ロイス ジャズ タンノイ

タンノイによるホイジンガ的ジャズの考察でございます。

年の暮れ

2009年12月31日 | 徒然の記
1990年末、日本の土地の総評価額は2350兆円であった。
現在、1150兆円である。
1メートル四方のミニチュアの箱庭が、だいぶ下落してそこにある。
見ると苔もはえて、眺めるぶんにはけっこうだ。
蜘蛛は4億5千年前に出現して、現在3万5千種識別されたらしいが、そのうち9種がこの庭に住んでいる。
年末に聴くジャズは何がよいか......。

よいお年を、御迎えください。




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ヨークとロイヤル

2009年12月30日 | タンノイのお話
ことし、364日すぎて、しばらくタンノイ・ヨークを鳴らし続けた結果、ユニットも役目を心得てきたか、たまにロイヤルのような音にも聴こえる。
ヨーク・モニター・ゴールドの38センチオリジナルから出る音は、どうも隣のロイヤルのバックロードの中を迂回して、どのユニットが鳴っているのかわからないところが怪しい。
タンノイを支える3つの柱は、電源と管球とソースであると簡単に考えていたが、最近の説は、セルフとアチーブメントとインティマシーである。
まったくもって、空気の振動はなぞであり、当方以上に、お見えになるお客は不思議に思っているようだ。
このうえさらに、二.三の妙手を夢想して、いよいよウエストコーストの風がコンクリートの中で舞う絶景のタンノイ・サウンドが?





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面影

2009年12月28日 | 巡礼者の記帳
高校の数学の時間、つかつかと教室に入ってきた教師は、
チョークを握って黒板にいきなり書いた。

まだ上げそめし前髪の林檎のもとにみえしとき
前にさしたる花櫛の花ある君と思いけり

「この作者がわかるか?」と、ご指名である。
教師が一度も見せたことのない縦文字スイングであるが
数学でも青春を扱うのか七大難問に、戦後生まれのわれわれは、息を呑んだ。
フジムラじゃないの
彼の授業を思い返すとき、数式の記憶が出てこない。

以前ジャズを聴いた客が、『プラターズ』の78回転レコードを持って現れたが
ふと、個性的なあの教師の面影が浮かんだ。

ところで、トーレンスの78回転にSPUをのせると、しっかり音は出ているが、見たこともない高速回転でそら恐ろしくなる。まんいち針が飛んだら8万両が無事には済まないか。
そこで、途中で針を上げると当方のLPレコードに取り替えたが、トニー・ウイリアムスもハーバート・リードも個性的で、それに代わる人がいまだ現れていない。
壁際のお客が、一部始終を観察していて、言った。
「この代えたLPを、ちゃんと前から持っていたわけですか?」






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ホームズの時代から

2009年12月27日 | 巡礼者の記帳
シャーロック・ホームスがちょうどべーカー街に移り住んだ1880年代、ドイツ人、ジークフリート・ベットマンがロンドンに造った貿易会社がトライアンフの名で自転車をリリースした。
いま海を渡って眼の前に停まっているオートバイもまた、歴史の荒波を乗り越えてハイウエイを走ってきた『トライアンフ』である。
トライアンフに乗っているということは、歴史に乗っているということでもあるが、このオートバイの御仁は、「最近、ジョーダンワッツのフラゴンという壷型スピーカーを手にいれ、テレフンケンのめずらしい真空管を工作する回路をあれこれ研究している」と、まったく表情を変えずに言っている。






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部門優勝の元ギャンブラー

2009年12月26日 | 巡礼者の記帳
秋田から遠征したお客のキャンピング・カーの写真を見ながら、パーカーのラウンド・ミッドナイトを聴く。
武芸者、粋人、作家、占い師、歌人、農業人、お大尽、コンサルタント、すべてはタンノイのジャズを背景にした一服の絵である。
ところで最近、比較的あしげく通われたお客について、6回目になったこのたびその全体像らしきものが鮮明になった。
ご本人の言葉によると、趣味はマージャン、競馬、パチンコであり、仙台に生まれ、大学を出て就職したがそこに満足できずアルバイト生活をしながらしばらく心の赴くままに生きる。
マクドナルドのアルバイトを極め、店長になる。同店の地方大会でグループ優勝し全国大会で個人優勝する。ちなみにこの競技種目は、接客や調理などの部門があるらしい。
ジャズ喫茶でいうとたとえば、レコードと針の扱い、お客に対する選曲の妙、器機の管理、音像の完成度、集客における男女比、珈琲味の完成度、などがこれにあたるのである。
この御仁は、パチンコ店にも就職し胴元サイドになるが、現在は広告会社に働き、結婚されて家庭一途にあるという山水画のような景色を、タンノイのジャズを聴きながらしばらく堪能させていただいた。





