簾 満月「バスの助手席」

歩き旅や鉄道旅行のこと
そして遊び、生活のこと
見たまま、聞いたまま、
食べたまま、書いてます。

気長にガス抜き

2013-09-06 | Weblog
 俯せに成って、馬蹄形をした枕(補助具)にまっすぐ顔を埋めて眠るわけ
だから、当然寝返りはNGである。
 身動きが取れないのでどうしても熟睡出来ず、夜中に何度も目が覚める。
だけならまだ良いが次第に首筋から肩、肩甲骨のあたりが凝ってくる事には
閉口だ。加えて普段と違う姿勢で眠るわけだから、逆に反っている腰も痛む。
 湿布薬なども用意はされているが、一時凌ぎに過ぎず、慰めにもならない。



 こんな生活が術後五日間ほど続き、横向きでの寝姿に許可が下りると、
その二日後にはようやく寝る体位の制限が外される。
熟睡するには、やはり自由な体位と奔放な寝返りは欠かせない。



 この間にも、金属のプロテクタは、透明なプラスチックのものに変えられ、
少しずつではあるが、快方に向かっていることが実感できるのである。



 寝る体位に制限がなくなる頃に合わせるように眼帯が外される。
とは言っても、この時点で左目の中の気体が完全に無くなっているわけでは
無い。目の前には巨大な輪が広がり、丁度黒い寒冷紗を空かして見ている
ようなので、物はほとんど見えず、視力はないに等しい。

 それでも顔を起こすと、その黒い輪は目の下の方に楕円形となって移動し、
その上部の部分で、薄ぼんやりと物が見える、と言うところまで行かないま
でも、僅かに確認できるようになる。







 二週間近い入院で、やっと馴染んだ病院食とも別れる退院の日が迎えられた。
この後は、気長にガスが完全に抜けるのを待ちながら、視力の回復・安定
を図る。そして目薬とは、この先も長い長いお付き合いが続くのである。(続)
(写真はイメージ)



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術後の生活

2013-09-04 | Weblog
 手術が終わり、再び車椅子で病室に戻る。
左目にはガーゼが当てられ、その上から金属製のプロテクトが当てら
れていて、何とも痛々しい姿だ。



 局所麻酔だから体に変調は無く、足元もしっかりしていて歩行にも不自由
は無い。しいて言えば麻酔のせいか、上下の歯に浮いたような違和感が若
干有るだけだ。何よりも手術の傷口は、腫れぼったさを感じるものの、痛み
はほとんど感じない。

 有り難いことに、術後と言えども、寝たっきりと言うわけでは無く、病室内は
自由に歩き回ることが出来る。
これは全てのことが他人の手を煩わさなくてもいいと言う事でこれは助かる。



 ただ、病室を出る場合は、介護付きの車椅子が規則となっている。
片目による事故防止の処置だと言う。

 しかし、良いこと尽くめとばかりは言えなくて、手術では上膜をはがした後、
網膜を安定させるために眼球内にガスが注入されている。
 このことは大変重要で、注入されたガスは気体であるため、普通の姿勢で
は眼球の上に集まってしまい、これでは、役目を果たせないどころか場合に
よっては再手術も有るらしい。
 そのために術後は、うつぶせの体勢を徹底して保つ必要が有るのだ。



 起きて椅子に座っている時は、首を90度に折り曲げて、項垂れる姿勢を、
これは、食事の時も、歩く時も、テレビを見る時も、トイレでも常にこの姿勢
を取り続けることが大切だ。
優しく声を掛けてくれる看護師さんの顔さえ見ることができないのが悲しい。

 極めつけは、夜寝る体勢も俯せであると言う事。
そのために、専用の補助具も用意されてはいるが、これは想像以上に辛い
姿勢である。(続)(写真はイメージ)




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贅沢な個室

2013-09-02 | Weblog
 


 きれいな病院である。最近建て替えられたらしい。
基本的に、病室は個室と言うから贅沢なものだ。



 1階ロビーで受付を済ませ、エレベータで四階に上がると、正面にナース
ステーションのカウンターが有る。その脇に、二十名程座れるようなロビー
が有り、自販機、書架、体重計や丸テーブル・イスが置かれている。



 その前に長く延びる長い廊下は、人影も少なく静かであり、壁に手すりが
無ければ病院とは思えないほどだ。

 

 入院手続きを済ませ、案内された個室の入口扉を開けると、廊下からの
視界を遮るカーテンが吊るされていた。
その先右側が、トイレだ。中には一体となったシャワー室が備わっている。
浴槽が無いのが残念ではあるが、病室であることを考えれば十分過ぎる
設備である。



 突き当りの明るく大きな窓の下には、カウンターテーブルが造り付けられ、
その上に液晶テレビと電話機、下には冷蔵庫も置かれている。

 白いシーツの掛けられたベッドは、さすがに病院のものらしく幅が狭い。
枕元には読書灯やナースコールのボタン類、酸素などの医療設備が備え
られているのがいかにも病院らしい。



 勿論冷暖房は完備だ。
部屋の広さは、15平米は有るだろうか、どこかの駅前のビジネスホテルの
シングルルームよりはるかに広く、綺麗で清潔で整っている。

 これから退院までの二週間余りを、この部屋で過ごすことに成るのだが、
快適な部屋環境とは裏腹な、過酷な術後管理の日々が続くことを、この時
は知ろう筈もない。(続)
(写真はイメージ)

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