ロイス ジャズ タンノイ

タンノイによるホイジンガ的ジャズの考察でございます。

サキソフォン・コロッサス

2006年10月28日 | 巡礼者の記帳
『SAXOPHONE COLOSSUS』 を聴きながらT氏はポツリと『カキ』が好きだと申される。
カキ?それは当然一番町のグルメ・グルマンの氏であるから、牡蠣をイメージして酢醤油に浸した海の白い珍味を脳裏に浮かべた。
あれはこの季節に、ホテルを抜け出してシャンゼリゼ通りの裏道に迷い込んだ一行は、とある食堂の明かりに誘われ、路端のテーブルで牡蠣とワインを冒険した記憶を浮かべる。氷を敷き詰めたサラに載せた牡蠣を持ってきたのは、トリュフォーのベルナデットに似たその屋の娘で、夜10時を廻っているのに飼い犬と元気にたわむれ跳ね回っていた。
「いやいや違う」とT氏が、両手の指でマルをつくってみせたのは果物の柿のことだった。
レコードの「You don’t know hat love is」に針が移動して、ロリンズのテナーに促されるようにふと庭の柿の木を思い出した。落葉掃きに丹精した甘柿が裏庭にある。毎度野鳥のデザートになっているそれを、こんど見えるとき電話があれば、もいでおきましょう。
T氏はそうとう柿が好きらしく、買った袋がいま車にあるそうだ。ちなみに、氏の食事は玄米で、「白米は、いろいろおかずを必要としてやっかいです。玄米なら、漬物と吸い物があればトリオとして充分な演奏になる」と申される。傾聴しておきましょう。
車に乗るとき「柿を楽しみにしています」と申されて、4号線に消えていった。

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ジャズの遠景

2006年10月22日 | レコードのお話
静かにドアが開いて、登場された紳士。
「おととい所用で上京してきました」
水道橋の歌枕を逍遙されてジャズのLPを求められ、その足で四谷のメッカ『いーぐる』へ。
地下のドアをくぐって、まっすぐ進み、奥の左手のテーブルに着席されたそうである。
マスターは、カウンターのむこうにおられて、壁に埋め込まれた「4343」は快調にジャズを奏でていたのであるが、お話をうかがってそのとき、何年かまえの情景を思い出した。
G氏がテーブルから立ち上がって奥に消えると、やがて鳴り出したクリス・コナー。
「イーグルであのLPが聴けるなんて、ちょっとまったくいまでも想像もできませんね」と同伴の人が申されたので、そういうことを思わせるジャズ喫茶が、四谷の広い交差点を渡って右の地下にあることがなんとなく、良い。

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スウィングル・シンガース45盤

2006年10月21日 | 亀甲占い
ネズミ・ドンドルは、夕暮れに激しく火花を吹き出して回転し、子供たちは悲鳴を上げて逃げ回る。
佐竹藩の方角から、めずらしく友人を伴って現れたJP氏。
「おーっ、ジャズよりもオレはこっちのほうが....と書棚の前に立つと蔵書の背を眺め動かないのは、四角い枠から少しはみだしたジャジーな風貌の人物。ソナス・ファベール社のスピーカーを愛用とのことで、クラシックも聴かれるのであろうか。
ところでこの日、あのY嬢が「こんにちは」と高原でフグを養殖するという事業家と登場し、たまたま居合わせた5人の客がすべて『A型血』とわかるといっきに彼女のジャズ・ボーカルも高揚した。
Y嬢は、これまで4人の男性を連れてきたが、そのくらいにしておきなさい、と言うより先に携帯電話のメモリーバンクが500をだいぶ越えたと、楚々とした笑顔を浮かべ報告があった。
3年前に5つ年下の輩に騙されたのが、いまでもくやしい、と相当ネツを上げた様子が本人には深刻であるぶん、皆で大笑いとなった。
『ジャコ・パストリアス』を気に入るJP氏であるが『スイングル・シンガーズ』が等身大で鳴り出すと「あー!俺の好きな...」と身をよじったのが意外である。人間、良いものは良いのか...。

