今回のTIFのタイムテーブルを見ていて思ったのが、音楽的に近い系統のグループが二組あるいは三組と続くケースが多々あるということ。観る方としては予定を組みやすくて有り難い。いわゆる、楽曲に注目しているグループを立て続けに観られたりすると、ステージの良さもさることながら、客層もそういう見方をしている人が集まり平和な空間が生まれる。
SO.ONprojectから次がPeach sugar snowという流れもそんな中の一つ。
「Peach sugar snow」は楽曲が良いという評判を密かに聞いていたので楽しみにしていた。あまり予備知識を仕入れ過ぎずに臨む。
三人の少女がステージに現れた。山梨からやってきたという三人は、少しばかり哀愁味のあるメロディに乗せて、ゆったりとしたダンスを魅せ、ウィスパーヴォイスで囁くように歌う。三人とも、特に左右の二人はまだあどけなさの残るルックスで、最初は少し心がたじろいだけれど、良いステージを魅せるという事に年齢は関係ない。私は次第に、その優しい音色と優しい踊りに引き込まれていった。
「じゅもん」という印象的なミディアムテンポなナンバーに続いては、アニメ「うる星やつら」の主題歌「ラムのラブソング」。歌詞に合わせて一瞬、アイドルヲタにありがちな合いの手を叫ぶ人が一人いたが、この優しくもゆるやかなリズムのステージににそういう合いの手は不似合い。二番では自然とそういうものはなくなった。
三曲目の「人魚~泡になって消えても~」は、三人がステージ上で眠るシーンから曲が始まる。Peach sugar snowのダンスは振り付けというより、曲の世界観の表現である。ゆるやかに動きながら、徹底的に曲を表現している。その真剣な横顔のあどけなさに、これからの更なる成長に期待をせずにはいられなかった。
ダンスをステージで魅せるという事を芸術表現だとするなら、大人には出来ない、少女にしか出来ない表現だってある。そんな気がして、私はそのステージ世界に引き込まれていった。
Peach sugar snow 「人魚~泡になって消えても~」 MV
暑いけれど、青空の下でステージを観ているのは気持ちのいいもので、もっと居たかったけれど、エレベーターを下りる。次は湾岸スタジオ内にあるENJOY STADIUMに移動。次に観るのは大阪で活動するグループ「SO.ON project」だ。
SO.ON projectは以前から観てみたかったグループ。大阪で音楽の勉強などをしている大阪スクールオブミュージック高等専修学校の生徒によるグループで、YouTubeで見たら楽曲もいい感じで気になっていた。今回のTIF初出場の報を知り、是非とも観たいと思い、(上がるのが少し手間な)SKY STAGEまで上がっていながら一組観ただけで下りたのであった。
実は先ほど、リストバンドを付ける列に並んでいたらメンバーからチラシをもらい、「実はこのあとステージを観させていただく予定です。頑張って下さい」と声をかけるという偶然もあった。ステージに無事入場出来てホッとしつつ、前のグループが終わったところで前方に移動する。
この日のために選抜されたメンバーが勢い良くステージに現れた。歌、ダンス、ビシッとしたものがあり、観ていてとても小気味よい感じ。上手くパフォーマンスするだけでなく、メンバー全員がとてもイキイキとした表情を見せているので、歌詞が前向きなものが多い歌と素敵にリンクしている。きっと、こういった表情作りとかも日頃のレッスンで学んでいるのかもしれない。私は次第に胸が熱くなっていた。
ステージに立つことの喜び。人に歌やダンスを観てもらう喜び。そんな喜びに溢れているからこそ、メンバーは素敵な笑顔でパフォーマンスをするのたろう。その魂の弾け具合がパワフルでスピーディーで表現力も素晴らしく、体全体を使ったステージに、私は手が痛くなるくらいの拍手を贈った。
メンバーがいい青春の日々を送っているのだろうななんて思える。それは、そんな情熱がほとばしる良いステージングの確かさ。そして、丁寧に音が作られているのがスピーカー越しに感じられ、前向きな歌詞がマイクから伝わってくる曲に、グループに関わる大人達が良いものを用意してあげている愛情が感じられるのだ。そういうものが伝わってきたから、観ているうちに熱い気持ちになったのだと思った。
