女は慣用句があやふやで言葉をにごした。
「気のおけ……人たちだからさ」
男はそれを聞きまちがえて、こう言った。
「機能系? 機能系の人たちって、どんな人たち?」
女はすっかり言うはめになった。
「機能系じゃなくて気のおける人たちだよ」
男は女の過ちに気づかず話を合わせた。
「そういうことか~」
しかし、女は男にこう言うべきだったのだ。
「気のおけない人たちだからさ」
機能系でも、気のおける人たちでもなかった。
新生活スタートの季節、就活生の男と女は
ラーメンがのびるのも構わず、探り探り話す
気のおける二人だった。