邦画ブラボー

おすすめ邦画(日本映画)のブログ。アイウエオ順(●印)とジャンル分け(★印)の両方で記事検索可能!歌舞伎、ドラマ感想も。

「怪」福神流し

2005年06月16日 | ★妖しい映画
「福の神」を巡っての商人たちの争いに
陰陽師、人斬り侍などが絡む。

妻思いの陰陽師(近藤正臣)と
妻に裏切られた侍(杉本哲太)の皮肉な巡り合わせ。

冒頭に「妖怪百物語」のパロディのような場面。
妖怪使いか妖怪か?
「算盤を小道具にした」火野正平も
仲間に加わって大爆笑。

そして「あやし・宮部みゆき」、「げげげ・水木しげる」、
「黒ずくめ京極夏彦」「・・・荒俣宏」も特別出演・・!!

え?「新宿鮫・大沢在昌」も??

ナイス!

ウィットに富んだ演出が楽しい。

体中から殺気を発散させる杉本哲太、
金ぴかが良く似合う岸辺一徳、
近藤正臣、きっちりした芝居はさすがです。

そして悪徳商人に扮する船越栄一郎が
悪どさにじみ出していて秀逸!

お父さんの船越英二のようにいろんな役を見せて欲しい。

衣装が斬新。
多分に京極のセンスが入っていると思われる。
特に御行の際のドレスアップがすごい。

田辺誠一(又市)は白黒二種類の着物を着わけ、
近藤正臣もすごいビジュアルでぶっちぎり!

又市の粋な台詞回しに
聞き惚れているうちに
ひねりが効いたラストにもっていかれた。

2000年 酒井信行監督  原作・企画・脚本:京極夏彦

■人気ブログランキング
よろしかったらお願いいたします

■他の「妖しい世界」の記事

■大極宮

■「怪」


「怪」隠神だぬき

2005年06月14日 | ★妖しい映画
京極夏彦「怪」シリーズは
WOWOWで放映されたドラマ。

能の面をかぶった侍による連続辻斬りが阿波で起きる。
女子供も容赦なく切り殺す手口は残虐非道の極みで
人々は恐れおののいていた。

異様な登場人物たちがひしめく時代劇ミステリーに、巧みに
妖怪伝説を絡めた京極夏彦ワールド。
この物語では阿波の「狸合戦伝説」を絶妙に取り入れている。

目をそむけてしまうスプラッター描写があると思えば、コミカルな笑いもある。
核は謎解きなのだが
地獄、亡霊、などの幻想シーンも散りばめて実に華やか。

「怪」シリーズに一貫して登場する「御行の又市」がいいです。
何事か!と思うような異様ないでたちのわりには、
飄々としてさわやかな雰囲気なのも
この物語をどろんどろんにしていない大要素と思われる。

ここでは田辺誠一が演じているが、
豊川悦司がやっても似合いそうではありませんか?(恐すぎますか)

又市の「御行奉為(御行し たてまつる)」チリン、チリン。(鈴です)という決め台詞に伴って
「山猫廻しのおぎん」(遠山景織子)、
「戯作者・百介」(佐野史郎)、
谷啓(!)らによる「御行」は「必殺シリーズ」を彷彿とさせる。

京都から辻斬りを追ってきた同心に嶋田久作。
悪役ではなく、正義感あふれるちょっと間抜けな侍を演じて意外に○。

他に宮下順子、「シニア筋肉王」の石丸謙二郎など。

世に不思議なし、世すべて不思議なり。

2000年 酒井信行監督  原作・企画・脚本:京極夏彦

■人気ブログランキングへ
よろしかったらお願いいたします

■他の「妖しい世界」の記事はこちら

「眠狂四郎無頼控・魔剣地獄」

2005年06月08日 | ★ぐっとくる時代劇
鶴田浩二版・眠狂四郎を見た。

眠狂四郎といえば、
市川雷蔵が有名だが
鶴田浩二の狂四郎は柴田錬三郎原作の映画化第一号だった。

「無頼控第一話」「第二話円月殺法」ときて本作で三作目。

黒の着流しだけではなく白い着物に頭巾、
そして鏡獅子のような格好で踊るなど衣装替えもしてサービス満点。
虚無的なムードが漂う雷蔵版とは一味もふた味も違っていて
痛快娯楽時代劇の要素が大きい。