歌を歌うなら出来るだけ良い歌を歌いたい。どこのアイドルさんもそう思っている筈。良い歌を歌えることは幸せなことであると思う。
【SO.ON project】MY SCHOOL『HEY YOU !』公式MV
TIFにはいろんなステージがあって、それぞれの良さがあるけれど、来場者に「一番好きなステージは?」とアンケートをとったらSKY STAGEが一位になるに違いない。フジテレビ湾岸スタジオ屋上。日頃は絶対入れないであろうこのスペースという特別感、屋上からの素晴らしい眺望、そんな場所でライブを観られるだけでもチケット代の分の価値があるのではないかと毎回思う。
スマイレージが終わり、屋上へのエレベーターの列に加わる。朝イチに屋上に向かう人達で毎度混むこの時間帯だけれど、既に並んでいた人達は上がっているようで、スマを観てから上がるという人の流れに巻き込まれないよう、早めに列に加わったおかげでスムーズに上がれた。
一日目のSKY STAGEの最初の出演は東京で活動する「ウルトラガール」。みんなを応援する正義の味方というコンセプトで、応援ソングを主体に歌っているグループだ。ステージでは常に力のこもったステージングを魅せ、大汗を流しながら歌い踊っているのが特徴。
この「常に力のこもった」というのはポイントで、地下系アイドルの場合、自分達のステージが終わったあとにロビーで物販会を行なうのが定番なのだけれど、彼女達はそれをわかっていてもステージで大汗を流して自分達を表現しているのだ。それは清々しいまでにステージへ力をこめているという意味なのであります。
去年のTIFでも、ウルトラガールのメンバーは会場内に居た。出演メンバーには選ばれていないけれど、同じ事務所から三組が出演しているので、会場内の物販コーナー(各事務所ごとにテントとテーブルが設けられている)でお手伝いをするためにやってきていた。
笑顔でグッズ販売をこなすメンバー。TIFはいろんなグループのファンがいるから、こういう場所での接客も重要だ。少しでも好印象を持ってもらい、興味を持ってもらうために各事務所のスタッフ、メンバーが頑張っている。
そして、メンバーはグループの宣伝のためにチラシを持って会場内を歩いた。会場内と言っても、勿論屋内ではなく、湾岸スタジオのある広場周辺。そこで並んでいたり、小休止している観客にアピールをするという訳だ。
しかし、チラシ配りを終えて帰ってきたメンバーに社長は怒ったという話を聞いた。社長曰く「気持ちが入っていない」という意味だったようだ。メンバーは泣いた。再び気持ち新たにしてチラシを配りに出向くメンバー。新人格のアイドルは下積みがあるのが常であるのは、どの立ち位置にいる人でも必然とはいえ、ステージに立てない悔しさ、猛暑の中で自分達を知らない人に向けてアピールしていく大変さは、当事者でないとわからない苦しみがあっただろうなと思う。
そして、今年のTIFでウルトラガールは初出場を果たした。しかも、こうして人気一番のステージのトップ出演という素晴らしいシチュエーションで。
夏の抜けるような青い空の下、メンバーは感激の面持ちでステージに立った。そして、朝から力一杯歌い踊った。それは、春夏秋冬、朝昼夜、いつも力一杯のステージを見せているウルトラガールらしいステージだった。
【LIVE MV】ウルトラガール|ウルトラ応援歌|歌詞付
(誤解をされないよう念のため書きますが、これは公式MVなのでセリフ部分以外の歌はCD音源を画像に被せています)
最後に歌った「ウルトラ応援歌」で私の後ろにいた他ヲタの人達から「いいステージ見せるなあ」という賞賛の声が聞こえてきた。私も心の中で「その通りだね!」とつぶやいた。TIF2014。いいスタートだなと思いながら、まわりの楽しそうな声と声援を聞いた。
TIF2014 タイムテーブル
http://idolfes.com/2014/time-table/
2014 J1第17節 FC東京×ベガルタ仙台 アイドロング!!! 試合前ライブ