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クリスマス・イヴの客

2009年12月24日 | 亀甲占い
店が寒いので断ろうとする当方の気配を遮るように、電話のむこうの女性は、「ぜひ!」と言っている。
クリスマス・イヴに一人で現れて、ピンク色のブーツの紐をほどくと、名古屋近郊のふるさとのことを、海と山に近い雪の降るところで寒さには慣れているそうである。
タンノイ・スピーカーの並ぶ部屋の景色を喜んでしばらく耳を傾けたN嬢であるが、ジャズにそうとう溺れているのかそれとも、いっとき流行った亀甲占いであろうか?
「ジャズ・ピアノを少々やります」とあくまで控えめにつぶやくと、自分の始まりは世良ユズルとラムゼイ・ルイスに惹かれ、喫茶『いーぐる』も『キャンディ』も『メグ』も知っており、鳴っているレコードのジャケットを裏返しワルター・ノリスの名前を見ると、あぁ一緒にやったことがあるとつぶやいた。
Monteroseの『STRAiGHT AHEAD』をすごい良い音だと喜んでいたが、どうにも不思議な音がするらしく、パーカーと、マイルスと、ロリンズとコルトレーンを聴きたいと言っている。
そういうことをめんどうに思った当方は、特別にバックヤードに招いて、好きなものを選ぶようにいうと、ハンプトン・ホースのワニのジャケットをなつかしそうに笑いしばらく何事か思い出していたようだが、彼女はふるさとに帰るとき持っていたレコードを処分したのである。
5杯目の珈琲を注文しようとするN嬢に言った。
――うちは同じ人に二杯以上出さないので、四杯呑んだのはあなたが初めてだが、ところで、現在のあなたに自分の行動を制約しているなにか、が有る?
彼女はいささか真剣な表情になってしばらく考えていたが、もしそういうものがあれば、この時期、ここに一人で居るはずはない、とのお言葉である。
それは、喜ぶべきかそうでないのか、世界の謎であるが。
今回の一人旅は、所用のついでがあったそうで、一関に来ることを友達にいうと周囲は「うらやましい」と言ったらしい。
タンノイで鳴るチャーリー・パーカーを、まったく想像もしなかった別人と言い、ロリンズ、マイルスと聴き進むうち、「いままで知っている音とは違うが、たぶん低音の不安定さの効果がとてもおもしろい」と遊んでいたN嬢は、やがてイヴの夜の街に一歩踏み出しながら言った。
「なにか、キツネにつままれたようです」






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遥かなるパラゴン

2009年12月20日 | 巡礼者の記帳
どうも、と入ってきたお客は東パラゴン氏である。
古川N氏の周到な調整によって変身した其の音のことは風の便りにうかがっていたが、満足感はどぅなのか?
ソファに座ったその姿が、自信に満ちて大きいところが、相当なジャズの音を浴びているとすぐわかった。
あくまでパラゴンに拘って追求している境地を、ご本人の言葉で伺うのも楽しい。
――お宅で現在鳴っている音よりさらに良い音を、たまには思い浮かべることがありますか?
「そういわれてみると、低音がもうちょっと緊まってもよいかと思いますが、部屋の造りと関係しているのかもわかりません」
グワッとタンノイのボリュームをあげておいて、尋ねた。
――お宅でふだん鳴っている音量は、これより大きいですか?
「いや、ここまでは出しません。マイルスのトランペットの音色が、あんなに良いとは、いままで、知りませんでした」
お~........核心にズバリと迫った一言である。
プリが520でパワーが275と伺っていたが、SPUの昇圧はなにか?
「これがよいから、と送られてきたレビンソンですが、今回驚いたのはMITのスピーカー・ケーブルでした」
アメリカ製で3メートル30万両であるというので、当方の必要な10メートルに当てて、すぐその現実感が解った。けしからん。
高価で効果があるなら、だれもプラチナ線のダイヤモンド縒りを試みているはずだが、ケーブル構造は繋いでみないと相性がまったくわからない。
この東パラゴン氏の追求する音を、古川N氏はどのように予測されたのか、どうも東京のかかりつけの納入業者という人に、ひそかにコンタクトしてデスカッションし、これまでとこれからを互いに研究しあった形跡がある。
それも、本人には内緒で。
こうしていろいろな御仁の試された経験が、ひとつの発句となるジャズの道であったが、当方はスタン・ゲッツの『オ・グランジ・アモール』を聴きながら、ひそかに、東山御殿の奥の間に鎮座しているという荘厳なパラゴンを、タンノイのむこうに思い浮かべた。







