素浪人旅日記

2009年3月31日に35年の教師生活を終え、無職の身となって歩む毎日の中で、心に浮かぶさまざまなことを綴っていきたい。

念力主義

2021年06月28日 | 日記
 「思えば叶う」とばかりに具体的な行動をしない人を、私は『念力主義者』と呼んできた。脳が発達し、言葉が操れる人間の持つ宿命かもしれない。自戒をこめて「念力主義者にはならないように」と呼びかけてきた。

 「楽しいクラス」「差別のないクラス」「協力し合うクラス」などはよく学級目標として掲げられる。しかし、どんな立派な目標、スローガンを掲げてもそれだけでは実現しない。日々の生活の中で自分の言動を検証しながら、様々な場面で行動を積み重ねていくことを忘れてはいけない。

 レストランでメニューを見て「カレーライス」と注文すれば、後は黙って座っていても目の前にカレーライスは登場する。念力主義者の例えとしてよく使ってきた話である。カレーライスができるまでには、食材を買い求め、加工して調理するという行動が必要なのである。学級でも「楽しいクラス」と注文して黙って座わったままではいつまでたっても「楽しいクラス」は目の前に登場しない。

 この言葉が久々に頭に浮かんだのは、菅首相が羽田空港を視察したというニュースの最後にインタビューに答えて「今後、選手の入国が本格化してくる。関係者にさらに徹底して対策を行うように指示した」と話しているのを見た時である。指示したことで自分は責任を果たしたみたいな印象を受けたのである。《言うは易し行うは難し》である。

 「今後、選手の入国が本格化してくる。関係者にさらに徹底して現場での問題点を聞き、政府としてできる限りの改善策を講じるので頑張ってほしい」というコメントが欲しかった。

 それは、昨日の新聞にあった獨協医科大准教授の荻野雅宏さん(59)の思いを読んだことも関係している。荻野さんは脳神経外科医として大学病院で診療する傍ら、スポーツでの脳しんとうを研究する。アメリカンフットボール、自転車などの競技でスポーツドクターも務め、自身も大学時代はアメフトの選手だったこともあり、スポーツへの思い入れは強い。東京オリンピック、パラリンピックの選手を救護する医療班の一員として大会に参加する予定だそうだ。

 そして、今春、五輪・パラ会場の国立競技場で開かれたパラ陸上のテスト大会に参加。医務室の位置や医療スタッフの動線が合理性に欠け、有識者の提言を受け入れない「国の科学へのリテラシーの低さとリスペクトの無さ」を実感した。という。

 クルーズ船から始まった2年余り、2020年7月24日に発行された《コロナ黙示録》(海堂尊著・宝島社)で描かれた、現場丸投げの姿勢に大きな変化がなかったような思いがする。《続・コロナ黙示録》を期待している。
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