FC東京のサポーターは面白い人達で、試合の展開に合わせて応援のリズムを変えたりするような臨機応変さもあり、選曲も海外のサポーターが歌っているようなものに限らず、歌謡曲も積極的に取り入れてきた。また、東京をテーマに歌っているヒット曲も何曲も取り入れ、中でもゴールが決まると歌われる「ブギの女王」笠置シヅ子の「東京ブギウギ」は盛り上がる曲である。
そんな彼らが昨年の夏からアイドリング!!!の「サマーライオン」を歌っている。昨年7月にスタジアムにゲストとしてやってきたアイドリング!!!が当時最新シングルだったこの曲を歌った縁もあったとはいえ、世間的に知られているAKBの曲とかではなくアイドリング!!!の曲を選んだというところに、ありきたりの事はしたくない!というサポーター達の気概がうかがえる。
サマーライオンはあっという間にサポーター間に浸透し、対戦相手のサポーターからも「なんだか耳に残る曲」と評判になっていた。しかも、サマーライオンを歌った日は負けないというジンクスまで生まれたりして、すっかりこの曲はホームである味の素スタジアムの風物詩になった。
アイドリング!!!の曲を歌うきっかけとしては、FC東京の応援番組(TOKYO MX TVで放送)のアシスタントとして、アイドリング!!!19号の橘ゆりかが活躍していた事も大きかった。アイドリング!!!自体の知名度は決して高くなくても、サポーターの間では「アイドリング!!!19号 橘ゆりか」は知名度が高いという事なのである。
学生が夏休みに入り、いよいよ夏本番といった天候になってきた7/27日曜日。味の素スタジアムには去年に続きアイドリング!!!が姿を見せ、今年もサマーライオンを歌った。
ビジョンを使って選手紹介風にメンバーを紹介すると、橘ゆりかの所で大きな拍手が起こった。
歌い終わったメンバーはゴール裏に足を運び、サポーターの声援にも応えた。サポーターから沸き起こる「橘トーキョー!」コール。選手や監督でもない人物がチーム名を付けてコールされるのは異例かもしれない。そして、サポーターは「FC東京版サマーライオン」を歌い始めた。
真剣勝負のスポーツの場にアイドルがゲストで現れて歌を歌う事に対して否定的な意見もあったりするけれど、それはなんの脈絡もなく、その場にいる事に関係性も見出だせないからそういう意見が出て来てしまうのだろう。
「仕事で関係している」、「地元のアイドルである」、「そのチームのファンを公言しているメンバーがいる」など、そういう関係性がある場合はサポーターも好意的であるように思う。
唐突に宣伝のために現れるのとは違い、日頃からテレビの仕事を通じて関わりを持ち、その仕事ぶりに好感が持たれていたからこその信頼関係がそこにあった。橘ゆりかメンバーは実は滋賀県の出身だけれど、今は身も心もFC東京の人である。
6/15にラゾーナ川崎にて行われた新生東京パフォーマンスドールのミニライブに行ってきました。
彼女達の事は結成当初から知っていて、YouTubeで童画も見た事がありますが、生で観るのは初めて。デビューシングルの発売を記念したイベントであります。
先ほどグループ名の頭に「新生」と付けた事でわかるように、彼女達はかつて活動していた東京パフォーマンスドールの看板を復活させ、それを背負ってのデビューとなります。昔あった看板を背負うという事は、昔と比較されてしまうという意味も併せ持ちます。まちろん、彼女達は彼女達であり、昔は昔です。でも、司会進行のスタッフのお兄さんも、メンバーの自己紹介でも、「あの篠原涼子さん、穴井夕子さん、市井由理さんが所属した」という説明を必ず付けました。昔の名前を背負ってます!と正々堂々と宣言している以上、感想は厳しく行きまっせ!と、こちらも構えて観る事にしました。
ミニライブはダンスパフォーマンス曲から始まりました、。オープンスペースでのインストアイベントのセットリストとしては随分思い切った構成。さすが東京パフォーマンスドールさん!という演出です。
しかし、その曲を始める前に前説が入り、合いの手の要求をスタッフのお兄さんが客席に行なってしまった。これはとょっとイカンと、スタートからブルーな気持ちになるのでした。
