家の前の堤防に誰が植えたのか1本のナツメ:棗(クロウメモドキ科ナツメ属)の木があり、果実が暗赤色に色づきはじめました。
中国では重要な果樹のひとつですが、実際は西ヨーロッパ、西アジア原産といわれる高さ10mくらいの落葉小高木で、人家で栽培されます。ナツメの名は夏に芽を出すから来ているといいます。
葉は長さ2~4cmで小枝に互生し、羽状複葉に見えます。6月ごろその葉のつけ根に黄緑色の目立たない小花を数個ずつつけます。
果実は長さ2~3cmの楕円形で、秋に暗赤色に熟します。この実は生で食べても美味しく、乾燥して菓子などに用いるほか薬用にもされます。
茶に湯で使われる薄茶入れの棗の名は、この果実の形からきていますが、茶道具としては平棗、長棗、瓢棗など変形の棗もあります。(06年7月5日記事)
ところでいかにも古い話ですが、老人には懐かしい“旅順開城約なりて…”で始まる文部省唱歌「水師営の会見」(佐々木信綱作詞、岡野貞一作曲)の2節で“庭に一本(ひともと)棗の木”とナツメが歌われています。しかし日露戦争の最激戦地だった旅順合戦で勝利した乃木大将が露軍のステッセル将軍と会見したのは明治38年1月5日といいますから、葉も実もない裸木のはずで、たぶん乃木大将は気づかなかったでしょう。
昨年水師営の会見所跡を見学したとき、庭の片隅に何代目かというナツメの木が本当に植わっていました。