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about Hoffmaniada

2019-07-11 | bookshelf

E.T.A.ホフマンを初めて読むなら↑この短編集がお薦めです
訳者による解説あとがきにホフマンの人物像も書かれてあります

 『チェブラーシカ』などを手掛けたロシアのアニメーション制作会社が2018年に完成させた長編パペットアニメーション作品『ホフマニアダ ホフマン物語』。『チェブラーシカ』は『ピングー』と同じように、その愛らしいキャラクターで大ヒットし、CGアニメに押されて廃れていきそうだったストップモーション・アニメの救世主になりました。日本でパペット・アニメといえば、英国のアードマン社の『ひつじのショーン』『ウォレスとグルミット』に代表されるような子供向けのアニメーションが多いですが、一方で、チェコやポーランド制作のアート・アニメーションと呼ばれている難解な作品も、根強い人気があります。『ホフマニアダ ホフマン物語』は、アートアニメの部類に入ります。
 パペット・アニメは、1つの動作を一コマずつ撮影してゆく手法で、途方もない手間と時間とお金がかかるので、今やコマ撮りアニメは短編が主流です(ヤン・シュヴァンクマイエルやクエイ・ブラザーズも長編は実写映画です。)が、『ホフマニアダ』は製作に15年かけて完成された72分の長編作品。人形は口も動くしまばたきもしますから、制作過程を想像すると気が遠くなりそうです。しかし、見る方は大概そんな苦労は知りませんから、「面白い」「面白くない」で作品を評価します。
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オリンピアに魅了されるホフマン

 アニメーションの技術自体に興味があって観ている方にとっては、興味が尽きない作品だと思われますが、「映画」として見る場合、それなりに前知識がないと「つまらない」と思います。ストーリーは、下敷きになっているE.T.A.ホフマンの作品を知らないと、どこが面白いのか解らないと思いました。
 シュヴァンクマイエル、クエイ兄弟、イジー・バルタ、川本喜八郎などアート・アニメーション作品のキャラクターが、「人形」自体が「芸術作品」で、「作品が動いている」という印象なのに対し、こちらのキャラクターは子供向け操り人形っぽく(アートっぽくない)、『チェブラーシカ』のように「愛らし」くもないので、人形にあまり魅力が感じられませんでした。そういった点では、アート・アニメーションとは一線を画しています。
 『ホフマニアダ』の一番の魅力は、パペット・アニメ云々ではなく、題材の「E.T.A.ホフマン」と「ホフマンの作品」にあると思います。

『砂男』の自動人形オリンピア
 例えば、『砂男』が好きな人なら、どんなオリンピアが登場するか心待ちだと思います。錬金術師のコッペリウスは?ホフマンの勤務先の王立大審院の一室や行きつけの居酒屋の様子は?文字を読んで想像していた世界が具現化されるのを見るのは、胸がときめきます。時には自分の想像と違ってがっかりすることもありますが…。
 作家と作品をない交ぜにしたオリジナル映画で思い出したのが、ポーランド人作家ブルーノ・シュルツの『砂時計サナトリウム』をベースにしたヴォイチェフ・イエジー・ハス監督の『砂時計サナトリウム』と、カフカを題材にしたスティーブン・ソダーバーグ監督の『KAFKA迷宮の悪夢』。これらも、作家と作品を知らないと面白さが半減する映画(アニメでなく実写です)でした。裏返すと、作家と作品を知れば、面白味が何倍にもなる映画ということです。
 私は、『ホフマニアダ』のベースに使われていた『黄金の壺』は読んでいませんでしたし、ホフマンの作品はまだ数作しか読んでいません。それでも上記の岩波文庫『ホフマン短編集』を読んでいたので、十分楽しめました。
 ただ、『砂時計サナトリウム』のアデラ同様、オリンピアの「目玉」には納得いきませんでした。原作では生気のない眼のはずですから。本の挿絵のように。

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