森くんの記事が「Number」に掲載されています。
【森 且行 ゼロからの挑戦】
2013/9/5
コチラ Number Web ~記事紹介~
~引用~
「 日本中を驚かせた転身から17年。
25期生新人王、そして2度に渡るG I制覇を果たしたものの、
これまでの歩みはけして順風満帆ではなかった。
幾多の挫折を乗り越え、目指す目標はただひとつ―。
その日、川口オートレース場は驟雨に見舞われていた。7月17日、第37回キューポラ杯の優勝戦。各選手が濡れた路面に手こずる中、森且行はスタートから勝負に出た。1周目でトップに立つと、そのまま後続を千切って独走。トップでゴールを駆け抜けた。4年半ぶり、2度目のGI優勝だった。
「久々の優勝だったんで、熱いものがこみあげてきました。でも、涙は流しませんでした。それはSG(スーパーグレード)を獲るまでとっておかなくちゃいけないから」
オートレーサーになって17年目になる。近づいては離れていくSG制覇という目標を追い、飽くなき挑戦を続ける姿には、もはや“元アイドル”の残像はない。
森が芸能界を去り、子供の頃からの夢だったオートレース界の門を叩くことを決意したのは、アイドルとして人気絶頂の22歳のときだった。すべてを捨て、新しい世界に飛びこむことに恐怖は感じなかったという。
「絶対的な自信があったんです。入る前は3年でSGを獲れると思ってましたから」
ところが、選手養成所に入って2カ月目、早くも試練が訪れた。練習走行中に転倒しフェンスに激突。左股関節を脱臼骨折するという重傷を負ってしまったのだ。同期たちが順調にステップアップしていくのを見ながら、森は地道なリハビリに耐えた。
その甲斐あって、デビュー戦ではいきなり勝利。さらに、翌年は新人王決定戦で優勝。そのまま快進撃が続くかと思いきや、ランクが上がり、ハンデがなくなると、急に勝てなくなった。
「最初の頃は、乗り方だけで勝てると考えていたんです。エンジンとタイヤさえついていれば、あとは自分の腕で何とかしてやると。でも、甘かった。それだけじゃだめなんだと気づいて、エンジンの勉強を始めました」
専属のメカニックがいる他のモータースポーツと違い、選手自らマシンを整備しなければいけないのがオートレースの難しいところである。
「でも、それが楽しいんです。機械いじりはもともと好きだし、自分で作ったエンジンに、自分で乗って勝つのは最高ですよ。すべてが自分に返ってくる。それがオートレースの醍醐味なんです」
エンジンの整備を極めるため、専門書を読みあさり、ひたすら“音”に耳を澄ませた。微妙なエンジン音の違いを聴き分けられるかどうかが、チューニングの鍵を握るからだ。
自分なりの整備技術が確立されるにつれ、森の走りにはキレが増していった。そして、ランクトップ10が見えてきた2008年、再び怪我が森を襲う。腰のヘルニアだった。手術を受け、またもやゼロからのスタートを余儀なくされた。
「選手としてはもう無理なのかな」
弱気がのぞくこともあったが、ひたすらトレーニングに打ち込んだ。そして復帰するや、'09年の川口開設記念グランプリで、ついにGI初優勝を成し遂げるのである。
「俺にはできるんだ!」
自信は甦った。あとはSGを残すのみ──。ところが、以来4年半、足踏みが続いてしまうのである。原因はマシンの規定変更だった。
「自分の調子が上がってくると、必ず何かが起こるんです(苦笑)。タイヤが変わったことで自分の走りができなくなってしまったし、エンジンも『完全に分かったな』と思った頃に、マフラーにサイレンサーが付けられて、音がまったく変わってしまった。2年前にはフレームも統一仕様に変わりました。そうした変更のたびに、 感覚がずれて、ゼロからやり直すことになってしまったんです」
それでも、森は腐ることなく、こつこつとマシンの整備に励んだ。最近は、エンジンのパワーの出方をチューニングすることでタイヤの滑りをコントロールする技法に磨きをかけてきた。
そうした努力の結晶が今回のGI優勝だったのである。
「まだ完璧ではないけど、セッティングはつかめてきました。タイヤさえ食いついてくれれば、誰よりも速く走れる自信はあります」
怪我や規定変更によるどん底を経験するたびに、森は確実に強くなってきた。
「厳しいこともあるけど、僕はどこかでゼロから這い上がる挑戦を楽しんでいるのかもしれません」
ゼロからの挑戦──そんな森の精神に、日本上陸30周年のスポーツブランドKappaも共感。ブランドアンバサダーとして彼を迎えた。
心強いサポートも得ながら、いま森の目は一点だけを見つめている。
「お互い日本一になろう」
17年前、芸能界を引退するときに仲間と交わした約束も残っている。
めざすはSG、中でも日本選手権を獲り、日本一の証しを立てることだ。機は熟した。森の実り多き秋はすぐそこに来ている。 」
“ 「お互い日本一になろう」 17年前、芸能界を引退するときに仲間と交わした約束も残っている。”
最後に書かれたこの一文。
森くんの歩んできた、厳しく長い道のりを思うとき、今、この時、最高に輝いている。
ひとりの男として、選手として、尊敬に値する精神力の強さをあらわすキーワードとして、象徴されるように思う。
芸能とはまた違う、「結果」がすべての世界で
彼が今、見据えている目標
息をひそめて 祈りの合わせる両手がより強くなる
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