一曲目は歌ではなくダンスパフォーマンス曲を持ってくる。これは先代TPDの公演でも定番だった演出。この日はオープンスペースでのイベントだから、さほどマニアックな演出に振る必要もないのでしょうけれど、そこはやはりTPDの名に賭けての拘りというものなのでしょう。メロディラインはどことなくTPD DASH!!の熱くクールなナンバー「FIRE」になんとなく似ている。これは何かしらのオマージュなのかもしれないと、そこは嬉しくなるのでした。
セットリストは先代のナンバーがほとんどで、二代目のオリジナルはオープニングのダンスナンバーと、今回発売されたシングルである「BRAND NEW STORY」のみ。この曲の作り、特に転調の感じが小室ナンバーって感じが全開だけれど、先代のカバーも小室ナンバーでありました。アレンジは変えてあり、サウンド的には二代目の方がオーソドックスな音。この場合のオーソドックスとは、アイドルポップスとしてのという意味です。
通りがかりの人も気軽に観られるイベントという事で、私のような初めて彼女達を観る人も多かったと思うけれど、そのために自己紹介を挟んだりして、基本的には普通のアイドルイベントとして作り上げられている感じでした。ミニライブが終わったあとは握手会というのも標準的なアイドルイベントの形。
イベントの性質上、彼女達の事をこの日のステージだけで評価してはいけないと思えるし、やはり定期公演なり、ワンマンライブなりを観て判断すべきなのでしょうか。気合いの入れどころというか本質は違う場所にあるのかもしれない。
夏に行われる東名版ワンマンツアーのタイトルに「ダンスサミット」と付けている。「ダンスサミット」とは先代のライブの名前で、先代の東京パフォーマンスドールはライブという呼称は基本的には使わずダンスサミットという名称を使っていました。つまり、二代目もそれだけの覚悟を秘めてステージに上がっているのだと思いたい。同じグループ名、同じライブ名を使用するという事は比較される事も覚悟の上なのだと解釈しました。
正直、想像していたよりも普通のアイドルグループに思えたけれど、まだ結論を出すのは早いかなと思いながら会場をあとにしたのでした。
東京パフォーマンスドール - BRAND NEW STORY
新生TPD ラゾーナ川崎イベントセットリスト
We are TPD
ダイヤモンドは傷つかない
MC
十代に罪はない
WAKE ME UP!
MC
BRAND NEW STORY
MC
WEEKEND PARADISE
今自分が見ているこの景色は夢の中の出来事だという事は、なんとなく理解できていた。でも、もう少しこの夢の世界に浸っていようと、夢の中の自分は冷静に思った。
自分は東京近郊のどこかの郊外の駅前にある古びたイベントホールに居た。入口には聞いたことのないアイドルグループの名前で、今日ここで握手会が行われると書かれてある。聞いたことのないアイドルグループの名前はよくわからない。なぜ自分がここに居るのかもよくわからないが、夢に整合性を持たせるのは難しいことぐらい、自分の頭の中身だから理解している。自分は冷静なんだ。
ポケットに手をやると握手券が10枚くらい入っているが、隣にいるヲタたちが「俺は今回45枚ぶっこんだぜ!」などと下品な会話をしている。自分のポケットの10枚なんて一見さんレベルらしい。
そのヲタたちについていくように会場に入っていく。テニスコートを二面くらい作れそうなフロアスペースにヲタがたくさん居るのが入口から見える。女の子は3割くらいで、割と若い人が多い。
さて、よくわからないけれど握手をするかと中に入ろうとすると、いきなり警備員に止められた。ボディチェックをするから一列に並べという。係員が服の上から手を当ててチェックでもするのかと思いきや、列は別室に進んでいった。中に入るとパーティションがいくつもあり、前の人から「どうぞ」と声のかかったパーティションの間に入っていく。すぐ自分の番になった。
言われた所のパーティションの間に入ると、奥に係員が立っていて、床に銭湯の脱衣場にあるようなカゴが置いてある。
「服を脱いでください」と係員が言う。ちょっとたじろいだが、それが決まりなようなので言われた通りに服を脱ぎ下着姿になる。係員は「失礼します」と言って上着のポケットなどをチェックし始めた。
ここはなんなんだ?なぜ、ここまで厳重なんだ?
