雪月花 季節を感じて

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和火

2006年09月09日 | うす匂い ‥水彩画
 
 先月、よくうかがうサイトのトップページに「大江戸牡丹」という名のきれいな線香花火の写真が掲載されていたので、「線香花火にも種々あるのですね」とコメントしたところ、サイトの管理者さんが気をきかせて三種の線香花火を送ってくださいました。
 赤、青、黄の紙袋に十本ずつ入っていて、赤い袋には「三河伝承 大江戸牡丹」、青は「九州三池・筒井時正の 不知火牡丹」、黄には「火の国熊本産 有明の牡丹桜」と書かれています。火薬をつつんでいる和紙の色も、それぞれちょっとずつちがっています。

 国産の線香花火には悲しい歴史がありました。
 国内の線香花火工場が次々と閉鎖に追いこまれる中、ただひとつ「九州八女の長手牡丹」を製造していた工場だけが残っていましたが、存続の努力もむなしく、1999年に廃業となりました。のちに、「はかなく繊細で、芯が強く潔く、そして華麗な和火を消してはならない」と、東京下町の問屋が立ち上がります。試行錯誤を繰り返し、およそ八年の歳月をかけてついに純国産の線香花火を復活させ、「大江戸牡丹」の製作に成功したのでした。(東京蔵前の花火問屋「山縣商店」のホームページより)
 花火を送ってくださったのも、こんな花火悲話を知ってのことなのだろうと、送り主さまのさりげない心遣いに感謝しています。


 先週末、夫が遅い夏休みをとって一緒に義父母の家ですごしたので、家族みんなでこの線香花火を楽しめるかしら、と思って出かけたのに、なんやかやと夜をすごすうちに花火をする間もなくすぎてしまい、そのまま持ち帰ることに。(残念‥) 今週末こそ、どんな花をつけるのか見てみたいのですけれども‥。名まえにすべて「牡丹」とあるので、さぞかし大きく華やかな和火なのだろうな、と想像しています。すこし遅い夏送りでしょうか。

 手花火の珠をかばひて闇忘る (文挾夫佐恵)

 線香花火って、うまく火球を大きくすることができて、菊の花弁のような火花をチッ、チッと散らしている間はとても華やかなのに、とつぜん玉が落ちて闇になってしまう‥と同時に、「夏休みが終わっちゃうんだ」と、子どもごころに思ったものです。楽しくて、やがてさみしい散り菊の花‥ でした。


 白露の候になりました。東京は長月に入ってから蒸し暑い日がつづき、時折どんよりした曇り空から雨露が落ちてきます。
 
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