国会議事堂正門のすぐ前、国会前庭様式庭園の林の中に日本水準原点がひっそりと置かれています。水準原点とは標高を測るときに基準にする地点のことで、富士山をはじめ全国の標高はここを基準点としています。ではなぜここを水準原点にしたのかというと、かつてここに陸軍参謀本部が置かれていたからです。明治期陸軍は軍事上の目的で全国の統一した地図を作る必要に迫られ、参謀本部の敷地に測量の基準になる水準原点を設置したというわけです。
水準点を収める建物は小さいながらもギリシャ・ローマ神殿を思わせる正式な古典様式建築で、正面は三角形のペディメントを載せたオーダーで構成されています。設計者の佐立七次郎は工部大学造家学科(現東大建築学科)の一期生で、同期には辰野金吾、片山東熊、曽禰達蔵ら明治期を代表するそうそうたる名建築家が名を連ねています。同期生に比べるといささか地味な存在の佐立ですが、日本水準原点標庫は日本人建築家が手がけた現存最古の近代洋風建築として、これから先も受け継がれていきます。
■ミニギリシャ神殿といった風情の外観
■装飾が施されたペディメントの下には「大日本帝国」の文字が刻まれています
■建物裏側
■青銅の扉のなかには水晶板(水準標石)がはめ込まれた台座が格納されています
■標庫の横に設置された案内板
■日本水準原点標庫/千代田区永田町1-1
竣工:明治24年(1891)
設計:佐立七次郎
施工:清水組
構造:石造平屋
撮影:2017/08/11
※東京都指定有形文化財