ボディチェックを終えて握手会の行われているフロアに戻る。いきなり入口で荷物検査が始まった。金属探知機でチェックを受けたあと、カバンの中身まで見られる。夢の中の話だから、その中身が可笑しい。なぜかノートパソコンが三台も入っていて、なぜか駄菓子がたくさん入っていて、野菜ジュースのペットボトルまで入っている。後ろからひそひそ話が聞こえてくる。
「なんだあいつ。ノーパソ三台も持ってるよ」「いかにもなオタクたな」「なんでライバルグループがCMやってる野菜ジュースを持ち込んでるんだ?」「アンチかよ。要注意人物だな」
いくつもある握手レーンを眺めるが、名前を見ても知らない人だ。ハロプロでもないし、AKBでもないようだし、誰なんだ?あっ、そういえば聞いたことのないアイドルグループだったなと思い出す。これは夢だからな。
よくわからないので、ルックスで惹かれた娘を選んで列につく。自分の番が来た。
「あっ、ムラカミ君だ!久しぶり!最近来てくれなかったよね。他のグループに浮気してたの?DD禁止だぞぉ」と一方的に高い声でまくし立てられるが、自分の名前は村上じゃねえ古峰だ。しかも、お前とは初めて握手するんだぜ?と心の中で思ったが、これは夢だからなと自分に言い聞かせて笑顔を返す。
「よっ、久しぶりだな。名前憶えててくれていたんだ。嬉しいな。そんな優しいエレナちゃんを忘れて他のアイドルに浮気なんてするわけ無いだろ」と取り繕った瞬間、素朴な笑顔を見せていた彼女の表情が変わった。
「私の名前憶えてないじゃん!私はエリナたよ。ひどいっ!」
彼女が突然涙目になってきた。慌ててなだめる自分。しかし、後ろで順番待ちをしていたヲタが、なんか只事ならぬ事態が起きていると思ったのか野次を飛ばしてきた。
「あいつ、エリナちゃんを泣かしているぞ!あっ、さっきのアンチ野郎じゃないか!」
自分はあっという間に警備員とスタッフと、なぜだかヲタたちに取り押さえられていた。ふと気づくと右手にカッターナイフをなぜか握っている。俺はなんでこんなものを持っているのだ!
別室に連れて行かれた自分は、そこで改めて荷物検査を受けた。カバンの中からノートパソコン三台と野菜ジュースと、駄菓子、、のはずが駄菓子がなくなっている。代わりにカッターナイフが入っている。こんな危ない物を持ち歩く訳がない。必死に説明した。先程、荷物検査をした時には入っていなかったのに!
スタッフが警察に電話をしている。ちょっと待ってくれ!と叫んだ瞬間、自分の後ろにたくさんのヲタが横一列に並んで怖い顔をして立っている事に気づいた。
「おまえのせいでイベントは中止だ!」と口々に叫ぶ彼らに何かを弁明しようとしたところで目が覚めた。
目が覚めると自分の部屋にいた。夢から目覚めたのか?机の前で自分は座っていた。
机の上にはなぜか古いラジオが置いてある。こんな古い物は持っていない。ああ、まだ夢の続きなんだと冷静に思った。
ラジオからニュースが聞こえてきた。雑音混じりに所々聞こえてくる言葉に身を乗り出した。
「…握手会で……カッターナイフを持って……押収したパソコン三台にそれぞれ別なアイドルグループへの犯行声明文が書かれた文書ファイルがあり…村上容疑者を逮捕…」
なんで逮捕されているのに俺は部屋にいるんだ?そもそも、俺は村上ではない古峰だと何回言えば…。あっ、これはやっぱり夢なんだなと我に返った。ニュースは続いている。
「事態を重くみた政府は本日2015年4月1日をもって、アイドルの握手会を禁止する法律を作った事を発表した」
ちょっと待て、法律ってそんなに簡単に成立するのか?しかも、今年は2015年じゃないし。やっぱり夢なんだと安堵の思いにホッとため息をついた時、自分の顔が涙でグチャグチャになっている事に気付いた。
それは、悲しみでもなく、安心でもなく、ましてや喜びであるはずもなく、夢の世界で起きた出来事に、ただただ涙が止まらず夜は更けていった。
