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小説のレビュー、家族の出来事、趣味の事、スポーツ全般など、日々の出来事をつづりながら、一日一日を心豊かに過ごせれば・・・

さすがは直木賞!『対岸の彼女』by角田光代

2018年10月03日 | 小説レビュー
専業主婦の小夜子は、ベンチャー企業の女社長、葵にスカウトされ、ハウスクリーニングの仕事を始めるが…。
結婚する女、しない女、子供を持つ女、持たない女、それだけのことで、なぜ女どうし、わかりあえなくなるんだろう。
多様化した現代を生きる女性の、友情と亀裂を描く傑作長編。第132回直木賞受賞作。「BOOK」データベースより


角田光代さんの話題の作品ですね。直木賞受賞作品であり、映画化もされていて、そのタイトルは誰もが知っている有名作品ですね。

内気な主婦であるヒロインの小夜子は、様々な葛藤と悪戦苦闘しながらも現代を生きています。

もう一人のヒロイン、明朗快活な独身女社長の葵は、明るく元気に会社を切り盛りし 悩みごとなどないかのような毎日を過ごしています。

一見、正反対のように見える同い年の二人が出会い、意気投合して新しい事業を始め・・・、とストーリーは展開していきます。

現代を生きる小夜子と、葵の過去の出来事が交互に語られる形式で、物語は進行していくんですが、巻末にある森絵都さんの解説にも語られているように、読んでいくうちに、葵の女子高生時代の話が、まるで小夜子自身の過去のような錯覚を覚えます。

とても不安定で、「どうなってしまうん?」と、ハラハラしながら読み進めていくと、葵の凄まじくも悲しい過去の出来事が明かになり、小夜子と葵は訣別してしまいます。

ここで終われば、軽いミステリー小説なんですが、最後には、お互いがお互いを必要として、明るい未来に向かって小さくとも大きな一歩を踏み出して生きていこうとするハッピーエンドで締め括られています。

大きなどんでん返しとか、あっと驚く展開はなくても、「さすがは直木賞受賞作品やなぁ〜」と唸らせる読後感でした。

読者に対して、「周りの人々や環境に流されたり、甘んじることなく、希望を持って、自分自身の殻を破れば、明るい未来が拓けていくんだよ」と思わせてくれる、読み応えありの快作です!

★★★☆3.5です。
コメント
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