かつ銀

日付が変わって、１０月１日ということは９月末で閉店のかつ銀が幕を下ろし、もう存在しないわけだ。
１日と２日は土日だから何となく、週明けの昼かつ銀に行けばまだ間に合いそうな気がしなくもないが、
思い過ごしにちがいない。よくわかっているんだ。


閉店のお知らせ

お盆の前だったかクロワッサンの公式ツイッター（@croissan_mag）で、おしの（身内につき敬称略）が
編集部よもやま話として近所のかつ銀が名店であること、そして９月で閉店することをツイートしてた。
なんですと？　特製かつ丼と称する、ラードの旨み立ち上るかつ煮定食のあの店が！


36年間ってことは1980年創業か

会社に入ったばかりのころ、写真とコメントつき社員名鑑『ろまん別冊』（'94年版）で女性編集者某が
「１人暮らしを始めたら１２キロ太っていた。フグロケハンでふくれたのでしょうか。「かつ銀」断ちして
ます。」と書いているのを読んで、フグロケハンと「かつ銀」という言葉を覚えた。


ガラケーで撮影

あいにくフグロケハンの機会はめぐってこなかったが、かつ銀の特製かつ丼はすぐに食べた。何度も
食べた。解像度の低い、昔のガラケーで撮った写真がこうして手元に残っている。


全体像を載せておこう

かきフライも立派でおいしいから、晩秋から冬場にかけてよく足を運んだものだけれど、今シーズンは
一体全体どこでかきフライ食べたらよいのだろう？　トマトサラダも好きだったし、いつかステーキ丼も
食べたかったのに機会を失ってしまった。


ふんぱつしたロースかつ定食

９月５日は月曜だった。遅い昼ごはんを食べに、お盆の前から気になっていたかつ銀へ。１３時半にも
かかわらず、閉店の噂を聞いてどこからともなく集まったお客さんたちで混んでいた。独特の雰囲気！
これっきり会えない気がして、いつもの特製かつ丼ではなく、2500円ぐらいする上等なロースかつ定食
ふんぱつしちゃった。


お口直しのシソ茶（だったかな）

そのとき、名残惜しみ需要で混雑してる店内で声を荒げる客がいた。地獄耳をフル回転させて聞くと、
おつまみ頼もうとして混んでるから断られ、「もうすぐ店なくなるっていうから遠くから来たんだよ！」
「３０年前から通ってるんだよ！」って、からんでる。こなくていいよ。スマホを取り出してどこかへ通報
してるので、千里眼をフル回転させて液晶の表示を見ると証券会社の山田にかけてる。証券マンも、
顧客のあらゆるクレームをはいはいと処理して大変だな。


そして最終営業日

最後に特製かつ丼を食べて、かつ銀にさよならしようと訪れてみると、「只今、混雑のため、お料理に、
時間がかかります。」という、絞り出すような悲鳴に加えて「一時間以上」の貼り紙が。かつ銀のご夫婦、
寄る年波で営業を続けられないから閉店することにしたら、どっと混雑してしまって大変な日々だったに
ちがいない。よくわかっているんだ。ゆっくりしてください。さよなら。

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