簾 満月「バスの助手席」

歩き旅や鉄道旅行のこと
そして遊び、生活のこと
見たまま、聞いたまま、
食べたまま、書いてます。

薩田峠越え(東海道歩き旅・駿河の国)

2020-03-09 | Weblog
 かつてはこの望嶽亭の先から左に取り、海岸に降りるのが街道筋で
有ったと言う。その地は急峻な薩田山の山塊が急激に海に落ちこみ、
海岸線には平地がほとんどない岫崎(くきがさき)と言われる厳しい
地で、親知らず子知らずとの異名をとる東海道一の難所であった。





 当時の旅人は干潮を見計らい、砂交じりの波しぶきが吹き付ける中、
波が引き次の波が寄せる間を縫って駆ける、それは周りの人に気を掛け
る余裕もない、命がけの通り抜けで有ったようだ。
そんな難儀を解消する為、峠を越える中道が明暦年間(1655)に、更に
山の向こうを回る上道も天和年間(1682)に整備され、旅人は海岸を行
く下道から解放された。





 ミカンやビワの畑に挟まれ道を登っていく。
由比の交流館で女性の職員が、「車で峠に向かう観光客には進められ
ない道」と言っていた事情が良く解る。道は曲りくねっているうえ、
狭く行き違いもままならない箇所が多い。
その上急勾配とあってはなれない観光客では危険と言うことだ、せい
ぜい畑仕事の軽トラックしか行き来のない道なので、安心して歩ける
のはありがたい。





 所々で視界が開けるが、そこでは敢て見ないように目を背け、ひた
すら峠を目指す。上り始めて凡そ1時間峠に到着した。
振り返れば眼下に広がる太平洋、そこに迫り出し、縺れるように伸び
る道路と鉄道。
目をその先に転じれば、黒い山塊の上に秀麗な富士の山が見える・・・
筈だが残念ながら厚い雲に覆われてその姿はない。
それでもここには、広重の描く雄大な景観そのものの大パノラマが広が
っている。(続)

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コメント
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