バスで山道を走ってると車窓から巨大なラブホが見える……あれは何という愛の城だろう? あの中でどれほど愛が営まれてることだろう? と想像したのは、ぼくの思い過ごしで、そんな愛はなかった。ハウステンボスだった。
夜道をふらふら歩いてると煌々とライトアップされたラブホが見える……あれは何という愛の城だろう? あの中でどれほど愛が営まれてることだろう? と想像したのは、ぼくの思い過ごしで、やっぱり愛はなかった。本物のカトリック教会だった。
よしんば楽器ケースの中に隠れようともプライベートジェットをチャーターする資産がなければ貨物便で運ばれるしか手立てはないか……とプランを立てかけたけど逃亡の必要なかった。
こんな時代どこにも出口などないことは承知していても臆面もなく出口を指し示されると何かありそうに思えるのは危険な罠かもしれないと、用心したって何もなかった。
ネットが発達した社会では信頼できる情報が企業でも国家でもなく少数の個人から発信されるのみで詭弁と嘘が拡散するありさまを見るとテレパシー能力を多くの人とシェアしてもフェイクが横行するだけだから、こんなテレパシーなかったことにしておこう。
東京スカイツリーは展望台まで高速で上がるエレベーターに窓がなくて高度の表示だけ見せられるのがトリックの始まりで、あれは上ではなく下へ移動しながら気圧を下げる装置で錯覚を起こさせ、展望台からの眺めはすべて録画映像が時刻に応じて映されてることを名探偵サカタは1秒で見抜いたけど、ぼくが探偵であることは秘密なので一般のお客さんに真実を告げることはなかった。
おもしろいことを考えたり作ったりするのは組織じゃなくて結局のところ個人だと思うから組織のしばりが比較的ゆるそうな環境ばかり選んできたのに思いがけずキツイ目に遭う期間もそりゃ年単位でありました……人生の修行とみなし辛抱したけど残りわずかになってみれば何がいまさら修行だよとしか感じないから、反骨精神むきだしの余生をはげしく生きようと考えるころには、とっくにそんな勢いなかった。(おとなしく無難にやりすごす根性すっかり染みついた)
パンがなければ麺を食べればいいじゃない! と前世においてロココ時代のおフランスに生まれたわたくしの魂は……現代の日本にどうも合わなくて生きづらいと感じておりましたのですけれど、もうお気づきの紳士淑女もいらっしゃる通り、そんな魂なかった。
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