待ちに待ったラグビーワールドカップ2019が開始され、昨夜は開幕戦に登場した日本がロシアに先行されたものの、徐々に地力を発揮して快勝しましたので、ラグビー人気はますます盛り上がるでしょう。
私自身はラグビーの経験はないものの、若い時からラグビーは大好きなスポーツで、特に高齢になって時間の融通が効くようになってからは、毎年正月に花園で行われる全国高校ラグビー大会の準決勝を見に行くのが楽しみで、もう15年は続いているでしょうか。
私など想像もつかない身体能力をもった人たちが精一杯ぶつかり合い、文字通りチーム一丸となって戦う姿は本当に素晴らしく、サッカーや野球などとは違う意味でのチームプレーはワクワクさせてくれます。
何よりも素晴らしいのは、
「ノーサイド」の言葉に表されるように、一旦試合が終われば敵味方はありませんし、そのような精神に基づくものかワールドカップについても選手の資格は非常に緩やかです。
国籍で決まるのではなく、その国に3年以上暮らしていれば出場権がありますので、今回の日本チームの構成を見ても非常に多彩で、人種や国籍に縛られないのが余計に魅力を増してくれます。
そう言えば、昨日の試合で大活躍した
松島選手は、桐蔭学園高校出身で2010年度の全国高校大会準決勝で決めた100mの独走トライで印象に残っている選手の1人ですが、ジンバブエ人の父(故人)と日本人の母を持ち、高校卒業後は南アフリカに渡り、スーパーラグビーの強豪シャークスの育成組織「シャークス・アカデミー」でプロを目指し、20歳以下の南アフリカ代表候補にまで選出されたが、日本代表でのプレーを希望し、2013年に帰国したという非常に国際色豊かな経歴があります。
昨夜は日本の健闘に気を良くしてお酒を飲んでのTV観戦でしたが、試合終了後にTVでこのワールドカップを記念してラグビーが大きな舞台になっている映画
『インビクタス/負けざる者たち』の放映があることを知り、引き続いてTVの前に陣取ることになりました。
この映画は、実話に基づいて2009年に製作されたアメリカ映画で
クリント・イーストウッド監督作、そして出演が
モーガン・フリーマン(ネルソン・マンデラ 役)、
マット・デイモン(チームのキャップテン役)という豪華メンバーです。
舞台は1994年の南アフリカ共和国。反体制活動家として27年もの長期にわたり投獄されていた
ネルソン・マンデラは、1990年に釈放されこの年に同国初の黒人大統領となりました。
それまでのアパルトヘイトの反動を恐れる白人たち(アフリカーナ)は疑心暗鬼になっていますし、黒人たちは白人たちとの融合を嫌っていて、お互いの反目が続いています。
一方、南アフリカ代表のラグビーチーム
「スプリングボクス」は当時低迷期にあり、黒人選手もわずか1人という状況だったし、ラグビーはアパルトヘイトの象徴として、多数を占める黒人の国民のあいだでは非常に不人気なスポーツだったようです。
その象徴がこの映画の冒頭の場面で、南アとイングランドの国際試合の場面で、白人の観客は南アフリカを応援しているが黒人は敵のチーム(イングランド代表)を応援しているシーンで、当初はその意味が判りにくかったのですが、映画の進行と共にその背景が判ってきました。
マンデラはこのラグビーチームが南アフリカの白人と黒人の和解と団結の象徴になると考え、チーム名とユニフォームの変更を求める周囲を説得するとともに、一方でチームの主将を招いて、自分の思いを語るのでした。
そして、1995年に自国で開催されたラグビーワールドカップに於いて、南アは予想外の快進撃を見せ、ついに決勝進出を果たし、スプリングボクスは、全南アフリカ国民が見守る中で強豪ニュージーランド代表オールブラックスとの決勝戦に勝ち、マンデラの期待した通り国民統一の大きなきっかけになったのです。
という筋書きで、ラグビーの持つ大きな力を示すとともに、南アがマンデラの冷静で賢明な指導力により、アパルトヘイトの悪夢から抜け出して黒人も白人も心を一つにした国家作りに成功した経緯が良く判りました。
しかも、このような難しいテーマにも拘わらず、クリント・イーストウッドは説教がましくなく、淡々としたストーリィーに仕上げていて、これが余計に余韻の残る名作となりました。
因みに、「インビクタス(invictus)」とは、ラテン語で「征服されない」「屈服しない」という意味らしいですが、奇しくも日本で行われている南ア vs NZの試合をTVで見ながらこのようなブログの書き込みができる事は、本当に贅沢の極みで有難く思います。(まさ)
映画の場面より マンデラ大統領とチームの主将