ロイス ジャズ タンノイ

タンノイによるホイジンガ的ジャズの考察でございます。

K氏のマグニフィセント【2】

2006年03月12日 | 訪問記
【承前】
ついにメインスピーカーのある応接間に通されたとき、ピアノと並んで組格子ネットをつけたフロアースピーカーが目に入って来た。堂々たる存在感がすばらしい。K氏のメインスピーカーは「アルテックA7」の応接間タイプと称する「マグニフィセント」である。
K氏もなぜか今様の装置をえらばず、現用アンプも五十年代のラインナップで揃えておられた。自分の事はさておいて何故?と問うてみた。それほど昔の機器は良いのだろうか。自分でも古いものばかり選んでいるので、愚問とは知りつつであるが。
「二階には蓄音機も少し集めていますよ、古いのが良いですね。」写真を見せていただくとピカピカの大きいのが何台も写っている。目を細めていつも穏やかに笑うK氏は静かなる男であるが、どうも情熱は見えないところで沸っている。昔、東京に学生で下宿されておられたころ、二階の部屋に上がろうとしてなんとも良い音が耳についた。なにげなく居間の方に吸い寄せられると、誰も居ない部屋で真空管ラジオが出している音であった。こんな良い音が在るのかと若いK氏はしばらくそこを動けなかった。それが原体験と語る。
アルテック「マグニフィセント」は、ボリュームを上げていくとどんどん焦点が定まって床も震えるような振動すら足の裏に届いた。庭に面したガラスに音がバンバン反射するようなボリュームに上げると室内は飽和したが、スピーカー自身は音が歪むでもなく限界が見えない。わずかに高域のバランスが尖ってくるがこれがジャズには気配に聴こえて、まだまだどこまでも余裕を見せるスケールはやはり劇場用スピーカーだ。応接間にガウンを羽織って中身は筋骨隆々のアルテックに恐れ入ってしまった。ハービーハンコックの「Maiden Voyage」でトニー・ウイリアムスがヒュンヒュンと鳴らすシンバルを想像してみる。またドーハムの「ロータス・ブラッサム」を想像してみる。
「このスピーカーを手放すなんてとんでもないですね」と言おうと言葉が喉まで出かかったが、申し上げたところで、走り出したK氏を止められるものではない。K氏はもっとホーンの滑らかなソノリティを望まれて、心は装備の入れ替えを準備中であった。
うっかり「パトリシアン」の話をすると、すぐに雑誌を見て細目を研究されておられたが、こればかりは鳴らしてみないとたしかなことはわからず、六十一センチのウーハーの附いた「ハートレイ」だって候補になるが、ひょっとして我が憧れの「タンノイ」にも六十一センチウーハーが附く日は来るのだろうか。ぜひ、きてもらいたいものだ。


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