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赤羽刀

2009年12月13日 | 歴史の革袋
ジャズも庭も、時間とパーツの連結ではないか。
2メートル四方の庭に、石垣の石を横に並べ、針小棒大に眺めている。
コンクリートの三和土をよく見ると、まだ固まっていなかったころに、タマ之助のつけた永遠の忍び足が...ジャズである。
お借りしていた写真を返しながら、SS氏に当方の風景を写真によって開陳すると、
「落ち着くながめですね...」と言ってくださって、SS氏は例のボトルをとりだしてちゅっと呑んだ。
そのときAlain Hatotのテナーが、マルのヨーロッパ遍歴の記憶をブルージーになぞって遠くで鳴っている。
彼の乗ってきた自転車が、ブルーのペンキ一色に吹きつけされて、しゃれている。
サドルがハンカチを冠っているのはなぜか?
「そこにも塗ったら、ズボンが貼りついて..ふっふ」
博物館の『赤羽刀』の話題に、もらっていた招待券をSS氏に渡した。
午後から、京都ナンバーの若者が、福島から二時間ほどかけ訪れた。
川向うへは、これまで五回で空振りなしと、さすがに強運である。





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付近にある豊穣の畑地

2009年12月10日 | 徒然の記
畑地を猫が散歩している。
撮師SS氏の眼は逃さずそれを撮って「どうぞ」と見せてくださったのは先日のことである。
よくみると、それはうちの庭にも出没するタマ之助であった。
そういえば二十代に住んでいた目黒区碑文谷に、当時まだ残っていた畑地の景色もこのようだったが、さかのぼって日本の畑のことが最初に文献に現れるのは、中国の帝室図書館に納められた三国志だろうか。
魏志倭人伝に、次のことがあった。
倭人在帯方東南大海之中依山爲國邑舊百餘國漢時有朝見者今使早譯所通三十國
多竹木叢
林有三千許家差有田地耗田猶不足食亦南北市糴
種禾稻紵麻蠶桑績績出細紵緜
出眞珠玉其山有丹其木有豫樟櫪投檀鳥號楓香其竹篠桃支有薑橘椒荷
不知以爲滋味有雉
其人壽考或百年或八九十年其俗國大人皆四五婦下戸或二三婦婦人不妬
いまとあまり変わっていないような気もするが、日本人で最初の宇宙人になった秋山某氏は、何を思われたか地球にもどるとさっそく畑を耕していた。
この写真の畑から近い、当方の二メートル四方の庭に遠征してきたモグラが、箱庭構成の核心である自作の枯山水の真ん中に、突然顔を出したのは最近のこと。





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仏跳音

2009年12月08日 | タンノイのお話
さきほど現像プリントから戻ってきたTANNOYの写真。
『仏跳墻』という中国料理は、あまりの香りの良さに外を通った和尚さんさえ思わず塀を飛び越えて来たという。
タンノイも、甘い音も辛い音も謂れをそなえ、あるときは破鐘のように、また柳に風のように、駆動アンプによってはあっさりと姿を変えて、地の深くにどこまでもくぐり、宇宙のはるか銀河を飛んでいく、そういう仏跳音をめざすのがおもしろい。
いつも姿形の変わる、きょうのタンノイの音を写真で想像してみる。






