最近、捕虜収容所ものの映画を幾つか再見したりしているのだが、やはり『戦場に掛ける橋』はよくできている。突っ込みたいところも少しはあるが。原題は『The Bridge on The River Kwai 』。テーマ曲は「クワイ川マーチ」として知られている。しかし日本での題名には固有名詞である川の名ではなく「戦場」が選ばれている。考えてみれば、そうした「一般化」が「日本流」なのかもしれない。「戦争」とか「平和」とか大文字で記して、中身が伴わないということだ。具体的に、誰と誰が、いつ、どこで、何を巡って闘ったのか、結果はどうだったのか。それは今、どう現在に繋がっているのか。そうした事象を日本では「見ない」ようにしている。「戦争とはこういうものだ」と、一つ一つ違うはずの「戦争」を一般化して、固有の具体を忘れてゆくのだ。『戦場に掛ける橋』に於いて、クワイ川に架かるその橋をなぜ日本という国が軍隊、捕虜によってその時その地に架けなければならなかったのかという背景を見ず、すべては決着のついた「過去」であるように誤解して、観客の立場としては映画を進行する主格である米英側に身を置いて、物語のうわべの筋だけを追って、当事者としての「自分」のことはかえりみようとしない。「すべては戦争のせいだ」、「戦争のむなしさ」にまとめて他人事のように距離を置く。このあたりがヨーロッパで「歴史の当事者」であることを自覚させられ続けてきたドイツとの違いであろうし、「過去との対面」によって鍛えられてきていない脆弱さが現在のこの国を随所で蝕んでいるのだということを、あらためて思う。……本来日本全体が背負うべき歴史と戦争(安保)の固有性を背負わされた「沖縄」に「当事者性」を学ばなければならないヤマト、という構図は、まったく改善されていない。安倍総理は来月訪米してのオバマ会談に臨む前、今週末に就任後初の沖縄訪問、仲井真知事と会談予定という。今さら「米軍普天間基地の移設問題などを巡って意見を交わす」と言われても、沖縄の民意はとうの昔に明らか。……矢内原美邦によるムーブメント指導から、稽古始まる。四十人が出る劇。いろいろ決定すべきこと山積だが、急がば回れ。人を見て考えるべきところ多々あり。四十人が一度に動いてもとりあえず大丈夫な広い稽古場。なにしろ上演する劇場の「舞台+客席」の倍の面積がある。この先は広い稽古場ばかりではない。どうなることやらだが、まあ、面白いじゃないか。そういうことがやりたいのだ。……先週後半からは体調がすぐれず、おおむね回復と思ったが油断大敵と知る。まだ本調子でないのに、無理はしないといけない。蒲団に寝るのは二日に一度。前夜にいきなり何個かぎりぎりの用事が舞い込み、頭を抱える。どうしてもどこかで人に迷惑をかけてしまうが、できる限りのことはする。……電車内で私を見ていぶかしい顔をする人がいたので「?」と思ったが、それは私のマスクの色が黒いせいだと気づく。しかも平仮名の「へ」か、上下ひっくり返すとチェックマークみたいな白抜きの字が描かれている。見るからに怪しいのだろうが、年明け早々に矢内原美邦にもらったマスクなので、意図はわからないがその「作戦」に従ってみるのみだ。……『カウラの班長会議』メインイラスト。大勢が出る芝居であることを示してもいる。といってもこの絵でさえたったの七人だ。
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