世界16チームが参加する野球の世界一決定戦。「ワールドベースボールクラ
ッシック」の1次リーグ「アジアラウンド」がお雛様の日の3月3日に火蓋が切
られる。まず日本は、中国との対戦である。このメンバーに松坂大輔投手も出
場する。65球の制限があると言うことで投げ込みがたの松坂選手にどう影響
するか、活躍を期待したい。
平成10年8月の甲子園で横浜高校は逆転逆転の連続で優勝をもぎとった。
その時の、活躍振りを再現してみたい。
「宣誓っ!大会80年の歴史の中で、先輩の高校球児が数々のドラマを演じ
てきたこの甲子園で、21世紀に向けて多くの人々に生きる勇気と希望を与え
ることが出来るように全力でプレーすることを誓います」と8月6日横浜高校
の小山良男主将が本塁前の壇上で、背筋を伸ばし、ひとつ深呼吸して、通る声
で叫んだ。
宣誓途中で球場内から拍手が起こり、「勇気」と「希望」のメッセージは
十分に通じたようだった。ここから横浜高校のドラマは始まった。渡辺元智
監督のコメントはいかに!
1回戦 柳ヶ浦 001 000 000 1
横 浜 010 010 04X 6
「簡単には勝てないとは思っていたが、これほどプレッシャーがあると
は。松坂の制球が悪かったのは、力みがあったようだ。我慢のピッチ
ングをしてくれた」
2回戦 星 陵 000 000 000 0
横 浜 102 020 00X 5
「ふだん通りの野球ができた。松坂はていねいに投げていた。小山の
リードがよかったと思う。次も今までと同じ気持ちで冷静に試合を
したい」
3回戦 鹿児島実業 000 000 000 0
横 浜 000 001 05X 6
「前半は我慢しながらチャンスを待った。本当にこれだけ素晴らしい
試合ができるとは思わなかった。100点あげてもいい。6回の三盗
から、先取点を取れたのが大きかった」
準々決勝
横 浜 000 220 010 010 000 12 9
PL学園 030 100 100 010 000 10 7
「試合中に『勝て』と言ったことはなかったが、初めて『絶対に負け
るな』とげきを飛ばした。こんないい試合は初めて」
準決勝 明徳義塾 000 131 010 6
横 浜 000 000 043X 7
「信じられない。まったく信じられない。数字の上では逆転は不可能
と思っていた。だが、可能性を信じ、試合を楽しんでみろと選手に
話した。8回に4点取った後、何が起こるか分からないと思い、
松坂を投げさせた。それで周りの気持ちも高まった」
準決勝以上では史上最大の6点差逆転勝利であった。これまでは第9回大会
(1923年)の準決勝、甲陽中(兵庫)対立命館中(京都)で甲陽中が5点差
を逆転した。
決 勝 京都成章 000 000 000 0
横 浜 000 110 010 3
「苦しい状況の中で、まさか松本が打つとは思わなかった。あの本塁
打でチームに活気が出た。今日は5.6点は覚悟していたが、松坂
がこんなすごいピッチングをするとは思わなかった。こんな幸せは
最初で最後かもしれない」
横浜の松坂は、夏の甲子園決勝戦で59年ぶりのノーヒットノーランを演じ
春夏連覇の立て役者となった。「平成最強のチーム」横浜高校は、全国4,102
校の頂点に立ち、全国の野球ファンに、選手宣誓の通りの「勇気」と「希望」
を与えた。
ドラマチックな全国高校野球選手権大会も8月22日をもって終了した。
様々なドラマを残して。
なかでも、7月18日、夏の高校野球青森大会では、次のような史上最多
122点の試合があったが、「勇気ある敗北」をバネに県立深浦高校チームは
8月1日、秋季大会での雪辱を期して練習を再開したそうだ。
東奥義塾(弘前市)39 10 11 17 16 12 17 122
深 浦(深浦町 0 0 0 0 0 0 0 0
思えば、高校野球地方大会前の6月12日、横浜高校渡辺監督は「高校野球
と我が人生」と題した講演の中で、「現在29連勝中でありますので、本年の
夏の神奈川大会を征し、全国大会連覇に向かって行きたいと思いますが、最近
の生徒は母親を含め自己中心者が多く、生徒の指導にとどまらず父母を含めた
指導が時には必要である」と述べられていた。
また、「お母さん。夢っていう言葉は、かなわない時につかう言葉なんだよ。
僕の場合は、目標なんだ。目標っていうのは、努力すれば必ずかなえられるん
だ」と松坂大輔投手が中学3年時の言葉である。それぞれに、人の心に訴える
言葉であり、含蓄のある表現である。『宣誓っ!』勇気と希望を持って……
行こう。
以上は7年ほど前に感動とドラマに酔いしれた日々であった。松坂大輔投手
の健闘を祈る。