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少し山地に入った林内の湿った所に、小さく白い5弁の花をつけているのはタニギキョウ:谷桔梗(キキョウ科タニギキョウ属)です。谷や澤に多い桔梗ということでしょうが、形をよく見ないとこれが桔梗の仲間かと思うくらいの小さい花です。
小形の多年草で、地下茎は枝分かれして長く伸び、その先に高さ5~15cmの細い茎が立ち上がり、卵丸形の葉が互生します。
5~8月、茎の先や葉の付け根から細い花柄をのばし、直径1cmほどの小さい鐘型の花を上向きにつけます。花は白色または僅かに紫色を帯び、深く5裂します。
地べたにはいつくばってピントの来ない花を苦労して撮っていると、通りがかった人から何をしているのかと尋ねられました。多分この小さい花が目に入らなかったのでしょう。
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木曽川の奇勝寝覚めの床へ下る道にハンショウヅル:半鐘蔓(キンポウゲ科センニンソウ属)が咲いていました。あるところにはあるもので200mほどの坂道のあちこちで見かけました。はじめて見たのですがその特徴ある形からすぐハンショウヅルとわかりました。
山野の林縁に生えるつる性の低木で、葉は3出複葉で対生します。5~6月、葉の付け根から長い花柄をのばし、長さ4cmほどの鐘形の花をつけます。この名はもちろんこの下向きに咲く鐘形の花を半鐘に見立てたものです。花には花弁がなく、白い毛に縁取られた紫褐色の萼片が花弁のように見えています。
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木曾谷の川岸にミヤマハハソ:深山柞(アワブキ科アワブキ属)が花をつけていました。
ハハソ(柞)とは、ホウソともいわれ、万葉集にも出てくる古い言葉で、コナラ、クヌギ、オオナラなどを総称です。
ミヤマハハソは、葉がコナラに似ていることからきていますが、ナラなどとは異なる仲間です。
山地に生える高さ3~4mの落葉低木で、互生する葉は長さ5~15cmの倒卵状長楕円形、日地に花見状の粗い鋸歯があり、鋸歯の先端は芒状になります。5~6月、垂れ下がった花穂に、淡黄色の小さい花をややまばらな円錐状につけます。
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白樺湖畔の街路樹のナナカマド:七竈(バラ科ナナカマド属)が白い花をつけています。
ナナカマドといえば北国人ならずとも秋の紅葉と赤い果実が有名ですが、花のほうはあまり知られていません。
5~7月、枝先に複散房花序を出し、直系6~10mmの白い花を多数つけます。雄蕊は20個、花柱は3~4個あり、基部に軟毛が密生します。小さく三角形の萼片は杯形で、はじめ褐色の軟毛があります。
材が燃えにくく7度竈に入れても燃え残ることからこの名があるというのが定説ですが、実際には乾いた材はよく燃えるそうです。これで良質の炭をつくるには7度炭窯に入れなければならないからとの異説もありますがこちらも定かではありません。
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八ヶ岳中腹八千穂高原、芽吹き始めの明るい白樺林のあちこちにベニバナイチヤクソウ:紅花一薬草(イチヤクソウ科イチヤク属)赤い花が目を引きました。
北海道、中部地方以北の山地~高山帯に生える半寄生の多年草でよく群生します。
葉は厚みのある広い楕円形で、若葉には光沢があります。6~7月、高さ20cmほどの花茎に濃いピンクの花を10~20個つけます。
乾燥したものを脚気などの民間薬に用いたところから一薬草の名があり、何種類かの仲間が各地に分布します。
高槻市で見たイチヤクソウは、06.6.24記事で取り上げています。
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蓼科高原の散歩道のあちこちに見られたのはミヤマウグイスカグラ:深山鶯神楽(ウイカズラ科スイカズラ属)でした。
本州、四国、九州の山地に生える落葉低木で、枝や葉に褐色の毛が生え、花柄と子房、花冠の筒部に腺毛があります。ウグイスカグラとよく似て、分布域もほぼ同じ、中間型のヤマウグイスカグラもあり、これらは厳密に区別する必要もないという見解もあるそうです。
それでも、むかごの住む地ではあまり見かけないだけに取り上げました。
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6月初め、信州蓼科高原は、やっと木々の芽吹きが始まったところでした。
保養地の林の小道を歩いていると、1株だけスズラン:鈴蘭(ユリ科スズラン属)が咲いているのに出会いました。
庭や鉢植えでよく見られるのは、多くはドイツスズランといわれる観賞用として栽培される品種で、