アイドルライブに於ける対バンライブがここ数年盛んになっていて、たとえばそういうライブでは東京に全国から途方アイドルが集結みたいなプログラムもあったりします。そんな対バンライブのひとつ「アイドル横丁祭り」でいくつかのグループが話題になり、何人かのアイドルさんが注目された。この対バンライブに毎回足を運んでいたヲタから「カンナ様」と呼ばれて人気を集めていたその娘を初めて観たのは、歌手としてステージに上がる姿ではなく、司会進行役として出演した回だった。司会をやらせるためだけに、わざわざ福岡から呼ぶなんて、主催者側もカンナ様の人気に注目しているのかと感心したものです。SNSでのヲタの反響に注目している業界関係者がいる事は決して珍しくなく、そうした些細なムーブメントがライブアイドル業界のトレンドを動かしてきたのも事実。
歌うカンナ様を観る事が出来たのは、それから割と早かった。一ヶ月ちょっと経った頃、彼女の所属するグループ「Rev.from DVL」が出演したアイドル横丁祭りを観たのでした。
数曲歌った中で一番印象に残った曲。ファンキーでハモリもよく、躍動感があったその曲の音源を奇しくも手に入れたのは、昨春タワーレコードから発売された「JAPAN IDOL FILE」という五枚組のCD.地域別に分けられたディスクの九州のグループをまとめてあるDISC 5にそのファンキーナンバーはあった。
音源を聴いて私は更に気に入った。ライブで感じた躍動感をCDでも表現出来ている。ここの事務所はアイドル音楽に対して真摯に取り組んでいるタイプの事務所かもしれない!と、今後このグループを注目していく気分になったのでありました。
しかし、それから少し経ってから例の騒ぎが発生する。まあ、それ自体が「仕掛け」である事はどうでもいいし、その「奇跡の一枚」は素晴らしいのかどうかも興味はない。ひとつ残念だったのは、楽曲やグループの放っていた魅力は置いてきぼりにされて、「芸能のプロ」が推していきたい子だけがクローズアップされてしまったことに尽きる。それだけの逸材であったという事なのかもしれないけれど、彼女が有名になることによってグループが得られるものが見えてこないのも残念に感じる部分でもある。さゆがテレビに出まくったことによってモーニング娘。が得た「メジャー感」みたいな特典は今のところ感じない。
それでも、Rev.from DVLはメジャーデビューを果たす。強いて言えば、これが「一人が有名になって得たもの」なのだろう。ジャケットは平凡なデザイン、悪く言えば新しいアイドルを作っていこうという気概のようなものを感じない作り。とりあえず無難なものを作りましたというもの。このCDのジャケットがどんなものであったかを、一年後にアイドルファンは忘れているのではないだろうか?と思えるほど平凡。
でも、曲はとても良いというジレンマがそこにある。私がライブを観た時に一番印象に残り、「JAPAN IDOL FILE」で気に入ったあの曲がメジャーデビュー曲に選ばれたのだ。
そして、そんな良い曲はメジャー化されるにあたって、インディーズ時代からアレンジが変わった。ボーカルが妙に高い。リズムが軽くなった。どう聴いてもメジャーデビューで音に予算が掛けられて厚みを増している筈なのだけれど、なんだか物足りない感じ。
そういう「何かしらの物足りなさ」を感じる部分が、つまりはアイドルCDは「聴くもの」なのか?「買うためのもの」なのか?を考えさせられ、アイドル産業の陰と陽が如実に現れているようにも思えて、いろいろと悲しい気分になっていく一枚なのであります。それ自体が物語の過程に過ぎないのだとしても、どこかやりきれない思いを抱きながら、彼女と彼女達のこれからを気にしている今日この頃。
【PV】 Beat Goes On~約束の場所~ RYUTist(りゅーてぃすと)| 新潟市古町生まれのアイドルユニット!
