素浪人旅日記

2009年3月31日に35年の教師生活を終え、無職の身となって歩む毎日の中で、心に浮かぶさまざまなことを綴っていきたい。

「毒をいかにオブラートに包むか」

2023年09月20日 | 日記
 昨日、センニンソウの話題で「薬と毒」についてふれたが、今日の朝刊の【水説】で元村有希子論説委員が『毒がクスリになる話』というタイトルで、南西諸島に分布する毒蛇のハブから、アルツハイマー病の薬が生まれるかもしれない。ということを取り上げていた。

 アルツハイマー病は、異常たんぱく質「アミロイドベータ」が脳に沈着し、認知機能を低下させると考えられている。東北大農学部の二井勇人(ゆうじん)准教授(生化学)らの研究チームは、ハブ毒からたんぱく質分解酵素「SVMPs」を精製した。ヒトの培養細胞で効果を試したところ、アミロイドベータの量が10分の1になり、さらに試験管内で両者を混ぜ合わせると、この酵素がアミロイドベータを無害な断片に分解したという。

 元村さんは、毒と薬の関係についてこう書いている「毒を病気の治療に役立てる発想は古代からあった。だが多くはその神秘性に着目したおまじないや民間療法にとどまっていた。科学的な分析に基づく探索が本格化したのは、20世紀後半のことだ。例えばアメリカドクトカゲから糖尿病の薬、ハララカというヘビから血圧を下げる薬、イモガイから鎮痛薬が誕生している。
 生き延びるために敵をかく乱する。もしくは敵の抵抗力を奪って捕食する。「食うか、食われるか」の闘いの中で毒は進化を重ね、多様な個性を獲得した。科学者に言わせれば、毒液は「有用物質のカクテル」。」
人間の都合で環境破壊が進み、生物多様性の損失も危惧されている。先週の「らんまん」でも神社合祀令による森の伐採がテーマにあった。今、問題になっている神宮外苑の開発での樹木の伐採と重なった。ハブが絶滅すればこの研究も進まなくなる。「風が吹けば桶屋が儲かる」というたとえではないが、物事はいろいろなことでつながっていると考えさせられた。

 同じ、朝刊に「所ゆきよしさん死去」が報じられていた。毎日新聞朝刊に政治漫画を描いてきた方だ。「山椒は小粒でもぴりりと辛い」という存在で、いつも楽しみにして来た。空気の如く存在だったので所さんのことは何も知らなかった。今回の訃報を伝える記事で「そうだったのか」と創作の裏側を知った。

 1947年、名古屋市生まれ。私より4歳年上、南山大学在学中から地元紙などに風刺画を描き始めたとあった。私は1969年から1974年までの5年間、名古屋市で暮らしていたからほぼ同時代の空気を吸っていたのだなと懐かしく思えた。

 会社員を経て78年に漫画家として独立。政治漫画では「毒をいかにオブラートに包むか」を模索し、「2頭身」の政治家たちが躍動する作風にたどり着いた。1985年3月から毎日新聞で連載を始めた。私が毎日新聞を購読し始めたのが1980年頃だから空気のような存在なのは自然のこと。クスリと心をくすぐられるのが快感だった。

 毎週の創作スタイルは、掲載2日前の夜に、その週に話題となった事象を基に3案ほどラフスケッチを描き、この中から1案に決定。これを仕上げた作品を朝刊紙面に掲載していた。とあった。最近は胃がんの闘病をしながら創作活動を続けていた。

 16日に76歳で亡くなられた。今月17日朝刊に掲載された漫画が遺作となったとあり、急いで古新聞の回収袋から探し出し長く楽しませてくれた漫画への別れを惜しんだ。寂しい限りだ。


 
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