花茎が葉と同じくらい高く、葉の裏面が濃い緑なのが、日本のスズランと異なります。
キミカゲソウ(君影草)というロマンチックな別名は、花茎が葉より低い日本のスズランを想定したものでしょうか。
姿に似ず毒草で、北海道の牧場などでは家畜が食べないのでよく大きな群落をつくるといいます。
散歩から帰って山荘の管理人に報告したら、つまらなさそうに、近くに群生しているところがあるといいました。でも自分で見つけた、たった1本のスズランがいとおしくて見に行く気にはなれませんでした。
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礼文を訪れる最大のお目当ては絶滅が危惧されているレブンアツモリソウ:礼文敦盛草(ラン科アツモリソウ属)でした。事前の情報では少し早いとのことで半ば諦めていたのが、連日の晴天で開花が早まり会うことができたのは幸運でした。
レブンアツモリソウは国内では礼文島だけに生育するクリーム色のアツモリソウで、一時期大量に盗掘され、絶滅も心配されたのが、様々な法的規制や保護・増殖が行われ、今では数も回復途上にあり、24時間監視の柵の外からですが、結構沢山見ることができます。
レブンアツモリソウは、種子が発芽成長するためには土中の共生菌の助けが必要で、運よく発芽しても花をつけるまでには約7年もの歳月を要し、蜜も食べられる花粉も持たないのに送粉者のマルハナバチの一種を導く構造を持っているなど興味ある生活史を持っています。それやこれやで人気が高く、山野草の愛好家の間では一株うん10万円で取引されているとの噂もあるくらいです。
和名の敦盛草は袋状の唇弁を平家の若武者敦盛の背負った母衣(ほろ)に見立てたものです。
(これで礼文・利尻の花シリーズを終わります)
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礼文島の桃岩近く海を臨む草地にエゾノハクサンイチゲ:蝦夷の白山一華(キンポウゲ科イチリンソウ属)の群落があります。
母種のハクサンイチゲは本州中部の高山帯の草地に生える多年草ですが、北海道と東北地方、サハリンに分布するエゾノハクサンイチゲは、葉の終裂片が尖らず、花柄もあまり長くありません。花には花弁がなく白色の萼片が花弁に見えます。
この花に限らず、本州なら高山帯に分布する植物も、ここ礼文・利尻では海岸近くの低地に分布するものが少なくありません。
いわゆる高山植物は、氷河期に南下した寒地植物が、高山で取り残され生き延びたとされていますが、利尻・礼文でも最終氷河期が終わった時点で、南下した寒地植物が隔離され、西からの寒風に曝される西側斜面や山の上部など、暖地植物が浸入しにくい場所で生き延びたものと思われます。
光る海面を背に映えるエゾノハクサンイチゲの白い花というのは礼文島ならでは景色です。
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礼文島の海岸の岩場に白い花を咲かせているのはエゾイワナズナ:蝦夷犬薺(アブラナ科イヌナズナ属)です。
北海道と本州中部地方以北の山地帯~亜高山帯の岩隙や岩礫地、海岸の岩上などに生える毛の多い多年草で、高さは5~22cm、花は白色で5~20個が総状につきます。花弁は長さ5mmの倒卵形で先がへこみます。
岩場に群れ咲いて白い小さな花を浜風に震わせているエゾイワナズナは、礼文の遅い春の到来を宣言しているようです。
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白山に生え花が飛ぶ千鳥にたとえられてこの名があるハクサンチドリ:白山千鳥(ラン科ハクサンチドリ属)は、礼文の山にも沢山咲いています。タクサンチドリのあだ名もあるそうです。
亜高山~高山の草地にはえる多年草で、6~8月茎の上部に紅紫色の花がかたまってつきます。
花の数はふつう10個前後ですが、数個から20個くらいまでとばらつきます。
萼片や花弁の先が鋭く尖るのが特徴で名前の由来になっています。
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谷の湿ったところに、遠くからでもよく見える黄色い花をつけているのはエゾノリュウキンカ:蝦夷立金花(キンポウゲ科リュウキンカ属)です。エゾノリュウキンカは日本では北海道と東北地方北部に生える多年草で、本州、九州の山地帯に生える母種のリュウキンカより姿全体が大きく、花の径と花茎につく花数も、リュウキンカの2.5cm、1個に対し、エゾのリュウキンカは3.5cm、4~8個になります。黄色の花弁に見えるのは萼片です。
北海道ではヤチブキの名で親しまれている山菜ですが、利尻・礼文では食用にするほど多くは生えていないとのことです。
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