タンノイヨークを『ラックスSQ-38FD』で鳴らしたことがあって、クラシック音楽ならそこでやめておけばよかったと後々思う円熟の世界が聴こえた。
マランツ#7のパネルにそっくりの飽きの来ないデザインとあいまって、プリとメインのワンパッケージされた芸術品である。
ところが目黒に、ヨークをマッキントッシュで鳴らすジャズ喫茶があり、なるほどねえという圧倒的にグラマラスな音がするのを聴いた。
一旦踏み出せば、パイオニアのM-4(A級トランジスタ)やマッキンC-26(トランジスタ)などを御迎えして、良いけれどなにかが足りないと思わせたのは38FDの音の記憶である。
ウエスギアンプとオースチンTVAによって、やっと38FDを越える音楽がきこえて、そんなことは翌日に気がついてもよかったのに、何年もかかったのがわからない。
聴くところの音楽がいろいろでLPの音質もさまざまで、一瀉千里の見通しがきかなかったのである。
ある深夜、アパートの廊下を引きずる不気味な音に驚いて首を突き出すと、それはチバ君だった。
「ちょっとこれから、星を見るから」と、なにやら大きな箱の一方を両手で曳いて言うのでついていった。
階段をゴトンゴトンと落とし、碑文谷の月夜の路上に天体望遠鏡を組み上げると、土星の輪というものを見た。
そのときはじめて、チバ君の何かが見えた気がした。
「一緒に食べよう」と、アンパンを買って来たりするおもしろい人だった。
ドーナツ盤の『直立猿人』を聴いたのはその頃で、ミンガスを、何か言ってみたかったが言葉が出なかった。
マランツ#7のパネルにそっくりの飽きの来ないデザインとあいまって、プリとメインのワンパッケージされた芸術品である。
ところが目黒に、ヨークをマッキントッシュで鳴らすジャズ喫茶があり、なるほどねえという圧倒的にグラマラスな音がするのを聴いた。
一旦踏み出せば、パイオニアのM-4(A級トランジスタ)やマッキンC-26(トランジスタ)などを御迎えして、良いけれどなにかが足りないと思わせたのは38FDの音の記憶である。
ウエスギアンプとオースチンTVAによって、やっと38FDを越える音楽がきこえて、そんなことは翌日に気がついてもよかったのに、何年もかかったのがわからない。
聴くところの音楽がいろいろでLPの音質もさまざまで、一瀉千里の見通しがきかなかったのである。
ある深夜、アパートの廊下を引きずる不気味な音に驚いて首を突き出すと、それはチバ君だった。
「ちょっとこれから、星を見るから」と、なにやら大きな箱の一方を両手で曳いて言うのでついていった。
階段をゴトンゴトンと落とし、碑文谷の月夜の路上に天体望遠鏡を組み上げると、土星の輪というものを見た。
そのときはじめて、チバ君の何かが見えた気がした。
「一緒に食べよう」と、アンパンを買って来たりするおもしろい人だった。
ドーナツ盤の『直立猿人』を聴いたのはその頃で、ミンガスを、何か言ってみたかったが言葉が出なかった。