をすることができます。夜間は観覧車そのものがイルミネーション機能を持つため、遠方からも楽しめる地域の新しいランドマークとなることは間違いありません。

(大観覧車スカイビュー)

(あいさつされる、NEXCO中日本社長様)

(命名者の表彰式と記念品贈呈)

(ゴンドラの中には、観光情報が表示されるタブレットとテーブルが設置されている)

(眼下の富士川と東名高速富士川橋だが、あいにくの雨で遠くは見えず)
最後は、「富士山の日」フェスタ2017です。
このフェスタは富士山が世界遺産に登録されたことから、毎年、静岡県と山梨県が交互に会場を移して開催され、それぞれの県・県議会と市町の首長、観光関係や富士山にまつわる様々な関係者が出席します。また来賓には、静岡市に所縁のある「NPO法人富士山を世界遺産にする国民会議」理事長で元文科大臣の遠山敦子氏を迎え、祝辞をいただきました。

(オープニングセレモニー)

(パネルディスカッション)

(説明パネルから)

富士山世界遺産は、「信仰の対象と芸術の源泉」と称されるように文化遺産としての根拠がその表現に集約されています。この文化価値をどのように発信していくか、また保存管理のあり方もユネスコの調査諮問機関であるイコモスから指摘されている課題でもあります。最近では、適切な登山者数管理なども議論されていることが報道されています。これは、文化遺産とはいえ、自然環境保全も配慮することを意味しています。
世界遺産に登録されたことで終わるのではなく、世界遺産であり続けるための課題に取り組まねばなりません。その意味では、このようなフェスタを毎年実施することでその時々の課題や取り組み状況を多くの関係者が共有できる場となります。
今年のフェスタでは、静岡県の取り組みとしては、「ふじのくにづくり キッズ・スタディ・プログラム」と称して、静岡県と宮城県の小学生の間で、ICTを活用した同じテーマで富士山について学習し発見を共有する取り組みが紹介されました。
山梨県では、富士山世界遺産の構成資産をつないだ巡礼路等を活用した新たな富士山観光を推進するための、「リバース!富士講プロジェクト」が紹介されました。
先ほども触れましたが、文化的価値の発信は大きな課題です。その発信機能を担う「世界遺産センター」は両県に一つずつ設置され、山梨県では昨年6月に開館し、静岡県は今年12月に富士宮市内に開館予定です。両施設の連携によりそれぞれの施設が所有する研究・調査の成果が共有され、新たな発見につながることが期待されます。
静岡県の富士山世界遺産センターのコンセプトは、「守る」、「伝える」、「交わる」、「究める」です。「究める」ための研究者は5名で、学問としては、環境考古学、景観論、日本および東アジアの美術史・文化史、日本中世史、社会史、日本列島の人類学、環境人文学、日本近世文学、和歌文学などを専攻する方々です。5名のうち1名以外は県外者で、富士山の第一級の研究者ばかりです。
私達は地元に住む立場から、富士山のことはなんでも知っていると考えがちですが、決してそうではありません。世界遺産センターが今後発信する研究成果などは、地元民にとっても大きな刺激となり、なお一層の富士山への誇りを持つことになるでしょう。新たな富士山への誇りを感じることで、地元から外に向かって発信する機会が増えることに期待がかかります。ここに住む子ども達が富士山や地元にもっと関心を持ち、広く世界に発信することが地域の未来をつくることにつながるといいます。
キーワードは、「外部からの刺激」と「子ども達」です。
本県の世界遺産センターは、奇抜なデザインに目が向きがちですが、それ以上にここを拠点としての研究と情報の発信という機能に注目してきたいと思います。
パフォーマンスとして、静岡県舞台芸術センター(SPAC)による、竹取物語「かぐや姫・霊峰に帰る」が上映されました。よく知られている竹取物語では、「かぐや姫は月に帰る」ですが、私の地元富士市比奈に伝わる竹取物語は、「富士山に帰る」です。

(竹取物語「かぐや姫・霊峰に帰る」。一般的には月へ帰るが静岡バージョンで)

紹介の中では、私の地元のことにも触れていただきました。かねてより、富士市比奈の竹取物語を世に伝えていきたい想いがここで実現できたことは、大変光栄な出来事でした。「外からの刺激」を受けた今、今度は地元の子ども達にこの出来事を伝えていきたいと思います。

(「富士山の日」フェスタ2017が終わる頃には、清水港の向こうに雪をかぶった富士山が)