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ロイス ジャズ タンノイ

タンノイによるホイジンガ的ジャズの考察でございます。

マランツ#7【2】

2006年07月08日 | タンノイのお話

ジャズにとって、どうして柔らかな音ではいけないのか、クラシックにとって、なぜ硬い音ではマズいのか。
シンバルの硬さと、羊の腸と馬の尻尾の構成は、タンノイにヘゲモニーを預けた人の迎えるジレンマと快感がある。
あるとき九州のKU氏から電話があった。
「先方と話はついていますので、そちらで『マランツ#7』を受け取る詰めをお願いします」
KU氏によれば、もう一台マランツ#7を聴いた方が良いという。その意味するところが理解できず、面倒にさえ思ったが、ともかく相手に電話を入れたのである。電話の相手はボソボソと静かに話す人だった。
「このことは誰にも言っていないのですが...このマランツ#7は日本で五本の指に入る評論家の使っていたものです」御自分は、オーディオはくわしくない、生前の縁で所有し、いま手放す仕儀を心苦しく思っている様子に、その名を聞くこともためらわれた。
届けられたマランツ#7の包みを開けると、ケースのウオールナットの渋い色に特徴があった。さまざまのオーディオ雑誌をひっくり返して、五本の指と目される方のマランツ#7の写真をかたはしからしらべていった。その人の名はすぐわかった。
その音は、これまでのマランツ#7とまったく対称的な、しっとりと深みのある落ち着いた音色に特徴があって、クラシックには吸い込まれるような音楽が聴こえるが、ジャズの標榜するスイング感がいかにも英国的で、複雑だ。
深夜に調整の終わったこのとき、あまりの深淵な音に驚いて、寝ている秘書を無理矢理起こしたほど、度を失っていたのがオーディオのはた迷惑なところだが、KU氏にメールを入れると、すぐにでも飛行機で北上空港に飛んできそうな反応であったので「5時間経ったら、それほどの音ではありません」と、わけのわからないことを申し上げ、思いとどまっていただいた。
いまにして思い返しても、いったいあの音は何であったのか、マニアを笑う一瞬の降臨であったのかもしれない。
五味康佑氏が、この評論家宅に訪れてJBLサウンドを聴いたときの印象を書かれているのを読むと、まずJBLに対し辛口の方がどのような展開になるのか緊張をおぼえるが、意外や好ましく思われた表現に安堵する。
このマランツ#7でJBLを鳴らせば、そのように鳴ることが頷ける。目の前にある二台は、どちらもマランツ#7であるけれど個体差は歴然で、そこにKU氏の深さがあった。


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