アイドル楽曲大賞の話題をもう少し書きます。
今回の結果を見て驚き嬉しかったのは、インディーズ&地方アイドル部門の二位にRYUTistの「Beat Goes On! ~約束の場所~」がランクインした事。あまり東京には出てこなくて、日頃は地元新潟で定期公演を行なっているRYUTistですが、その「あまり東京には出てこない」という事で、アイドルヲタにとっていつまでも新鮮な存在でいるという事。公式サイトに持ち歌のオリジナル曲(現在39までナンバーが付いてる)の歌詞を載せていたり、公演のセットリストも載せているような音楽に対する真面目な姿勢。そういう面がとても好感を持たれているというところにあわせて、今回ランクインしたこの曲のクオリティが心に刺さったという感じでしょうか。
RYUTist 公式サイト
http://ryutist.jp/
この曲の歌詞も公式サイトに掲載されていますので読んでいただけると尚良いですが、歌詞に散りばめられた言葉にアイドルグループを好きな人にとって響く言葉がいくつも並んでいます。みんなの力を合わせて一つの場所(ステージ)を作っていくという事。この「みんな」とは、メンバーであり、スタッフであり、観客であるわけです。どれかの力が欠けても完成しない。そういうステキな場所を歌っています。
グループを応援していく上で避けられないのが、いつか去っていくメンバーが現れるということ。RYUTistも乗り越えてきた思い出であります。
アイドルを続けていくこと。アイドルの応援を続けていくこと。どちらも、喜びもたくさんあれば、時には悲しみもある。それでも、みんなが続けていけるのは、たくさんの笑顔に包まれた場所があるからこそ。そういう場所を作っているアイドルは強いのです。
仲間がいる場所の尊さ。この曲を聴く度に、人はなぜ歌うのか?人はなぜ歌う人の周りに集まってくるのか?それがわかるような気がします。
このブログで以前にRYUTistについて書いた記事の紹介です。
「若者のすべて」
グループを離れるメンバーとグループへのエールを書いた記事です。
TIF2013レポート その12 ~夏の夜空とRYUTist~
TIF2013二日目の夜、素敵なステージに出会えた話。
手紙。 青SHUN学園
毎年恒例のアイドルファン発企画である「アイドル楽曲大賞」の2013年度の結果が昨年末に発表されました。今回からメジャー部門とインディーズ&地方部門に分かれまして、メジャー部門はAKB48の「恋するフォーチュンクッキー」が一位になるという結果になりました。この企画は48系は割と弱いのですが、今回の結果は、まあ予想の範囲内といえるものでした。この曲はファン以外の人にも好評だったことを思い出します。
驚いたのはインディーズ&地方部門。自分の予想していた曲は軒並み上位でしたが、上位曲はどれが一位になってもおかしくはないくらいにはエモーショナル。その中で一位に輝いたのが青SHUN学園の曲であったという事に驚いたのです。
結果と得票数
http://www.esrp2.jp/ima/2013/result/songi.html
ちょうど一年ほど前になりますが、昨年の1/20に後楽園のラクーアにて行なわれたロコドル大作戦という地方アイドルを集めたライブを観に行きました。ラクーアですから観覧は無料です。各運営は物販でCDなどを売って売上を得るという、アイドルヲタに向けた「顔を売る」事が目的なライブだった訳なのですが、各グループのステージングの仕方はそれぞれで、多くは普段通りな感じでステージを行なっていたのだと思います。各グループのヲタも盛り上げに一所懸命で、こういう対バンライブならではのお祭り感はあって、木枯らしが寒い日ではありましたが楽しかった。
そんな流れの中、ライブの終盤に出てきた青SHUN学園に私は驚きました。福岡からやってきた彼女達と彼らは、単に大所帯なだけでなく、演出にも趣向を凝らしていた。パンダの着ぐるみが客席を練り歩き、そのパンダの形のバッグを背負った女の子がフロントメンバーとして歌う。結構ヴィジュアル的に良い感じの子が多い。
