大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

RE・かの世界この世界:065『装甲列車の進入』

2023-04-11 06:33:44 | 時かける少女

RE・

65『装甲列車の進入』テル  

 

 

 鉄橋上の制限速度は時速15キロと自転車並みだ。

 

 文字通り歩道を走る自転車と並走して……いや、抜かされてしまった(^_^;)。

「なんで停止するんだ!」

 車長ハッチから身を乗り出していたヒルデが潜り込みながら苦情を言う。

「停止信号です」

「信号?」

「ヒルデねえちゃん、車長なんだから信号くらい見とけよ」

 ロキがえらそうに言って、ポチが笑うように身を震わせる。

「そんな、橋の上に信号なんか……」

 再びハッチから身を乗り出して沈黙、トラス上部にある赤信号に気づいた。

「なんで信号なんか付いてるんだ!?」

 ご機嫌斜めのお姫様に、タングリスは操縦手ハッチを開けて答える。

「古い鉄橋なので、橋の土台の間隔で重量制限をやってるんです。1スパン二百メートルで1000トン、四号は自重30トンありますから1スパン30両として900トン、ほかにも鉄道が走っていますから、15両が限界です」

「そ、そうなのか(;'∀')」

 先のスパンも満杯なようで大勢の車両が停止したままだ。

「あいつ、なにか叫んでる……」

 タングリスの呟きで、車内のみんなが五か所のハッチから身を乗り出す。

 二つ前のスパンで、交通整理の下士官がトラスの鉄骨に足を掛け、メガホンで怒鳴っているのだ。

「なんて言ってるんだ?」

「さっぱり分かりません」

 落ち着いた声だがハッチに掛けた指がコツコツとハッチを叩いている、タングリスもいら立っているんだろう。

 ケイトはヒルデにキャンディーを勧めている、ここはお姫さまをなだめるところだと心得ているのだろう。

 ポチを肩につかまらせて、ボーーっとしていたロキだが、驚いたように車内に潜る。無線連絡が入ったようだ。

「鉄橋の守備隊長から連絡――鉄橋上の車両は速やかに渡って、新規の鉄橋通行は遮断する――ってさ」

 ようするに、鉄橋の上を空にしたいらしい。

 二三分で車列が動き始めた。

 橋の南北は渡橋を禁止された車両が溜まっている。我々もグズグズしていたら渡れなくなったところだ。

 鉄橋を渡り終えると、並行している鉄道のレールがカタンカタンと鳴りだした。遅れて重々しくも調子の外れた機関音がしてきた。

 ゴトゴトゴットン ゴットンゴトゴト ガクンガタガタ ゴトゴトガッタン……

 それは、いかつい装甲列車だ。

 全ての車両が装甲で鎧われて、重戦車から流用したような砲塔が載っている。

 なるほど、あの一編成の装甲列車を通すだけで鉄橋の積載荷重は一杯だろう。

「あれを通していいのか……」

 タングリスが眉を寄せる。

 彼女の心配は装甲列車の重さだけではなかった、後ろ二両が手厳しくやられて、最後尾の機関車が懸命に押しているのだ。

 あたりまえなら後ろの二両は破棄されるんだろうが、それでは最後尾の機関車も外さなければならなくなる。

「あんなもの切り離して線路脇に捨てて来ればいいのに!」

 ガリ!

 ヒルデは口に入れたばかりのキャンディーを噛み砕いた。

 渡り終えた車両が、渡り終えた安心から心配げに。足止めを食った車両からはいら立った目で見られながら、装甲列車は橋上に進入する。

 ゴットンゴトゴト! ガックンガタガタ! ゴトゴトガッタンガッタン! ガッタン!……

 最後尾が中央に差し掛かったあたりで、後部の車両から煙が上がった。

 まずい!

 思った瞬間。

 
 ドッカーーーン!!

 
 後部の車両が大爆発して、完全に停止してしまった。

 

☆ ステータス

 HP:2500 MP:1200 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・35 マップ:4 金の針:20 所持金:500ギル(リポ払い残高80000ギル)
 装備:剣士の装備レベル10(トールソード) 弓兵の装備レベル10(トールボウ)
 憶えたオーバードライブ:ブロンズヒール(ケイト) ブロンズスプラッシュ(テル)

 

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

 テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

 


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