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SS氏の蒸気機関車

2009年12月05日 | 徒然の記
いまでは、東北本線に蒸気機関車を見ることは、まれである。
SS氏は、記念運行の現場を逃さず撮った。
正面のプレートが、どうして鮮明なのか考えたが、線路のコーナーに並ぶ撮影集団のフラッシュの照り返しなのか。
機関車は、黒い煙りの背後に白い蒸気を大量に吹き出させて激しく長く汽笛を鳴らし、団十郎のように一世一代の見得を切った一瞬のことである。
この写真をみて、なぜか数学の教師の言葉を思い出す。
「オレは列車通学だったから、放課後に先生が熱心に質問に答えてくれるのはよいが、最終の汽車が通って行くのが教室の窓から見えて、あのときは、あぁぁ...とあせったね。それでおまえたちに、遅くまで教えないことにしている」
ニューヨークなら、『A列車で行こう』だが、日本では、線路は続くよ、どこまでも...というフレーズを、華々しくアレンジするクインシー・ジョーンズの筆さばきを想像してみる。
演奏は、マイルス・クインテットか、ウッディ・ハーマンにお願いするのが良いのでは。










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メイティング・コール

2009年12月02日 | 徒然の記
新幹線の橋脚の下の小さな秋を、散策途中のSS氏はジャズ風に撮った。
――これはすごいネ。良い腕だネ。
と、感心すると
「いやぁ、そんなァ。褒めすぎだから...」といってSS氏は、ポケットからウーロン茶のボトルを出して、ちゅっと飲む。それとも、呑む、かな。
このシーンに聞こえてきそうなジャズは?
ラウンド・ミッドナイトかソウルトレーン(メイティング・コール)がよいのではなかろうか。
モンクのラウンド・ミッドナイトは、『アット・ザ・ブラックホーク』の演奏があったが、ペッパーの『再会』やウエスの『ソリチュード』も品書きの上位にあり、ケニー・ドーハムの『カフェ・ボヘミア』で聞かせる演奏が印象的で、エヴァンスでは『トリオ65』の陰影がよろしい。
一通り聴いたあとで、バイタボックスで聴くとどうかな?と、ふと考える。




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鹿踊り

2009年12月01日 | 歴史の革袋
5才の或る日、海の傍の要塞の庭に面しているガランとした奥座敷にひとり居る。
さきほどから提灯で照らされた夜の庭には、笛や太鼓の囃子にのって鹿子装束の集団が、背中から伸ばした長い白い二本の竿をゆらゆらさせて勇壮に祭りを踊っているのが見える。
一列に揃って腰を折るたび、揺れる長い竿がヒューンと地面を叩いて、それを廊下に仁王立ちの和服姿の当主が、両手を口にメガホンのようにあて、酒で上機嫌の赤い顔をして、大声で掛け声を入れている。
『鹿踊り』の集団は、両手に持ったバチで太鼓を叩きながら、間合いを揃えてクルリと廻ったり飛んだりするたび、庭にいて遠巻きに見ている集団はどよめいているが、座敷の奥に座らされていると、庭の喧噪が遠い世界のように思える。
そこで、一人仁王立ちに鹿踊りに囃子声を掛けている其の家の当主にむけて、背後から声をかけてみた。
「おじさん!」
男は、ぶあついレンズの丸いメガネの顔を一瞬振り向かせると「オウ」と答えて、それからまた一時の無駄も出来ないかのように祭りの方に向いた。
鹿の踊りが庭から退場するまで、おじさん!と掛け声をくりかえしたが、当主はそのたび上機嫌で「おう!」と一瞬だけ振り返っていたのがおもしろい。
やがて、人の居なくなった廊下に出てみると、白い割烹着姿の二人の女性が、庭の外れの生け簀のようなところから、白い腹を見せる大きな魚を抱えて小走りに運んでくるのが見えたが、宴会がはじまったのか。
この鹿踊りは、五葉山をはじめ岩手に生息する山鹿の象徴が、古来の自然に対する畏敬の心として郷土芸能に伝承されたが、背中から伸びる白い二本のササラは角ではなく、御幣のように結界をあらわしているとされ、いまも各地の暦に舞踊っている。
SS氏の撮影による様々の光景は、遠い記憶をよみがえらせてくるが、谷の奥の動物はエゾ鹿なのか。






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