言ってみれば「昼」の狂四郎。

女性にモテモテなのは同じで
第一作目「無頼控」でも津島恵子を手ごめにしてましたが
いやらしさは無く、さらっとした狂四郎であった。

本作では中田康子演じる高慢な姫に所望されるも
「ごめんこうむる」と、はねつけるひねくれ加減はいつもどおり。

山田五十鈴、藤間紫、杉村春子など女性陣も華やかだが
悪徳商人(上田吉二郎)と取引する外国人に上原謙が扮していて
片言の日本語に爆笑。

狂言師役で森繁久弥、手下に多々良純、
ちらりと出る加東大介と、たいへん豪華な顔ぶれ。

スタイリッシュな雷蔵版と比べ
ほんのり温かみがある鶴田狂四郎の存在は意外だった。

映画ではこの他に松方弘樹版があるようだ。(未見だけど濃そうだ)

テレビの田村正和は女性との絡みが強調されていたように記憶する。
(そこばかりに気を取られていたのかも)
片岡孝夫(現仁左衛門)版も、品があった。

1958年 川西正純監督作品 脚本 木村武/ 川西正純

■人気ブログランキングへ
よろしかったらお願い申し上げます

■他の「ぐっとくる時代劇」はこちら

■雷蔵版眠狂四郎の記事はこちら



「オペレッタ狸御殿」

2005年06月03日 | ★痛快!な映画
ネタバレ注意報:
********************

狸御殿+鈴木清順ということで

もっとめちゃめちゃかと思っていたが、
案外まとまっていた。まとまらせていた。

祭りでした。
楽しかった。

主役の二人がいいじゃん!というのが第一印象。
久々に美男美女が登場する映画を見たような気がする。

チャン・ツイイーは表現力が抜群だ。
そしてオダギリ・ジョーの美男ぶりと素直な演技がよい。

私はこの二人にイカレた!

私の隣に座った男性は始まるとすぐに体中をかきまくって
中盤には寝てしまったんですけどね。
ひとり途中で出て行った人もいた。(at 渋谷シネパレス)

狸姫が中国語を喋ろうと片言の日本語をしゃべろうと
どちらでもよいこと。
だって狸なんですからね。

キャスティングへの疑問は始まってすぐに吹き飛んだ。

と、いうのはチャンが国籍すら人間すらも超越し、
美空ひばりのCGよりも光り輝いていたから。
どんな色・衣装も自分のものにしてしまう美貌と
身体の動きの美しさには目をみはった。

中国語がぽんぽんと入ることでかえって映画として彩りが鮮やかになったように思う。
面白いコントラスト。北京弁(?)の響きが可愛らしく心地よい。

言語超越!これは新しい効果だと思った!

日本画の中でヒロインたちが動きまわる、
デジタル処理による美術は大変美しかったが、
黒澤明の「夢」の”ゴッホのエピソード”で見た表現に似ていて
ことさら新しさは感じなかった。
「夢」は油絵ではあったが。

どこのメーカーか忘れたが、日本画から鳥が飛び立つ美しいCMと
中国の水墨画アニメに描かれる桃源郷も思い出した。

音楽的にはスカパラの曲はカリプソ風でいつものお祭り騒ぎのノリ。
白井くん(楽団員として画面にも登場)のポップでひねったナンバーはさすがで
二人がデュエットする「恋する炭酸水」は美しい美術(by木村威夫)と相まって
甘くとろけるよう。あのシーンは切り取ってうちに持って行きたかった。

チャンの「いつか王子様と」、
薬師丸ひろ子が黄金の綱を引きながら歌う「思い下りますな」もよかったな。

全部が歌で綴られるわけではなくて台詞も入るので
フランス映画の「恋するシャンソン」のような当惑感は無いです。

平幹二朗はゴテゴテメイクもきまっていて、
「奇異(あさま)しく むくつけく怖しかりし人の有様かな/今昔物語」 ポン!

また、入れ込めなかった役柄もあった。

でも狸御殿ですからね。

2005年 鈴木清順監督作品 脚本: 浦沢義雄 プロダクションデザイナー: 木村威夫
    音楽: 大島ミチル、白井良明 挿入曲:東京スカパラダイスオーケストラ

■人気ブログランキングへ
よろしかったら行ってやってください

■他のセイジュン作品の記事
●「殺しの烙印」
●「刺青一代」
●「関東無宿」
●「東京流れ者」