「彼ら」と書きましたが、メンバーには男もいるのです。オカマもいました。みんな笑顔で踊っています。楽しそう。しかも、曲が良い。おそらく青SHUN学園は、そんな良い曲たちを私のような初見のヲタに一曲でも多く聴いてほしいと思ったのでしょうか、ライブはメドレーで行なわれました。他のグループはおそらくそのグループの代表曲を並べたセットリストで勝負してきた中で、青SHUN学園は少しでも多くの曲をとばかりに、メドレーで勝負してきた。
そして、メドレーが終わり、メンバーのMCを挟んだあと、学園長という男性がステージに現れ、熱唄を始めた。メンバーも何人かが客席に降りてきて、煽り、躍り、唄った。なんだかよくわからないまま、その喧騒に巻き込まれた形になった私でしたが、とても楽しかった。不思議な余韻は残ったのでした。
帰宅後、その学園長熱唱曲は「開放」という曲である事を知り、このグループには高等部や中等部だけでなく小学生や幼稚園の子によって構成された組まである事も知りました。
「開放」の事はまた別な機会に書こうと思います。
開放 2013.1.20
http://www.youtube.com/watch?v=rcJk1Fvl2pQ
ライブを観終えてみれば、そんな「解放」のインパクトが強すぎてメドレーで見せてくれた女の子たちの良曲パフォーマンスも少しばかり脳裏から消えかけていたのですが、アイドル楽曲大賞で青SHUN学園の「手紙。」が一位になったと知り、寒空の下で頑張っていた彼女たちの笑顔を思い出したのでした。
この曲は王道歌謡系なメロディにダンスナンバー的な要素も加え、クライマックスではメンバー同士によるキスシーンまであるという、見所聴き所てんこ盛りな曲ですから、まあ多少はマンパワーが発動したような事はあったのかもしれないにしても、一位は理解出来る佳曲です。サビのリフレインがとても印象的で、作曲者のソングライティングのセンスを感じるナンバーであります。
次回以降、アイドル楽曲大賞の上位になった曲から何曲かを、もう少し語っていきたいと思います。
先日、仕事で疲れていた自分の頭の中に突然AKB48の「恋するフォーチュンクッキー」が流れてきました。特別この曲が好きという訳でもなく、昔のアメリカのガールポップ的なエッセンスを感じる曲として、まあ良いよねくらいの感想な曲ですが、こういう疲れている時には素直にすーっと耳に入ってきそうな曲であります。
「恋するフォーチュンクッキー」
http://www.youtube.com/watch?v=dFf4AgBNR1E
私は高校時代に車に同乗して、指定された場所のとある物を回収するアルバイトをやっていた事があります。運転手はシフト勤務ですから毎回同じ人と組むとは限らず、その辺も面白かったのですが、中には運転中に演歌のラジオ番組しか聴かない人がいました。最初はそれが苦痛で、聴きたいと思っていない音楽を聴かされるという事はなんと苦痛であるかと身にしみましたが、そのうち嫌ではなくなってきました。
疲れている頭と体にはシンプルなメロディの音楽のほうが心地よく、特に夕方は演歌のメロディは不思議と街の景色とマッチしていました。演歌の持つ労働とのフィット感に触れた私は、なぜ大人は演歌を好むのかをなんとなく理解出来たような気持ちになりました。疲れている時には自然とラジオに合わせて口ずさみたくなるような、そんなシンプルな良さを持つ音楽である演歌ならてはの親しみやすさに、大衆性の高さを感じていたのです。
音楽の魅力というものは一言で説明のつくものてはなく、ジャンルの数だけ魅力の種類がある。凝りに凝った作りに惚れ惚れするものもあれば、シンプルな作りゆえに幅広く親しまれるものもある。そのどちらも素晴らしい。
アイドル音楽も同じで、上手さや音のクオリティで魅せる聴かせる音楽もあってもいいし、自分はそういうものも楽しんでいる。ハロヲタがアレンジャーが誰であるかに拘ったりするのも理解できるし、自分もそういう聴き方もしている。でも、メジャーシーンで活動していく上では、シンプルで口ずさみやすい曲も必要かなとは思います。
その作り込みに聴き入るだけでなく、CDに合わせて一緒に歌いたくなるような曲もたくさんあると良いなと願うハロプロの2014年です。