Blog of SAKATE

“燐光群”主宰・坂手洋二が150字ブログを始めました。

オリンピックと「いちえふ」で食べる「弁当」

2013-10-06 | Weblog
「原発事故による『風評被害』に遭っている福島県の農業を支援しよう」と、東京都は今年の国民体育大会とそれに続く全国障害者スポーツ大会に参加する選手団やスタッフに配る弁当に、福島産の米を使う取り組みを始めているという。
二つの大会では、合わせて2万8000人の選手や役員が参加。これらのコメは、すべて放射性検査によって安全性が確認されているということだ。
その弁当を拒否する選手・関係者がいたという話は、聞いていない。
東京都は当然、これを2020年のオリンピックでも、やれると考えているのかもしれない。しかし、もしも拒否する選手がいた場合は、どうするのだろう。
震災以後、被災地で、学校給食を食べさせないようにという親の判断で自宅から弁当を持っていった子供が、いじめに遭い登校拒否するようになった、というような話はよく聞いた。
移転できる家庭はいいけれど、そうでなければ忍耐するしかない。

東京が2020年オリンピック開催地に決まったことで、世界の目は厳しくなるだろうと思った。それは甘い考えだという人もいた。
しかし今、オリンピックに向けてというよりもっと前に、日本の汚染放置に対する非難、日本からの食品輸入の拒否は、もっと広範囲に行われるだろうと思う。

「コミック・モーニング」のMANGA OPEN大賞の竜田一人『いちえふ 福島台一原子力発電所案内記』は、じっさいに東電福一原発で収束に向かって働いていた作者によるものだという。現地の労働のディティールが視覚的にもわかりやすく描かれている。物語らしい物語はない。
作中には「今回の事故について自分なりに調べてみれば一部のマスコミや『市民団体』が騒ぐほどのものではないとわかったし」とあるし、他にもメディアを批判する言葉が多々ある。作者の受賞の言葉には「読者の皆さまには、扇情的な報道に踊らされることなく、冷静に見守っていただけるよう願っております」とある。
しかし「この世の地獄みたいに言われるこの1Fで毎日こうしてのんびりメシ食って昼寝なんかしている」などと書けば書くほど、それは当たり前だろうと思うところまでをも強調することで、逆に不穏な感じもしてくる。
労働の厳しさ、宿泊費も弁当代も搾取される報酬の少なさについても描かれているが、それを不満混じりで愚痴りながらも、そういうものとして現場が受け入れていることじたいが、淡々と描かれている。引き続き働く勤務者が契約する会社じたいを「ランクアップ」することで、ガス抜きがされているらしいことは、なるほどと思った。
ある年代以上の人は、それにしても「組合」というものが機能していない社会だなと改めて思うわけだろうが、より若い世代になれば、「世の中はそういうもの」としてただ受け入れるしかなくなってきているというわけだろうか。

それにしても今日は、久しぶりにテレビのニュースを見て、うまく言えないが、悪いオーラみたいなものを浴びた感じである。
何か結論めいたことを記す気になれない。
コメント
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