☆1962年パリで「ダブル・シックス・オブ・パリスLes Double Six」というジャズコーラスのメンバーだったアメリカ生まれのミュージシャン、ウォード・スウィングルが、ジャズのスキャットを用いてバッハの曲を演奏するというアイディアを実現するために結成した8人編成のヴォーカル・グループが、「Les Swingle Singers」
スウィングル・シンガーズは、懲りもせずいろいろ蒐めてみたが、45回転盤を一度聴くと他はまったく聴く気になれないことが解った。圧倒的ボーカル音像を引締めるシンバルの冴え渡ったスイングが聴きどころ。


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縫い針

2006年10月18日 | タンノイのお話
太い3本の縫い針を、眺めて悦に入る。
それは半年前のことだが『マランツ#7』のウッドケースの底にブチッと埋め込んで5㍉くらい残し、3点支持でケースを浮かした。
その実験は昨日で終了した。ここからは2枚の板ガラスを敷いて直接ウッドケースを据えてまたまた音楽を聴くと、やはりガラリと音は変わる。
縫い針の音は、高域がおもしろかったが、低域がそうとうゆさぶられて合う音楽と合わない音楽があった。
いろいろなレコードの合う合わないを確かめた、針の上の6ヶ月。

☆10万円のクラシックギターを所有する男性が礼装で登場、ウッドベースが原寸の音で気持ちが良いと申された。

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機内食

2006年10月14日 | 諸子百家
仏蘭西はあまりに遠し...と朔太郎の憧れたそのフランスに、多くのジャズメンは渡っている。ひょんなことから、1ドル360円の昔、当方も渡ったのであった。
羽田からルフトハンザでアンカレッジに着いたとき、ラウンジに立って窓の外のいままで乗ってきた旅客機をながめ、はたして無事に帰国できるか危ぶんだ。
やはり飛行機は恐ろしい。サンテ・グジュペリも行方不明である。ドイツ人の機長がゆっくり翼の下を歩いて機体を点検している。
そういう不安を忘れるには、食事である。
退屈しないように4回も機内食が出る。「カフィ?テイー?」とスチュワーデスがかいがいしくサービスにまわっている。
レット・ガーランドの『ミスティ・レッド』などをイヤホンで聴きながら旅情をなぐさめたが、隣りの席の写真屋のおやじさんはずーっとタバコを吸いっぱなし。
「大変だ!」
右隣りに座った店主が機体の奥から駆け戻って言うには、異変に気がついたドイツ人スチュワーデスがトイレのドアを開けたら、どうやらズボンを下げてタバコを吸っていたらしい....。






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クロージング

2006年10月13日 | 徒然の記
秋来る.
芭蕉庵にも、5次元の世界から、いろいろなダイレクト・メールが届けられる。
四季折々すぐれモノは、仙台東一番町の某メンズ・ボーテック。
朝は朝干し夜は夜干し、昼は梅干しいただいて、御用とお急ぎの方も、いざ推参のジャズメン御用達。

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キリ・テ・カナワ

2006年10月10日 | レコードのお話
「これは、キリ・テ・カナワの若い頃の、そうとう珍しいものだと思います」
長身の客は1枚のCDを取りだした。
「ポーギーとベス」の有名な子守歌『サマータイム』を聴くと、ジャズ・ナンバーになったMJQの名演が、浮かんでしまう。
もう1枚CDがあって、大成したキリ・テ・カナワのソプラノ歌手の力量を聴かせるプッチーニのトゥーランドット姫は、かぐや姫のように相手に3つの謎を出す劇の展開が熱演だ。
御自分でアンプを造られるそうであるが、さすがに大音量を望まれて、どんどんボリュームを上げて音の洪水に埋没するようになってもタンノイはやかましくは鳴らない。
一服の茶を喫したように「とても良い音です」と静かに申されて席を立った。


