ジョン・F・ケネディが大統領になった1961年、6月のニューヨークは、ちょうど盛岡の緯度にあり湿度も上がり暖かであった。
ライブハウスのヴィレッジ・ヴァンガードでエヴァンス連続ライブが行われた最終日、記念すべき25日の日曜日に居合わせドリンクを飲んだり笑ったりした人々には、たまさかワッハッハの笑い声までリバーサイド・レコードに録音されて世界中で楽しまれ、おそらく永遠に鑑賞されることになるのであろう。
ラファロの演奏の目立ったナンバーの『サンデイ・アット・ヴィレッジ・ヴァンガード』と何度か聴き比べると、エヴァンスの曲の流れでカッティングされたこの『ワルツ・フォー・デビィ』の選曲に、プロデューサー、オリン・キープニュース氏の慧眼を感ずる。
『ワルツ・フォー・デビィ』というLPは、A面B面それぞれ三曲の組み合わせが、足すも引くもいらない五言絶句になっているのではないか。
春眠 暁を覚えず 処処 啼鳥を聞く
非日常の仙境を音の流れる、この盤の最小構成はおもしろい。
ヴィレッジ・ヴァンガードの日曜日は、ほかにも繰り返し演奏された各バージョンのあることは誰も知っているが、すべてをコレクションすることも可能であり、CD盤のほうが数曲多いと慶祝に思うもよし。
さて、この二月に寒さをものともせず山形市からの途中Royceに立ち寄った青年は、ヴィレッジ・ヴァンガード連続ライブの余韻を、冷たいコンクリート壁を背に醸しているタンノイを見据えながら、レコード盤とジャケットをためつすがめつ手から離さず、盤まで引き出してしばらく居たが、
「これはオリジナルですか」
エヴァンス/ラファロ/ポール・モチアンLP録音をタンノイで聴いて、これまでとイメージが違ったらしく、むかし盛岡の学校にかよっていたころ周囲のジャズ喫茶にかよってめざめ、
「おそらく一生、自分の中心にジャズは在るのでは」
などと、とんでもないことをあっさり言っている。
まえにも話したが、あるとき訪問したお宅のソファのわきに「五味康祐-西方の音」が落ちていて、テーブルの上に『ワルツ・フォー・デビィ』の青盤があった。
小鉄MONOカッティング盤をそこで初めて聴いて思ったが、装置の違いなのかおそるべき音がして、さらにおなじUS青盤は五万両するという。
『ワルツ・フォー・デビィ』もまだまだ新しい局面がありそうだ。
むかしROYCEに遊びに来た御仁が申されるには、以前ニューヨークに行ったときのこと、気を利かせた現地の友人がヴァンガードのライヴに連れていってくださったそうであるが、
「ジャズに関心がなかったので、チョッキを着た彼のこともピンとこなかった」
どうやらエヴァンスのライブも、ほかに関心が向いていたのでは、しかたがない。
ライブハウスのヴィレッジ・ヴァンガードでエヴァンス連続ライブが行われた最終日、記念すべき25日の日曜日に居合わせドリンクを飲んだり笑ったりした人々には、たまさかワッハッハの笑い声までリバーサイド・レコードに録音されて世界中で楽しまれ、おそらく永遠に鑑賞されることになるのであろう。
ラファロの演奏の目立ったナンバーの『サンデイ・アット・ヴィレッジ・ヴァンガード』と何度か聴き比べると、エヴァンスの曲の流れでカッティングされたこの『ワルツ・フォー・デビィ』の選曲に、プロデューサー、オリン・キープニュース氏の慧眼を感ずる。
『ワルツ・フォー・デビィ』というLPは、A面B面それぞれ三曲の組み合わせが、足すも引くもいらない五言絶句になっているのではないか。
春眠 暁を覚えず 処処 啼鳥を聞く
非日常の仙境を音の流れる、この盤の最小構成はおもしろい。
ヴィレッジ・ヴァンガードの日曜日は、ほかにも繰り返し演奏された各バージョンのあることは誰も知っているが、すべてをコレクションすることも可能であり、CD盤のほうが数曲多いと慶祝に思うもよし。
さて、この二月に寒さをものともせず山形市からの途中Royceに立ち寄った青年は、ヴィレッジ・ヴァンガード連続ライブの余韻を、冷たいコンクリート壁を背に醸しているタンノイを見据えながら、レコード盤とジャケットをためつすがめつ手から離さず、盤まで引き出してしばらく居たが、
「これはオリジナルですか」
エヴァンス/ラファロ/ポール・モチアンLP録音をタンノイで聴いて、これまでとイメージが違ったらしく、むかし盛岡の学校にかよっていたころ周囲のジャズ喫茶にかよってめざめ、
「おそらく一生、自分の中心にジャズは在るのでは」
などと、とんでもないことをあっさり言っている。
まえにも話したが、あるとき訪問したお宅のソファのわきに「五味康祐-西方の音」が落ちていて、テーブルの上に『ワルツ・フォー・デビィ』の青盤があった。
小鉄MONOカッティング盤をそこで初めて聴いて思ったが、装置の違いなのかおそるべき音がして、さらにおなじUS青盤は五万両するという。
『ワルツ・フォー・デビィ』もまだまだ新しい局面がありそうだ。
むかしROYCEに遊びに来た御仁が申されるには、以前ニューヨークに行ったときのこと、気を利かせた現地の友人がヴァンガードのライヴに連れていってくださったそうであるが、
「ジャズに関心がなかったので、チョッキを着た彼のこともピンとこなかった」
どうやらエヴァンスのライブも、ほかに関心が向いていたのでは、しかたがない。