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ALL MORNIN' LONG

2006年10月08日 | レコードのお話
「あなたこのお水、呑んでごらんなさい」
窓際の席にどっしりと陣取ったそのご婦人は、「メタメタのブルースを聴きたい」と注文を申されながら、持参のタンクの水を当方に勧めている。
どこの土地にも、宮水や湧水があって、年配の人を嬉しがらせているが、街ではティーンエジャーは生水ではなく販売機に直行している。当方はついに、自然水を有難がる境地になったのかな。珈琲を点ててみると、美味しい。
ご婦人は、この水の汲める市内の秘境について詳しい図面を書いてくださって「検査済みだから」と自信たっぷりに申された。
ご婦人の話す文化人類学上の回想は、涙と笑い無しには聞けないブルースで、音楽よりよほどヘビメタだ。まいった。しかしタンノイは涼しく唄っている。
ここでふと、レッド・ガーランドなどを聴いてみた。
以前、大型ジープで登場する秋田の客が「初心者のころに聴きました」とガーランドを懐かしんでいたが、このガーランドは元ボクサーであり、れいによってマイルス楽団を通過し、独特の唄心は初心者向けとあなどれない。
彼は秘境の湧水のように音楽をくりだし、ブロック・コードをきめて、リングの勘をピアノのキーに懐かしんでいるようだ。


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タンノイの音【6】

2006年10月06日 | タンノイのお話
分類学(taxonomy)でヒトを分けるとき、その端緒は『♂と♀』で、「スピーカー」の項目なら、『スイングとシンク』である。

古池や 蛙飛び込む 水の音
閑さや 岩に浸み入る 蝉の声
秋深し となりは何を する人ぞ

芭蕉の句を、JBLの音でイメージしますか、タンノイの音にしますか。そして人は音楽を意識の深層で、スタンリー・キューブリック的かジャンリュック・ゴダール風か、好きに重ねて聴くこともできる。
『スイングがなけりゃ、意味ないね』という有名なジャズ・ナンバーのごとく、ジャズに『スイング』が絶対と思われてきたことは正しい。のか?それはたんに迂闊なノリのゆえかもしれない。
タンノイサウンドによれば、そこは『シンクがなけりゃ、意味ないね』と聴こえるのである。
『SOMETHIN’ELSE』のA面に入っている有名なジャズの名曲。この曲がひとたび静々と鳴り出せば、つい誰しも居ずまいを正すキャノンボール・アダレイ『枯葉』を聴くとしよう。マイルスもタンノイで武者震い。ハンク・ジョーンズもアート・ブレイキーも、ここではタンノイの陰影に考え、また考え、間合いを計って完全燃焼している。
タンノイならではのサウンド、ジャズナンバーを、珈琲を喫しつつ数える秋の暮れ。

☆新潟からと申される2組のカップルは、晩秋のみちのくの旅の途中にROYCEに立ち寄られて、なんとタンノイ・ロイヤルをオーディオ・ルームに備えていると、うれしいお言葉。
どのようにロイスの音を聴かれたか、さだかではないが、地酒の銘酒を購入されて、車に持参のケースがあると手回しの良さは『うわばみ』と拝察しました。

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麻布

2006年10月04日 | 諸子百家
「あれ、おかしいな....。そうか、プレイヤーの回転数が正確だと、音楽は意外につまらないものに聴こえますね」と真顔で彼は言った。
30年も昔のことだが、将来は教会のオルガン弾きになるとかで、シェーンベルクやサテイやショスタコービッチを聴くやや風変わりな人物は、親元を飛び出して空き家にひとり暮らしていた。持参したLPを当方自慢の装置で聴いて、正確なピッチの音をつまらないと教えてくれたのである。
ギターの練習でとちってキーをはずしたテープ録音を聴かせると、「とても良い」と言った。何度も外したので、それがことのほか即興的で良かったらしい。恐れ入りました。
麻布にあったその空き家も、井戸の方角がよろしくないとかで処分されることになって、引っ越しの邪魔になるからといただいたレコードをまえに考える。
それ以来、会っていない。



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